神対応、選手同士の交流…欧州ビッグクラブが取材エリアで見せた“舞台裏” 新たな面を垣間見た日本ツアー【コラム】

印象に残った取材エリアでの出来事について振り返る(写真はイメージです)【写真:徳原隆元】
印象に残った取材エリアでの出来事について振り返る(写真はイメージです)【写真:徳原隆元】

グリーリッシュがお笑いコンビに見せた微笑ましい“神対応”

 今年の夏は、マンチェスター・シティ、バイエルン・ミュンヘン、パリ・サンジェルマン(PSG)、インテル、セルティック、アル・ナスルと、欧州ビッグクラブを中心にとりわけ多くの海外クラブがプレシーズンツアーで日本を訪れた。筆者が取材に足を運んだのは全て国立競技場で行われた3試合だが、そのなかで記者の視点で印象に残った取材エリアでの出来事について振り返る。

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 最初に訪れたのは、7月26日に開催されたシティとバイエルンの一戦だった。7月23日に横浜F・マリノス戦(5-3)を消化していたシティと、来日直後のバイエルンとでは、コンディションの状態に差があったこともあり、試合内容はシティが優位に進めていたが、最終的にスコアは2-1の接戦に持ち込んだ。

 目を奪われたのは、試合を通してタッチライン際に立っていたジョゼップ・グアルディオラ監督だ。アジアで行われるプレシーズンマッチの1試合に過ぎないにもかかわらず、まるでプレミアリーグやUEFAチャンピオンズリーグの大一番を戦っているかのように、激しいジェスチャーで指示を出し、全身で感情を表現する名将の姿に、いかなる試合でも本気で向き合う信念を感じさせた。

 試合後、バイエルン側は早々に撤退。シティ側からはMFフィル・フォーデンとMFジェームス・マカティーの囲み取材の場が設けられたものの、FWアーリング・ブラウト・ハーランドやMFケビン・デ・ブライネら、その他の選手はミックスゾーンを颯爽と通り過ぎていく。そんななか、MFジャック・グリーリッシュが微笑ましい神対応を見せた。

 この日キックオフ直前にゲストとして登場していたお笑いコンビのミキが、通路際でシティのユニフォームを掲げながらお茶目なダンスで選手たちの気を必死に引こうとしていた。メンバーの大半が素通りしていくなかで、グリーリッシュはミキに応戦するようにノリのいいダンスを披露し、歩み寄って握手を交わすと、ユニフォームにサインを書くサービスを施していた。

 大喜びするミキの2人を横目にDFカイル・ウォーカーが足早に通過しようとするのを見つけると、グリーリッシュは「カイル!」と呼び止め、ユニフォームにサインをしてあげるよう促す気遣いまで見せていた。その隙を突くように、多くの英国記者がグリーリッシュを囲んで質問を投げかけていたが、それに対しても、丁寧に時間をかけて対応。取材エリアでグリーリッシュの人柄の良さを垣間見ることができた。

現地記者が称賛した川崎MF瀬古「ブンデスリーガでも通用する」

 続いて、取材に向かったのが川崎フロンターレとバイエルンの一戦。この日は、今夏にバイエルンに加入した韓国代表DFキム・ミンジェのデビュー戦ということもあって、ドイツを筆頭に世界からも注目を集めるゲームとなり、1-0でバイエルンが勝利した。試合後、川崎GKチョン・ソンリョンがミックスゾーンで対応していた場にキム・ミンジェが登場。取材陣がざわつくなか、キム・ミンジェがチョン・ソンリョンに声をかけると、互いのユニフォームを交換し、サインを書き合う場面があった。

 ミックスゾーンで選手を待っている際、現地取材に来日したドイツ人記者のニコラス・リマー氏にバイエルン戦で最も印象に残った日本人選手について尋ねると、メンバー表を確認しながら「そうそう、このNo.16だよ! セコという選手だ」と回答。先発出場したMF脇坂泰斗の負傷により、前半18分に緊急投入されたMF瀬古樹の名前を挙げ、「彼のスピードとファイティングスピリットは際立っていたと感じた。ボールホルダーに詰め寄るタイミングやプレッシングの強度も非常に良かった」と振り返っている。

 昨年に横浜FCから加入した瀬古は攻守にわたって献身的なボックス・トゥ・ボックス型の選手として頭角を現しているが、現地ドイツのクラブを見て回っているリマー氏の目を通しても「ブンデスリーガでも十分に通用するように見えた」と、惜しみない称賛を送っていた。

スタジアムからネイマールコールも…不出場に終わり一抹の寂しさ

 最後に訪問したのが、インテルとPSGの一戦だった。PSGは昨年も日本ツアーを敢行しており、当時は3トップにFWキリアン・ムバッペ、FWリオネル・メッシ、FWネイマールと世界3大スターが揃い踏みで出場していた一方、今年はメッシが夏に米MLSインテル・マイアミへと移籍し、ムバッペも移籍の可能性が高まっていることから日本ツアーには同行せず。ネイマールは来日したものの、負傷明けのコンディション不良から、アル・ナスル戦(0-0)、セレッソ大阪戦(2-3)を不出場で終え、インテル戦も先発に名を連ねることはなかった。

 試合時間が残り30分を切ったタイミングで、5万139人もの観客動員数を記録した国立競技場のスタンドからは堪らずネイマールの出場をプッシュする盛大なコールが沸き起こることに。3階に設置されている記者席の隣からも、少年たちの懸命なネイマールコールが聞こえてきたが、ネイマールはアップをすることもなく、日本では最後までピッチに立つことなく終わり、PSGもインテルに1-2で逆転負けを喫した。2日後に行われた韓国での全北現代戦(3-0)では先発フル出場を果たし、2ゴール1アシストを記録していただけに、日本との対応の差に一抹の寂しさを感じずにはいられなかった。

 インテル戦後、ミックスゾーンでフランス人記者のエマヌエル・バラングートゥ氏と会話をしていたところ、「こないだのPSG戦のゴールを見たかい? 少なからず、私が見てきた日本人選手のゴールの中で、あれは最も美しいゴールだった」と、7月28日に行われた一戦でC大阪MF香川真司がPSGを相手に記録した決勝弾を興奮気味に絶賛。「偉大なクラブでプレーしていたのだから、もちろんフランスの記者も、彼のことは誰もが知っている」と、その知名度の高さも窺えた。

 各国のリーグが8月中旬からスタートするため、日本を訪れたクラブもそれぞれプレシーズンツアーを終え、新シーズンへの最終調整に入っているが、長時間のフライトを経て、猛暑の中で日本人サポーターを沸かせてくれたことに感謝を申し上げたい。

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