鹿島MF樋口雄太「自分の失敗」で苦悩 寄り添った岩政監督へ示した感謝「大樹さんのために…」
天皇杯でのPK失敗に責任抱くも、FC東京戦で2アシストマーク
鹿島アントラーズのMF樋口雄太は、強い思いをもって7月16日に行われたJ1第21節のFC東京戦を迎えていた。この試合の4日前に行われた天皇杯3回戦のヴァンフォーレ甲府戦で、鹿島は1-1のまま迎えた延長PK戦の末に10-11で敗れていた。
【注目】白熱するJリーグ、一部の試合を無料ライブ配信! 簡単登録ですぐ視聴できる「DAZN Freemium」はここから
13人が蹴るという長い戦いになったPK戦だったが、そこで2度キッカーを務め、2度とも失敗したのが樋口だった。「自分の失敗で敗退して責任を感じていました。今日は絶対にそれを取り返すという気持ちで試合に臨んだ結果、2アシストという結果につながったのが良かった」と、逆転で掴んだ3-1の勝利に安堵の表情を見せた。
前半9分に先制された鹿島だったが、同23分に樋口のコーナーキック(CK)からFW鈴木優磨が同点ゴールを決めると、同45分には樋口のシュート性のボールにFW垣田裕暉が反応して逆転ゴールを記録した。
甲府戦から2日が経った14日の練習後には、岩政大樹監督と話し合う機会があったという。これまでのキャリアで「PKをそんなに蹴ることがなかった」という樋口にとってPK失敗は、甲府戦が初めての経験だったという。そして、「PKを2回外すなんて、なかなかできない経験だよと、大樹さんにプラスに捉えるように言われました」と、振り返った。
岩政監督も会見で「たまたま一昨日、練習後に彼がグラウンドで1人座っていたので少し話をしました。他愛もない話ですが『PKを外したことあるか?』と話すと『初めてです』と言うので『選手として、良い経験をしたな』と、話しました。僕もゼロックスで外したことがあったので、『今は何とも言えないだろうけれど、辞めたあとにPKを外した経験があることはいろんなところで言葉にしやすい。僕も今、こうやって言えているからな』という話をしました。本当に他愛もない話で、その後も20分くらい鹿島の現状についても話しました」と、明かしている。
指揮官は「他愛もない話」としたが、樋口にとってはこの話が大きかったようだ。「(PK失敗しても)正直、そんなに落ち込んでいなかったし、メンタル的には全然大丈夫でした。ただ、今日は『本当にやってやる』っていう気持ちでいました」「1人の人間として思っていることを意見交換したんで。大樹さんは結構、1人で悩んでいると思いますが、そこのところも聞けたことは、僕としても『大樹さんのためにやってやろう』という気持ちにさせてくれましたし、それが今日の結果につながったと思います」と、腹を割って話せたことの意義を語った。
「中断期間を負けて迎えるのと、勝って迎えるのではすごく変わる」
チームを逆転に導いた2つのアシストについて、1つ目は「うちはCKが最近得意ですし、そこで決めているシーンも多い」と言い、2つ目については「流れの中から決められたので、これから鹿島が上にいくために重要な1点だったと思う」と、説明した。2点目の鋭いボールについて、次々に「シュート?」と聞かれると、苦笑しつつ「はい」と認め、「結果的にああいうふうに垣田が決めてくれて良かった」と、素直に認めた。
今季の鹿島はリーグ戦28得点中9得点を鈴木が挙げている。試合前、岩政監督は鈴木以外の選手にもゴールを意識してほしいと伝えたというが、アシストとなった樋口のシュートも指揮官の意識づけの影響があったのかもしれない。「やっぱり自分はキックが売りですし、ああいうのも決めていくことで価値も上がってくると思います。それが結果につながってよかったと思います」。
そして、チームが逆転できたことにも「みんなが諦めていなかったですし、そういう姿勢が本当に結果につながっていくんだなと今日、すごく感じました。(岩政監督がやろうとしていることは)すべては出せていない。まだまだ。それでも、ちょっとずつですけど出せてきていると思う」と手応えを語り、「今日の試合にみんな賭けていたと思いますし、中断期間を負けて迎えるのと、勝って迎えるのではすごく変わってくると大樹さんも言っていました。今日みたいな戦い方を続けていけば勝ち点は拾えると思う。今日みたいな姿勢を見せ続けていけたらなと思います」と、苦しい時期を過ごしながらも、常勝チームへ戻る道筋が見えてきている感触を口にした。