「歴代日本人DFスピードスター」10選 SBのベテラン韋駄天、次世代の森保Jを担う若手がランクイン【コラム】

DFの歴代スピードスターをピックアップ【写真:Getty Images】
DFの歴代スピードスターをピックアップ【写真:Getty Images】

【DF編】現役、レジェンドの年代を問わない歴代スピードスターに注目

 世界中には“スピードスター”と呼ばれる選手が多く存在する。「FOOTBALL ZONE」では日本サッカー、森保ジャパン第2次政権でもキーワードになる「スピード」に注目した特集を展開。今回は日本人DF編をお届けする。(文=河治良幸/全3回の3回目)

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■坪井慶介(43)

“守備のスピードスター”といえば、歴代のJリーグでも象徴的な存在だった。浦和レッズで13シーズンに渡りプレーしたのち、湘南ベルマーレ、レノファ山口に在籍。日本代表としても40試合出場した。圧倒的なスピードや179cmというサイズから、サイドバック(SB)でテストされることもあったが、本質的にセンターバック(CB)のポジションで、相手のエースを封じる役割でこそ能力を発揮した。もっとも輝いたのは“ミシャ”ことミハイロ・ペトロヴィッチ監督が浦和を率いた2012年で、3バック右で攻守に奮闘し、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)出場権の獲得にも大きく貢献した。

■土屋征夫(48)

 東京ヴェルディなどで活躍。177cmとCBでは決して大柄ではないが、爆発的なスプリントと食い付いたら離さないタイトなマークで長く活躍した。ブラジルにサッカー留学したことも有名で、愛称の「バウル」は同僚だったFWマグロンが、土屋の滞在していたブラジルの街にちなんで付けた。スピードがあるだけでなく、技巧的なアタッカーの対応力などにも優れる。それこそが45歳まで現役選手を続けられた理由の1つだろう。日本代表は2001年に候補になっただけだが、代表キャップを踏めなかった日本人Jリーガーの歴代ベストイレブンを作った場合は真っ先に選びたい1人だ。

■柳本啓成(50)

 スピードタイプのサイドアタッカーにとっては天敵とも言うべき走力を武器に、サンフレッチェ広島とガンバ大阪で左右のウイングバック、キャリア終盤のセレッソ大阪では3バックのストッパーやリベロでプレーした。フィジカルの強さに課題を抱えていたが、継続的な努力でパワーも手に入れた。日本代表では大きな怪我を転機として、1997年を最後に招集されなかったが、公式戦400試合を達成するなど、長く第一線で活躍した。

■中野伸哉(19=サガン鳥栖)

 守備のスピード対応に絶対の自信を持つパリ五輪世代でも指折りのランニングマンで。縦に走る速度だけでなく、驚異的の旋回力で、相手アタッカーに背後や逆を取らせない。東京五輪の候補合宿では三笘薫と1対1を繰り返していたが、かなり止めていたのが印象的だった。左利きだが右足も器用に操り、両サイドをこなせる。サガン鳥栖でクラブ史上最年少の出場記録や最年少でのJ1開幕スタメンなどを記録。この1、2年はやや伸び悩んでいる印象もあるが、世代屈指の才能に疑いの余地はない。

■藤春廣輝(34=ガンバ大阪)

 サイドの韋駄天と言えば、この選手を挙げないわけにはいかない。とにかく速いとしか表現しようのないスピードで、左サイドからアップダウンを繰り返す。チームが劣勢の時間帯でも、攻撃に転じれば、気が付けば藤春がアタッキングサードにいる。ハッスルプレーも魅力の1つだ。ガンバ大阪一筋で、300試合以上に出場。2015年にはA代表でも3キャップを記録した。

■藤谷 壮(25=松本山雅FC)

 右SBとして、神戸のユース時代からアンダーカテゴリーの代表でも注目と期待を集めた。同サイドでボールを奪えば、そのまま果敢にドリブルを仕掛けてチャンスを作り出す。一方で周りを生かすプレーや自陣での守備などに課題があり、なかなか神戸の主力に定着できないままギラヴァンツ北九州(加入時はJ2)に移籍。25歳となった現在はJ3松本山雅FCで奮闘するが、何とか壁を乗り越えてトップレベルに上がってくることを期待したい選手だ。

次世代の日本代表を担う若手のスピードスターも

■伊藤洋輝(24=シュツットガルト/ドイツ)

 188cmのサイズながらスピードにも自信を持ち、背後を狙うアタッカーをことごとく封じる。元々は左利きの大型ボランチとして期待されたが、3バックの左に活躍の場を見出すと、J2のジュビロ磐田で主力に定着した2021年の夏に、ドイツのシュツットガルトに移籍した。当初はU-23で経験を積むはずだったが、コロナ感染や怪我人などが出て、得たトップチームでのチャンスを逃さずに、そのまま主力に定着。東京五輪では選ばなかった森保一監督にも実力が認められて、滑り込みでカタール・ワールドカップ(W杯)の招集メンバーとなった。ドイツでは走るスピードだけでなく、予測や判断、初速などにもこだわり、俊敏な大型DFとして評価を高める。

■バングーナガンデ佳史扶(21=FC東京)

 FC東京のアカデミー出身で、3月の日本代表にも選ばれた左サイドのスピードスター。SBのポジションながら、一瞬にして前線まで駆け上がり左足のクロスに持ち込むことができる。若手の選手としては怪我に泣かされている傾向もあるが、攻守両面で向上が見られる。来年のパリ五輪に向けて、順調に成長を遂げることが期待される選手の1人だ。

■塩谷 司(34=サンフレッチェ広島)

 CBとボランチをこなせる万能型の俊英。UAEのアル・アインで経験を積んでJリーグに復帰。フィジカル的な強さを生かした1対1の守備やクレバーな対応、正確なロングパスなどが目に付くが、若き日はアグレッシブなスタイルで話題を集めた。当時は後方からオーバーラップして、ボックス内でフィニッシュに絡むなど、時速でも最速レベルだった。

■菅原由勢(23=AZアルクマール/オランダ)

 SBを中心にセンターバック、ボランチ、サイドハーフなど、フィールドのほぼ全てをカバーできるスーパーマルチで、左サイドのポジションも難なくこなす。守備ではスピードタイプのアタッカーにめっぽう強く、チャンスと見たら素早く攻め上がってクロスはもちろん、インサイドからミドルシュートを放つシーンも。カタールW杯のメンバーには入れなかったが、その後は3月、6月と着実に評価を高めて、第2期“森保ジャパン”の主力に定着しつつある。

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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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