ハリルJが見せた“2つの顔” ボール保持率「20%ダウン」が招いたサウジ戦後半の失速
バランスが良かった前半のポジショニング
そこで次は、前後半それぞれの選手の平均ポジションの図を見てみたい。先ほど同じく左が前半、右が後半だ。
前半は左サイドバックの長友が高い位置でボールを受ける機会が多いため、若干バランスが悪いが、それ以外はボランチの長谷部、山口の左右の関係も含めて「穴」の少ないバランスを保っている。
後半は長友の上がったスペースは、やはり狙われることが多かったので最終ラインがやや左にシフトしている。ボランチも横の関係から縦の関係になり、後半から2列目の右に入った本田が右を起点にしながらもある程度自由に動くことで、そこにも若干のスペースが生まれ、前半との比較ではチーム全体のバランスが少し悪くなっていた。
その結果、後半の方が相手陣内でボールを奪う率が下がっている(サウジアラビアの自陣ボールロスト率は前半41.7%、後半36.5%)。また、日本陣内でサウジアラビアにボールを保持される時間も、前半は3分29秒だったのが後半は7分23秒と約2倍になっていた。
さらにインターセプトのデータを見ても、日本は前半16本でそのうち相手陣内で9本(56.3%)、後半は25本でそのうち相手陣内6本(24%)となっている。相手の攻撃の芽を摘むために、高い位置からボール奪取を狙うプレーは明らかに前半の方ができていたことになる。後半に相手が攻勢を強めたから自陣での対応が多くなったのか、あるいは前半は前からバランスの良いポジショニングでコンパクトに連動できていたから相手のポゼッションが上がらなかったのかは、それぞれのチームのゲームプランを聞かないと分からないが、オマーン戦で披露できていた日本らしさは前半の方が色濃く反映されていた。
前半1-0、後半1-1。サウジ戦の前半と後半の結果の中身は、多くの示唆に富んでいる。それは時間の経過という問題ではなく、その時間にピッチに立っていた演者が異なるからだ。これまでの顔だった本田、香川、岡崎という海外でも通用していた一流演者が、2年後まで成長曲線を描けるのか。あるいはそれは難しいと判断して、緩やかに世代交代を始めるのか。2018年ロシアW杯を見据えたチーム作りにおいて、大きな分岐点となる試合だったのは間違いない。
analyzed by ZONE Analyzing Team
データ提供元:Instat
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フットボールゾーンウェブ編集部●文 text by Football ZONE web
ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images