パリ五輪期待の新星FW二田理央、欧州で描く“理想” お手本は「本当に凄い」日本人選手「必ずいるべき場所にいる」【現地発】

オーストリア2部ザンクト・ペルテンでプレーする二田理央【写真:中野吉之伴】
オーストリア2部ザンクト・ペルテンでプレーする二田理央【写真:中野吉之伴】

【インタビュー】オーストリア2部で経験を積む二田、パリ五輪へ「まずはここで」

 パリ五輪世代の1人として注目を集めているのが、20歳FW二田理央だ。2022-23シーズンに期限付き移籍先のオーストリア2部ザンクト・ペルテンでリーグ戦14試合に出場し、2ゴールと活躍。今年7月にサガン鳥栖からの完全移籍が発表され、さらなる飛躍が期待されている。そんな二田がパリ五輪への率直な思いを口にし、「本当に凄い」と絶賛する先輩ストライカーの存在を明かした。(取材・文=中野吉之伴/全3回の3回目)

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 オーストリア2部のザンクト・ペルテンでプレーする二田理央は2003年生まれの20歳。パリ五輪代表世代の選手だ。2022年にはモーリスレベロトーナメントに参加するU-19日本代表に招集された経験もある。

 オーストリアで自己研磨に励む日々のなか、五輪代表というのは意識しているのだろうか。二田は正直に心境を明かしてくれた。

「意識は……してなくはないです。もちろん入れるなら入りたいです。でもやっぱり今はまずチームで自分のやるべきことをやって、チームで結果を残さないといけない。チームの勝利のためにできることに集中してやっていけば、そのプレーを評価されたり、見てもらえる存在になれると思う。順番が逆になったらダメですよね。オリンピック(メンバー)に入りたいからどうこうじゃなくて、まずはここでチームの勝利のためにやり続けるだけ」

 ヴァッカー・インスブルックU-23時代に二田は得点王に輝いている。3部リーグとはいえ、初挑戦の海外でいきなり結果を出すのは簡単ではない。二田は自身の特徴と長所をどのように自己分析しているのだろう。

「一番の武器はスピードとゴールを決めること。あとまだ僕は途中から出場することが多いのもあるんですけど、ピッチに立ったら誰よりも走って、誰よりもハードワークをするようにしています。練習から毎回そこを意識して取り組んだ結果、出場機会アップにつながったと思います」

古橋亨梧のポジショニングに脱帽「自分もああいう選手になりたいなって」

 FWの選手にはそれぞれ自分ならではの得意な形、理想のシチュエーションがあるだろう。二田にとってはボールを奪った瞬間すぐに自分へパスを出してもらうのが理想的だと話してくれた。

「インスブルックの時の得点パターンとして多かったのもそれでした。相手DFからすると、自分たちが攻撃しようとしている時だから、どうしても少しは前のめりになるじゃないですか。だから僕らがボールを奪った直後に相手DFが戻る前にパスをもらえたら一気にチャンスにつながる。例えばですけど、日本だとボールを奪ったあとに素早く前へ、というよりもまず大事につなごうということが多いのかなと思うんです。それも大事なんですけど、FW目線で考えると相手守備がずれている時に簡単にスペースにパスを送ることを共通認識で持っていたら、僕もすぐに相手の背後にアクションを仕掛けられる。効率良く速い攻撃が仕掛けられるし、一番自分的にはいける自信があります」

 似た話を元日本代表FW岡崎慎司(シント=トロイデン)に聞いたことがある。あれは岡崎がブンデスリーガのマインツで15得点をマークしたシーズンだった。

「FWとしていつも要求しているのは、僕の動き出したのを見てからパスを出されるともう遅いということですね。相手DFが対応してしまいますから。もう感覚でいいから、それこそ僕の動き出しを見てなくても感じてパスを出してくれると、ビッグチャンスにつながったりします」(岡崎)

 一瞬のタイミングだから上手くいかないことも多いし、毎回毎回スペースに蹴り込んでいたらゲームオーガナイズが雑になってしまう。だが、せっかく前へ飛び出していけそうな時にボールを戻されると、リズムもなかなか生まれない。

 そんな二田だが、参考にしているFWはいるのか尋ねてみたら、1人の日本代表FWの名前を教えてくれた。

「好きな選手でいうと古橋亨梧選手(セルティック)ですね。プレースタイル的にも参考になる。そんなに身長も高くなくて、多分自分よりちょっと低いぐらいだと思うんですけど、ああやって戦えて走れて、そしてゴールをあれだけ決めるというのは、本当に凄いなと思います。やっぱりポジショニングが素晴らしいですよね。クロスに対してもいるべき場所にいるからゴールが生まれるんだと思うんです。必ずいるべき場所にいるから味方も信じて、クロスを上げたりパスを出せるんだなと。自分もああいう選手になりたいなって思ったりしますね」

欧州で2シーズンを経験「やらないと始まらないじゃないですか、何事も」

 欧州に渡って2シーズンが終わった。将来のことは誰にも分からない。この先上手くいく保証なんて何もない。どれだけ頑張っても壁を前に打ちひしがれるかもしれない。

「そりゃどこまで成長できるかは分かんないです。でも、やらないと始まらないじゃないですか、何事も。やって、やり続けて気づけることだったり、逆に『ああ、ここもまだできなかったんだ』という課題と向き合えたりとか。そういうのは感じられるようになってきたと思うんです」

 そう話す二田の顔はとても清々しいし、瞳には力が満ちあふれている。まだまだやれることがある。まだまだやりたいことがある。将来への夢と希望にあふれている。毎日の取り組みの先にきっと自分の思い描く理想があると信じて。

 二田の歩みはこれからだ。

[プロフィール]
二田理央(にった・りお)/2003年4月10日生まれ、大分県出身。佐伯リベロFC―FC佐伯S-playMINAMI―鳥栖U-18―鳥栖―FCヴァッカー・インスブルックU-23(オーストリア)―ザンクト・ペルテン(オーストリア)。2021年に鳥栖のトップチームで2種登録され、同年6月の横浜FM戦でJリーグデビュー。同年7月、18歳でオーストリアのFCヴァッカー・インスブルックU-23(3部)へ期限付き移籍し、19試合21ゴールの活躍で得点王に輝いた。22年8月から同国2部ザンクト・ペルテンへ期限付き移籍し、リーグ戦14試合で2ゴールの結果を残した。23年7月に鳥栖からザンクト・ペルテンへの完全移籍が決まった。パリ五輪世代のエース候補としてさらなる成長に期待が集まる。

(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)

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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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