ネイマール不出場の“霞”を一蹴 香川真司が放った強烈ミドル弾が持つ意味【コラム】

PSG戦で決勝ゴールを決めた香川真司【写真:徳原隆元】
PSG戦で決勝ゴールを決めた香川真司【写真:徳原隆元】

【カメラマンの目】PSG対C大阪は互いに譲らない展開に

「またか……」

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 パリ・サンジェルマン(PSG)のベンチ前。キックオフが迫り、先発を外れた選手たちがベンチへと向かうなか、ブラジル人スーパーテクニシャンは最後にその姿を現した。ベンチに座る彼の足もとを見てみると、7月25日のPSG対アル・ナスル戦と同じくウォーミングアップシューズを履いていた。

 試合前の練習でもピッチに姿を見せず、スパイクも履いていないとなれば、前回の試合に続いてこの日もハイレベルなテクニックを駆使したサッカーで、日本の観客を魅了する可能性は限りなく低いのではないかと感じた。

 そして、ようやくピッチに立ったのは試合後のことである。こちらも前回と同様に調整のためのランニングを行ったのみで終わった。走る姿を見ればコンディションが整っていないとはいえ、プレーができないというわけではなさそうだ。

 しかし、照準はあくまでも自国のリーグ開幕に向けられているようで、コンディションが戻りつつあるなかで、厳しい気象条件での無理なプレーという、回復を遅らせる可能性に繋がるようなことはなるべく避けているのだろう。

 PSGは8月1日にジャパンツアー最後となる対インテル・ミラノ戦が東京で予定されているが、その試合でもチーム最高のスター選手への出場の期待は、叶わない可能性が高いのではないだろうか。もし、プレーしたとしてもその時間はかなり限定されると思われる。

 そのネイマールがベンチから見守った試合は、セレッソ大阪が2度のリードを許しながらも鮮やかな逆転劇を演じ勝利を奪取した。

 試合は1-1の同点で迎えた後半に一気に動いた。先制したものの同点弾を決められたPSGは、追いすがるC大阪を突き放そうとギアを上げる。ボールを持った選手を味方が次々と追い抜いていき、そこにスルーパスを供給。攻撃精神がはやり立ったフランスの強豪は、各選手の基本技術の高さが伺えるスビート感を纏ったサッカーでC大阪陣内へと進出して行く。

 しかし、C大阪も負けていない。チームを牽引したのは後半から出場したエースナンバー8番を背負う香川真司。香川をカメラのファインダーを通して捉えたのは、Jリーグが開幕して間もない3月4日に行われた第3節・浦和レッズと対戦したアウェー戦以来となった。

 ヨーロッパから戻って来た香川は、このときはまだチームにフィットしていなかったため、彼からインパクトを受けるようなプレーは見られなかった。だがコンディションも上がってきたいま、世界屈指の強豪を相手にチームの大黒柱として期待通りのプレーを見せた。

 決勝点となったペナルティーエリア際から放たれたミドルシュートも圧巻だったが、ボールを受けてマーカーを華麗に交わすプレーにはキレがあり、その好調さを物語っていた。

 何よりPSGが選手全体でチームのギアを上げたのに対して、C大阪は香川が発火点となり、彼が作り出す攻撃のリズムがほかの選手たちへと波及していき、チーム全体が勢いづいていった印象を受けた。そうした勢いは攻撃面だけに留まらず、最終盤の激しいディフェンスでPSGの切り崩しを跳ね返したプレーにも表れていた。

 スタジアムの雰囲気はネイマールがピッチに立たなかったことへの口惜しさが漂っていたことは否定できない。だが、ホームチームが強豪を撃破するという困難なミッションを見事に達成したことは、霞がかった観客たちの心を晴らすいい結末だったのではないだろうか。

(徳原隆元 / Takamoto Tokuhara)



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徳原隆元

とくはら・たかもと/1970年東京生まれ。22歳の時からブラジルサッカーを取材。現在も日本国内、海外で“サッカーのある場面”を撮影している。好きな選手はミッシェル・プラティニとパウロ・ロベルト・ファルカン。1980年代の単純にサッカーの上手い選手が当たり前のようにピッチで輝けた時代のサッカーが今も好き。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。

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