なでしこジャパンW杯で覚醒期待の7人 リバプール所属の新10番も…“シンデレラガール”候補厳選
【識者コラム】日本を躍進に導く“シンデレラガール”候補7人を厳選
池田太監督が率いるなでしこジャパンはオーストラリアとニュージーランドで共催される女子ワールドカップ(W杯)に挑む。
当初4バックでスタートしたが、世界と戦うなかで3-4-2-1が基本システムに。相手や選手の組み合わせによって3-5-2や5-3-2のように変わることもあり、ウイングバックを高い位置に上げてボールを回したり5バックで守備を固めてカウンターを狙ったりと、臨機応変な戦い方ができるのは強みだ。
FW岩渕真奈の選外が話題になったが、池田監督が役割やバランスを考えて選んだという23人は精鋭であり、戦術的なタスクをこなしつつ、勝負どころで何かできる選手たち。成長著しい世界の列強は非常に手強いが、組織と個人をいかに融合させて、世界と戦うかというテーマで言えば、ベスト16で敗退した前回大会を超える躍進は期待できる。
日本は準決勝までニュージーランド側で戦い、グループリーグの対戦国はザンビア、コスタリカ、スペイン。勝ち上がるとラウンド16では開催国ニュージーランドや北欧の強豪ノルウェーのいるA組の1位か2位と当たることになる。ここでは世界の舞台で日本を躍進に導く“シンデレラガール”になり得る注目選手7人を筆者の視点でピックアップした。
なお2011年の世界一メンバーで、4大会目の出場となるDF熊谷紗希(ASローマ)、26歳にして熊谷キャプテン(135キャップ)に次ぐ66キャップを誇るMF長谷川唯(マンチェスター・シティ)、長谷川と並ぶなでしこジャパンの戦術マスターであるDF清水梨紗(ウェストハム・ユナイテッド)など、過去にW杯経験がある選手は対象外にしている。
■長野風花(MF/リバプール)
なでしこジャパンの新たな10番。抜群のテクニックと視野の広さで、中盤から攻撃を司る。局面での打開力もあり、機を見ればドリブルで持ち上がって決定機を作り出すことも。長谷川との2ボランチはチームの心臓だ。
■藤野あおば(MF/日テレ・東京ヴェルディベレーザ)
準優勝に躍進した昨年のU-20W杯ではエース級の活躍で、大会のブロンズ・ブーツを受賞。同チームを率いた池田監督は直後の活動でA代表に引き上げた。攻守のプレー強度が高く、バイタルエリアで違いを生み出せる。
■猶本 光(MF/三菱重工浦和レッズレディース)
悲運に泣かされてきたヒロインが、念願の世界大会に挑む。ボックス・トゥ・ボックスのMFだが、浦和でトップ下として覚醒。なでしこジャパンでは2シャドーの一角として開幕スタメンの期待が高まる。ミドルシュートの決定力が高く、デザインされたセットプレーのキッカーとしても重要な役割を担う。
高橋の並外れたパワー、宮澤の1、2を争うスピードは必見
■千葉玲海菜(FW/ジェフユナイテッド市原・千葉レディース)
重心の低い高速ドリブルはWEリーグで規格外のインパクトを放っており、列強の大型センターバックにとっては“初見殺し”になり得る。162センチ57キロとサイズは決して大きくないが、体幹の強さを生かしたポストプレーは往年のセルヒオ・アグエロのよう。世界に“千葉の千葉”をアピールできるか。
■高橋はな(DF/三菱重工浦和レッズレディース)
右膝の怪我からWEリーグの終盤に復帰して、すぐに招集されたことが彼女の重要性を物語っている。日本人のDFとしては並外れたパワーとスピードを備えており、海外の強力アタッカーにも対人戦で負けない。欧米の列強を相手に獅子奮迅の働きが期待される。
■宮澤ひなた(MF/マイナビ仙台レディース)
なでしこジャパンでも1、2を争うスピードの持ち主で、爆発力と機敏性の両方を兼ね備えるアタッカーはそうはいない。本番前のラストマッチとなるパナマ戦は所属チームの地元である仙台で行われるため、ここで活躍して勢いに乗りたいところだ。
■浜野まいか(FW/ハンマルビーIF)
チーム最年少の19歳だが“シンデレラガール”の可能性を大いに秘めたファンタジスタだ。独特のボールタッチとリズムで、藤野やDF石川璃音とともにU-20W杯で準優勝に輝くと、さらなる成長を求めて、INAC神戸レオネッサからイングランドの強豪チェルシーに移籍。現在は期限付きでスウェーデンのハンマルビーに移籍しているが、代表での活躍がそのままクラブでの飛躍につながりそうだ。
河治良幸
かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。