磐田FW後藤啓介がJユースで研鑽を積んだ訳 若き18歳が語る高校サッカーとプロとしてのキャリアプラン【インタビュー】

磐田の後藤啓介【写真:Getty Images】
磐田の後藤啓介【写真:Getty Images】

「できるだけ早くトップチームデビュー」の思いからJユースの道へ

 令和5年度全国高校サッカーインターハイ(総体)は今夏、北海道で熱戦が繰り広げられる。「FOOTBALL ZONE」では高校サッカー特集を展開するなかで、ジュビロ磐田U-18で育ち、高校2年生にしてトップチームに昇格したFW後藤啓介に、高体連とJユースの違いや、思い描くプロとしてのビジョンについて訊いた。(取材・文=河合 拓/全2回の1回目)

【PR】ABEMA de DAZNで欧州サッカー生中継!伊東・鎌田ら注目の日本人選手所属クラブの試合を一部無料生中継!

   ◇   ◇   ◇   

 磐田の後藤は今年2月18日、ファジアーノ岡山とのJ2リーグ開幕戦に途中出場を果たすと、後半44分、同アディショナルタイム2分と2ゴールを挙げる活躍を見せた。昨シーズンまでは磐田のU-18チームに所属し、今シーズンからトップチームに昇格したばかりである高校生ルーキー(当時17歳)の活躍は大きな注目を集めた。

 U-18年代の大会と言えば、高校サッカー選手権が最もメジャーな大会だろう。現在は、Jリーグの下部組織が力をつけたこともあり、以前ほど圧倒的な注目度を浴びているわけではないかもしれない。それでも、今も高校選手権で活躍することを目指して、Jの下部組織から高校に進む選手もいる。

 だが、後藤にはその選択肢はなかった。「中学3年生の時にU-18に上がらせてもらっていたので、高校の部活でサッカーを続けるという選択肢はありませんでした。自分のプランとしては、できるだけ早くトップチームでデビューするつもりでしたし、そのためにU-18に上がることしか考えていなかったです」と、プロへ続く道を見続けていたと話す。

 とはいえ、年齢が同じ、または近い選手たちが、高校選手権で活躍する姿には刺激を受けていた。「それは『いいなぁ』とは、思いました。選手権に出る選手たちは、特集されたりして、すごく注目されますから。自分が出ていたら『もっとできるのに』と思っていました。でも、Jのユースチームにいる選手は、みんなそういう風に思っていると思います」と語る。

 ただ、自分が進んだ道が間違っていないという思いは、高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグで実際に高体連のチームと戦うなかで、確信に変わっていく。

「スタイルがあるチーム、例えば聖和学園(宮城)だったり、静岡学園(静岡)だったり、中央学院(千葉)のようなチームは魅力的だなと思いました。でも、プレミアリーグで対戦するJの下部組織には個に加えて、そのクラブの理念のようなものが、組織的に取り組んでいるものが感じられました」

A契約を結ぶも「気にしていない」と泰然自若

 U-15年代の時からすでにU-18やトップチームでもプレーしていた後藤からすると、プロサッカー選手を目指すのであれば、J下部組織一択なのだ。

「3年間をより強度の高いところでプレーすること、いろんな人が見ているなかでプレーする緊張感を早く味わいたいのであれば、その可能性が大きいクラブに行ったほうが僕はいいと思います。上下関係という点でも、年齢に関係なく思っていることを言い合うことや、1年生のうちから試合に出ることも、Jのユースチームならではだと思います」

 近年では高校年代からJのクラブを経由せず、海外のクラブと契約する選手も増えているが、後藤はJリーグで地力を付けることが重要であり、自身に合ったやり方だと考えている。

「(U-18年代から)海外のクラブと契約した選手たちを見ても、主戦場となっているのはセカンドチームだったり、U-23チームだったりがほとんどです。早く海外に行くこともいいと思いますが、欧州の3部リーグ、4部リーグでプレーすることを考えると、自分はJ2やJ1でプレーして、実績や経験を積んでから行きたいと思っています」

 開幕戦以降も出場時間を伸ばしている後藤は、6月3日に18歳になると、その2週間後の17日にはプロA契約を締結。第27節を消化してリーグ2位につける磐田で、MFドゥドゥとFWジャーメイン良の6得点に次ぐ、チーム3位タイの5得点を記録している。

 同年代でプロA契約を結んでいる選手はもちろん、プロデビューしている選手も少ない。C契約を結んだ選手は、C契約のまま3年が過ぎるか、J2では900分以上出場することで、A契約を結ぶことになる。後藤は6月11日の第20節ベガルタ仙台戦を終えてこの条件を満たした。

 この年代での出世頭になっている後藤だが、「プロになれましたけど、正直、自分の中では遅かったと思います」と、気にする素振りはない。「契約も『A契約』『B契約』『C契約』とありますが、自分的にはそういうのはあまり気にしていません。結果的にたくさん試合に出してもらえたのでA契約になりましたけど、別に『A』とか『B』とか『C』とか気にしていないです」と、あくまで無関心だ。

 というのも、そもそもの後藤の計画では「16歳の時に天皇杯、ルヴァンカップ、Jリーグ。どれでもいいので、出ている予定」だったのだ。実際、今シーズンの磐田では4月19日にMF川合徳孟が16歳でルヴァンカップのピッチに立っている。過去にも同じ磐田の育成組織出身のMF山本康裕が高校1年でのプロデビューを果たしており、後藤も高校1年でのトップチーム初出場を狙っていたのだ。周囲から見れば十分に早い『プロA契約締結』だが、先例もあるからこそ、喜んでなどいられないというのが本心なのだろう。

 自身の計画よりも、2年遅れでトップチームデビューした18歳の後藤は、この先どのようなキャリア形成を考えているのだろうか。

(後編に続く)

[プロフィール]
後藤啓介(ごとう・けいすけ)/2005年6月3日生まれ、静岡県出身。カワイ体育教室SC―磐田U-15―磐田U-18―磐田。J2通算21試合5得点。高さやポストワークに加え、裏への動き出しも得意とする身長191センチの大型FWで、ポーランド代表FWロベルト・レバンドフスキ(FCバルセロナ)を目標とする。今年、高校2年生(当時)ながらトップチームに昇格し、2月18日のJ2リーグ第1節ファジアーノ岡山戦でJデビュー&クラブ最年少得点記録を更新と鮮烈な活躍を見せた。

(河合 拓 / Taku Kawai)

page 1/1

今、あなたにオススメ

トレンド

ランキング