なでしこJの“進化”に直結? 女子プロ「WEリーグ」が示したフィジカル強化のデータ「今につながっている」

(写真はイメージです)【写真:徳原隆元】
(写真はイメージです)【写真:徳原隆元】

海外リーグと比較した攻守のデータ、なでしこの強度の進化に着目

 日本女子サッカーのプロリーグ「WEリーグ」は2シーズンを終え、今月下旬から3シーズン目のスタートに先駆けたカップ戦が始まる。8月7日にメディアブリーフィングが開かれ、昨シーズンのテクニカルな傾向を説明。現在オーストラリアとニュージーランドで共催の女子ワールドカップ(W杯)で8強入りしているなでしこジャパン(日本女子代表)に通ずる部分が多いことも説明された。

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 リーグ全体の傾向について、7月14日に開催されたWEリーグの監督フォーラムで使用された資料をもとに、イングランド、フランス、ドイツの各リーグとの比較を用いて行われた。テクニカルアドバイザーの狩野倫久U-19日本女子代表監督は、攻撃のデータとして「傾向としてパスの本数は多い。それは丁寧につないでいるとも取れるし、海外のリーグではダイナミックな攻撃が多いとも取れる」と説明する。

「WEリーグはファイナルサードへの侵入回数は多く、シュート本数も多いが、ゴール期待値は低い(イングランドが明らかに高い)。他国と比較しても、シュートは打っているが決定機までは持ち込めていないのではないかということ」

 また、守備的な部分では「非常にファウルが少ない。レッドカードやイエローカードも少なくクリーンでフェアな戦いが見られる」という明らかな傾向があったが、世界的なトレンドでもある高い位置からボールを奪いに行くプレーについては、守備的なチャレンジがピッチ前方60%までに行われた割合を示す「PPDA」という指標から欧州の主要リーグと同程度であることが示された。

 そして「WEリーグでも守備組織が整うまでのカウンターや、コンビネーションを作ったところからサイド攻撃、クロスが多くなった。守備組織が整うようになったことからサイド攻撃が多くなり、マイナス方向へのカットバッククロスが増えた」と、その傾向は攻撃戦術にも影響を与えているとされた。

狩野アドバイザー「日本の女性アスリートのポテンシャルはもっとある」

 7月31日に行われた女子W杯のスペイン戦で日本が4得点を挙げたが、いずれもWEリーグの所属選手によるものだった。特にMF宮澤ひなたがカウンターから決めたチームの3点目は戦術的な判断もさることながら、「最高速度の中でスピードを落とさないファーストタッチができたのも素晴らしいプレー」とされ、強度がある中で技術が伴うプレーだったと言えた。

 一方で、このゲームではMF猶本光が13回のコンタクトを伴うプレッシャーをかけていたこと、最高速度が時速30キロ程度まで上げられる選手が増えてきたことからも、プロ化による「日常の中でサッカーに集中できる環境」が指摘されていた。

 こうしたフィジカル面での強化について、狩野アドバイザーは「日本の女性アスリートのポテンシャルはもっとあるのではないかと。日本の女性アスリートは全てのジャンルの競技、クイックネス、持久系、パワー系でもオリンピックのメダリストがいる。(サッカーも)そこを上げていけば日本の女子選手の良さがもっと出るのではないか。いかに怪我なく出力を高めるのかが監督フォーラムでの議論に出た」と話す。

 そして「なでしこジャパンの選手データで見ても、個々のフィジカルが高出力になっているのは確か。(PPDAの指標について)緩い強度で奪いに行っても数値は出ていく。それを力強くいくのは大事で、各クラブで議論してやっている。2部練習をやるようなクラブもあるし、3シーズン目に向かってのキャンプで身体作りをしていることなど、その部分は進んでいる」と、フィットネスの向上に割ける時間的な余裕や環境が整いつつある傾向が話された。

 髙田春奈チェアは「なでしこジャパンの快進撃に注目していただいていると思う。WEリーグの重要な部分に女子サッカーへの貢献、なでしこジャパンをもう一度世界一にするということにつながっていると感じさせてくれる。海外の女子サッカーが発展するなかで、そこで経験を積み重ねている選手が堂々とプレーしている姿もあるが、WEリーグの選手たちがチームワークに貢献している部分も感じられる。単純にWEリーグがあったから今の結果につながっているとは言い切れないが、2年前にWEリーグを作る決断が少なからず今につながっていると信じている」と話した。

 なでしこジャパンのスペイン戦や決勝トーナメント1回戦ノルウェー戦を見ても、局面のコンタクトでそん色なくプレーする姿は印象深い。その下支えとして国内リーグとなるWEリーグの整備が進んでいることがあるのも日本女子サッカー全体の成果だと言えそうだ。

(FOOTBALL ZONE編集部)



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