局地戦が光ったインテルVSアル・ナスル イタリアの名門が示した相手を打ち負かす強気な姿勢【コラム】
【カメラマンの目】ジャパンツアーを取材するなかでインテルが持つ“荒々しさ”に目が留まった
海外の強豪クラブが来日し、Jリーグの中断期間に試合を行う2週間余りのジャパンツアーも後半戦に突入している。世界にその名を轟かすクラブとの試合に臨むJリーグチームにとっては貴重な経験となる一方で、充電期間に試合をこなすことで再開する公式戦に向けてのコンディション調整に、より気を遣う必要が出てきているかもしれない。
当の海外チームもこの厳しい気候条件で試合をすることへの懸念がないわけではない。試合後の記者会見でそうした質問を向けられた監督たちの答えも歯切れが悪く、チームの調整という側面で考えればマイナス要素があることは確かだ。本来ならヨーロッパの避暑地で合宿を張って、新シーズンに向けて調整をするのが理想なのだろうが、チーム運営に資金をもたらすという意味では開幕前でもプロとしてやるべきことが増えたということだ。
それでも各チームとも観客を満足させるために魅せる部分を作り、それでいて無理もしない展開のバランスを考えて巧みに試合をこなしている。7月19日のJ1の横浜F・マリノス対セルティック(スコットランド1部)の試合を皮切りに、ここまで海外クラブが参加する試合をすべて取材してきたが、27日に行われたアル・ナスル(サウジアラビア1部)対インテル(イタリア1部)戦を振り返ってみると、この試合は局地戦だけで言えば最も激しい攻防が展開された。
両チームとも試合全体で連動してゴールを生み出すという展開は必ずしも多くはなかった。その反面、選手個人のテクニックとパワーにモノを言わせて、局面を打開してゴールを奪おうとする姿勢が強く発揮された。特にそうした気概がインテルの選手たちには強く表れていた。
インテルはラウタロ・マルティネスを筆頭に気の強そうな選手が揃う。ゴール裏から望遠レンズを装着して見る世界での彼らインテルの選手たちは、相手守備陣がボールを持っているところにがむしゃらにプレスを仕掛けて動きを封じに行っていた。
攻撃に転じれば、ゴール前でのボールのないところでのポジショニングの争いでも派手には行わないが、マーカーに対して身体をぶつけてバランスを崩して上手くプレーをさせないなどの“テクニック”を見せた。
そうした荒っぽさもインテルの魅力の1つであり、何としても相手を打ち負かすという強気な姿勢は、世界のトップレベルで戦う選手には持っていなければならないかなり重要な要素だ。
こうしたインテルのスタイルに引っ張られるように、アル・ナスルも局地での勝負に激しいプレーで対抗した。来日して時間が経過し日本の環境に少しは慣れた部分もあり、先のパリ・サンジェルマン(PSG/フランス1部)戦よりも個人の動きは活発だった。ゴール前や重要な場面でしぶとく勝負し、結果的に試合を1-1の引き分けで終わらせる成果を見せた。
観客の期待を最も背負いピッチに立ったアル・ナスルのクリスティアーノ・ロナウドは前半だけで交代してしまったが、これもプレー環境や親善試合ということを考慮すれば仕方ないことだ。ファンとしてはこの時点で試合を残す海外クラブやJリーグ勢のお気に入りの選手には、少しでもプレーする時間を長く、そしてハイレベルな技を見せてほしいところだ。
徳原隆元
とくはら・たかもと/1970年東京生まれ。22歳の時からブラジルサッカーを取材。現在も日本国内、海外で“サッカーのある場面”を撮影している。好きな選手はミッシェル・プラティニとパウロ・ロベルト・ファルカン。1980年代の単純にサッカーの上手い選手が当たり前のようにピッチで輝けた時代のサッカーが今も好き。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。