思い出となる前に

　アーセナルのアーセン・ベンゲル監督は、サポーターに向けて3年以内にタイトルを勝ち取ることを宣言した。英大衆紙「ザ・サン」が報じた。
　開幕から12試合で勝ち点17という数値は、ここ32年間の中で最も悪い成績となっている。サポーターは、前節ウェスト・ブロム戦でフランス人指揮官に対し、「思い出をありがとう。そろそろお別れの時間だ」という横断幕を掲げた。その試合では勝ち星を手にしたものの、首位チェルシーに早くも勝ち点13差をつけられてしまっている。
　日を増して批判の声が高まっている状況にあるベンゲルだが、インタビューでは契約満了を迎える2017年までにチームをチャンピオンに導くことができるかを尋ねられると、「もちろん、自信はあるよ」と言い、こう続けた。
「決して良いスタートは切れなかったが、そのまま低迷するようなことはない。今年はワールドカップ直後での開幕だったので、調整が難しかった。だが、すべての試合で完璧なパフォーマンスを示すため、今はできる限り早く通常のわれわれに戻るべく、泥くさく戦っていかなければならない」
　そして、今季の優勝は、厳しいことを認めた上で、最後まで諦めずに戦い抜く姿勢を示した。
「私たちはタイトルに向けて何度もチャレンジしている。人々は常に栄光の瞬間のみを覚えている。しかし、この9年間に関しても、それほどの長い期間をトップレベルで戦い続けているというのは、とてもタフなことだ。プレミアリーグは例年レベルを上げており、今季はチェルシーがすばらしいスタートを切った。彼らに追いつくのは厳しいことであるが、全員一丸となって優勝戦線に戻るために戦っていくつもりだ」
　久しく優勝争いに参戦できずにいるベンゲルに対し、政権交代を望む声も少なくない。今季もスタートダッシュに失敗し、指揮官への不満は募る一方である。だが、名将の目線は常にタイトルへと向いていた。
【了】
サッカーマガジンゾーンウェブ編集部●文　text by Soccer Magazine ZONE web
ゲッティイメージズ●写真　photo by Getty Images