高校サッカー強豪10校「最新格付け」 総体ベスト16以上のチーム厳選、冬の選手権で“主役候補”は?
明秀日立の初優勝で幕を閉じたインターハイ、強豪校の実力を改めて独自査定
令和5年度全国高校サッカーインターハイ(総体)は、茨城県勢として1979年の水戸商以来44年ぶりの頂点に立った明秀日立の初優勝で幕を閉じた。優勝候補と目された名門校の早期敗退もあったなか、今大会を踏まえ強豪校の実力を改めて精査すべく「最新格付け」を独自で査定する。
なお対象チームは、高校年代最高峰のリーグ戦であるプレミアリーグに所属し、今大会でベスト16以上だった6校(旭川実業、青森山田、前橋育英、米子北、尚志、市立船橋)、ベスト4以上の成績を収めた4校(桐光学園、国見、日大藤沢、明秀日立)を合わせた10校とする。
実力&インターハイでのパフォーマンスを総評し、今冬の選手権に向けて上位進出への期待度をSS~Cで格付け。また各チームの分析項目(攻撃力、守備力、勝負強さ)を5段階評価(最高が五つ星=★★★★★)で評価し、ランク付けして紹介する。
【SSランク】
■青森山田(青森/23大会連続26回目)
インターハイ成績:ベスト16
攻撃力:★★★★☆
守備力:★★★★★
勝負強さ:★★★★★
インターハイでは3回戦で明秀日立に敗れてしまったが、35分ハーフの今大会と比べ、選手権の40分ハーフを考えると、選手層の部分や粘り強さ、そしてパワーという面でやはり青森山田は頭抜けている。逆にインターハイで敗れたことで選手たちがもう一度自分たちを見つめ直すきっかけを掴めたと捉えられ、ここからさらに隙のないチームになっていくだろう。
【SSランク】
■尚志(福島/13大会連続15回目)
インターハイ成績:ベスト8
攻撃力:★★★★★
守備力:★★★★☆
勝負強さ:★★★★☆
攻撃の多彩さ、そして選手層の厚さは今大会でも際立っていた。FW網代陽勇(3年)、FW桜松駿(3年)、FW笹生悠太(3年)、MF若林来希(3年)の誰がスタートで出ても変わらぬ破壊力と組み合わせによっての変化を生み出す。今大会では準々決勝で桐光学園に敗れたが、やはり彼らのサッカーの質は全国でもトップクラスで、冬の主役になり得る存在であることを印象付けた。
【Sランク】
■市立船橋(千葉/2大会連続30回目)
インターハイ成績:ベスト8
攻撃力:★★★★☆
守備力:★★★★★
勝負強さ:★★★★☆
攻守にタレントが揃い、特に最終ラインは強固なものがあるが、一方でインターハイではチームとしての脆さを露呈してしまった。特に準々決勝の日大藤沢戦では今大会で初の先制を許してから、焦りもあってかリズムが噛み合わなくなってしまった。だが、青森山田同様に明確な課題を得たことが必ずやプラスに働き、ここから立て直してくるはずだ。
【Sランク】
■桐光学園(神奈川/3大会ぶり15回目)
インターハイ成績:準優勝
攻撃力:★★★★☆
守備力:★★★★☆
勝負強さ:★★★★☆
MF齋藤俊輔(3年)とMF松田悠世(3年)の両サイドは今大会で何度も会場を沸かせた。彼らのドリブルと、FW宮下拓弥(3年)とFW丸茂晴翔(2年)が組む2トップの推進力を生かした攻撃の質は高かった。今大会の結果につながったのは、その攻撃力だけではなく、全員の守備意識が高く、ハードワークと声かけを怠らずにやり抜いた点にある。守備力の安定は冬に向けて大きなプラスとなった。
“サプライズV”の明秀日立はチームとしての実力の高さを証明
【Aランク】
■米子北(鳥取/15大会連続18回目)
インターハイ成績:ベスト16
攻撃力:★★★☆☆
守備力:★★★★☆
勝負強さ:★★★★☆
3回戦で日大藤沢に1-3で敗れたものの、やるべきことをきっちりとやり抜く強さは大会を通じて見せた。最終ラインの4人などキックの精度が高い選手が多く、彼らの展開からFW森田尚人(3年)とFW鈴木颯人(2年)の2トップが一気にゴールに向かう。セカンドボールの回収の面で日大藤沢に上回られての敗戦だっただけに、今大会を境によりやるべきことをチームとして把握し、整備してくるはずだ。
【Aランク】
■前橋育英(群馬/6大会連続19回目)
インターハイ成績:ベスト16
攻撃力:★★★☆☆
守備力:★★★★☆
勝負強さ:★★★☆☆
尚志に敗れた3回戦の試合は非常に強度と質が高いものだった。今年のチームは2年生が多く、彼らがプレミアリーグも含め、激しい試合を経験していること自体が大きな財産だ。2年生のDF山田佳、MF石井陽、FW佐藤耕太、1年生MF平林尊琉などの成長によって、冬にはより力を付けてくるだろう。
【Bランク】
■明秀日立(茨城/4大会ぶり4回目)
インターハイ成績:優勝
攻撃力:★★★☆☆
守備力:★★★★☆
勝負強さ:★★★☆☆
静岡学園、関大一、青森山田、高知、日大藤沢、桐光学園とそれぞれ個性もスタイルも異なる相手との連戦のなかで、勢いだけではなく相手の特徴、戦い方、試合状況に応じて緻密に守備のアプローチを変えていた。大きなサプライズではあるが、相当な実力を持ったチームであることは間違いない。選手権の40分ハーフとなるゲームでもその緻密な戦い方をやり抜けるかがポイントになる。
【Bランク】
■日大藤沢(神奈川/2大会連続10回目)
インターハイ成績:ベスト4
攻撃力:★★★☆☆
守備力:★★★☆☆
勝負強さ:★★★☆☆
今大会では守備が非常に良かった。もともと攻撃力はあり、今大会もFW山上大智(3年)、MF安場壮志朗(3年)、MF岡田生都(3年)が流動性ある連係を見せた。守備面ではGK野島佑司(3年)、センターバックの國分唯央(3年)が統率し、3回戦の米子北戦ではMF荻原大地(3年)とMF佐藤春斗(3年)のダブルボランチがセカンドボールを徹底して拾ったことで勝利につながった。試合を重ねるごとに安定感が増し、大会を通じて成長をして行った守備が今後の鍵となる。
名門・国見が復活を印象付ける4強、旭川実業のタレントにも期待
【Cランク】
■旭川実業(北海道/3大会連続8回目)
インターハイ成績:ベスト16
攻撃力:★★★☆☆
守備力:★★☆☆☆
勝負強さ:★★★☆☆
地元開催となった旭川実業は、初戦で難敵の帝京長岡を下しつつも、3回戦で市立船橋に0-2の完封負け。それでも、プレミアリーグでの経験値は確実にあった。帝京長岡戦でハットトリックをマークしたトップ下のFW鵜城温大(3年)とエースFW和嶋陽佳(3年)は一目置けるタレントで、MF工藤葵柊(3年)など技術レベルの高い選手は揃っている。全国レベルをプレミアリーグで毎週経験している強みを夏に見せただけに、冬も十分期待できる。
【Cランク】
■国見(長崎/12大会ぶり21回目)
インターハイ成績:ベスト4
攻撃力:★★☆☆☆
守備力:★★★★☆
勝負強さ:★★★☆☆
ベスト4の成績だった国見は今大会で唯一の無失点で大会を終えた。DF平田大耀(3年)とDF中浦優太(3年)のセンターバックコンビの連係がスムーズで、チャレンジ&カバーを繰り返しながら、奪ったボールをトップ下のMF門崎健一(2年)、FW中山葵(3年)に素早くつないで攻撃を仕掛けるサッカーは洗練されていた。守備力の高さを全国で示せたことは大きな自信となり、2年連続出場をかけた冬へとつながっていくはずだ。