J1前半戦査定・後編 昇格組・新潟が示すポテンシャル、首位争い神戸が抱える懸念点とは?

9チームの前半戦を100点満点で評価【写真:徳原隆元】
9チームの前半戦を100点満点で評価【写真:徳原隆元】

新潟から鳥栖まで、J1リーグ9チームを100点満点で評価

 2023シーズンのJ1リーグも、白熱した戦いが後半戦に突入している。「FOOTBALL ZONE」では、「前半戦通信簿」と題してJ1クラブの前半戦をチームごとに考察。100点満点の点数と寸評を独自に行った。後編ではアルビレックス新潟からサガン鳥栖まで、残る9クラブを調査していく。(後編/文=河治良幸)

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■アルビレックス新潟(13位) 77点

 2勝2分でスタートを切るなど、序盤戦はJ1を席巻。GKの小島亨介からつないで崩すスタイルは衝撃的で、さらに崩しの局面で、伊藤涼太朗という才能が輝きを放った。しかし、相手の対策に加えて伊藤も移籍するなど、後半戦は巻き直しが求められる。第20節のヴィッセル神戸戦はハイプレスに対する自陣のミスが出て、失点がそのまま敗戦につながったが、スコア以外のあらゆる要素で相手を上回るなど、パリ五輪世代のホープである三戸舜介を中心に、チームのポテンシャルは示された。

■名古屋グランパス(3位) 80点

 長谷川健太監督らしい堅守速攻が発揮されており、そのフィニッシャーとしてFWキャスパー・ユンカーがフィットしたことも大きい。爆発的な得点力は無いが、手堅く相手を封じながらボールを奪ったら素早いトランジションで背後やオープンスペースを突いて、確実に仕留める。2-0で勝利した第19節の川崎フロンターレ戦は象徴的なゲームだった。基本のスタイルは継続しながら、ユンカーと永井謙佑の2トップなど、オプションも加えている。さらにオランダから復帰の前田直輝や札幌から期限付き移籍で加入の中島大嘉が、後半戦の躍進に向けたパワーをもたらすか。

■京都サンガ(14位) 68点

 序盤戦は持ち前のハードワークと素早い攻守の切り替えを強みに勝ち点を稼いだが、徐々に地力で推される展開が目に付くようになった。それでもパトリック、一美和成、木下康介といったターゲットマンを生かしながら“昇格組”の新潟と横浜FCから勝ち点3を掴み取るなど、しっかりと残留ペースは維持している。そこに欧州で経験を積んだ原大智が加わるのは大きいが、右サイドのアクセルとして稼働してきた白井康介の穴を大卒ルーキーの福田心之助などが埋められるか。夏場を乗り切りながら、さらに構成力を上乗せする鍵は日本代表MFの川﨑颯太を擁する中盤だ。強度のアベレージは高いが、局面に違いを生み出す谷内田哲平はもっと活用できそうだ。

■ガンバ大阪(15位) 55点

 徳島から就任したダニエル・ポヤトス監督が我慢強く、粘り強く、自陣からGKを含む全体でボールを動かすスタイルを構築してきた。序盤はミスから失点を重ねるなど、なかなか結果が出ない中で批判的な評価も強まったが、成果は徐々にエビデンスとして表れてきている。懸念材料としてはベースの部分が積み上がるなかで、ハマらない選手が余剰戦力になる恐れも。ガンバは残留に満足して良いチームではない。上位を狙っていく上で、ファイナルサードの決め手は明確な課題として残っており、特にFWイッサム・ジェバリがいない時の得点力はもっと高めていく必要はあるだろう。

■セレッソ大阪(5位) 72点

 高い位置でボールを奪い、ショートカウンターで攻め切るのを理想的なプランだ。ただ、攻撃が単調にならないのは中盤に香川真司という司令塔がいるから。相手に引かれてもワイドな組み立てから、カピシャーバやジョルディ・クルークスと言った単騎でも突破できるサイドアタッカーがチャンスを作り、最後はレオ・セアラが仕留める。横浜F・マリノスや北海道コンサドーレ札幌ほどの爆発力はないが、得点を取る形もあり、攻守のバランスはJ1で最も取れたチームの1つだ。ただし、主力とサブに差のあるポジションがいくつかあり、外国人の主力がいるポジションの選手、例えば北野颯太、上門知樹、中原輝などの突き上げが鍵になりそう。2トップでスタメン出場の多い加藤陸次樹も3得点は物足りない。

首位争いを展開する神戸、夏場が正念場か

■ヴィッセル神戸(2位) 90点

 前半戦の主役だろう。昨シーズンは3度の監督交代を経験し、終盤まで残留争いに巻き込まれたが、2年目となる吉田孝行監督は方向転換。ハイプレスとショートカウンターを繰り出し、それがハマらなければ、躊躇なくFW大迫勇也にロングボールを入れる“ストロングスタイル”で首位争いを展開している。後半戦の問題は強度をいかに維持していくのか。あるいは下がった時に、どう戦い抜くのか。最終ラインには怪我人が続出しており、吉田孝行監督も綱渡りの采配が続いている。中盤から前も主力の稼働率が非常に高く、試合の終盤にどうしても疲弊感が出てしまう。夏場になればなおさらだろう。このスタイルを継続する限りFW、MF、DFともに最低1人は主力級の働きができるタレントの補強が必要と見られるが、同時にここまで出番の少ない選手たちの奮起にも期待したい。

■サンフレッチェ広島(7位) 68点

 前半戦は可もなく不可もなくといったところだ。確かに、エース級の働きが期待された満田誠のアクシデントはこの上なく痛いが、2年目のミヒャエル・スキッベ監督が、躍進した昨シーズンからあまりアップデートできていないことも、綱渡りのような試合運びを招いているように見える。トランジションの早さは相変わらずだが、ライバルも攻守の強度を引き上げているからだ。ここから効果的なテコ入れをできないようだと、上位でも下位でもないポジションに落ち着いてしまうだろう。そうは言っても、森島司や日本代表候補の川村拓夢など、2列目の選手はボールを持てているだけに、FW次第で一気に上昇する可能性も。ドウグラス・ヴィエイラは奮闘しているが、怪我で一時帰国したピエロス・ソティリウが早期復帰できれば良いが、アタッカーの補強は必要か。

■アビスパ福岡(12位) 52点

 堅実なディフェンスと相手の隙を逃さない攻撃で、着実に勝ち点を積み上げていたが、3-2で敗れた新潟戦あたりから複数失点が目立ち、黒星も増えた。もともと得点力の高いチームではなく、長谷部茂利監督も守備をベースに構築しているだけに、19試合で25失点という数字はそのまま成績に反映されている。その意味で、セレッソ大阪に1-0で勝利した第19節は福岡の基本スタイルを思い出すような試合内容だった。MF井手口陽介がフィットしてきたことはプラス材料。強度を引き上げられて、強力なミドルシュートも備える“スーパーボランチ”が攻守両面にプラス効果をもたらせば、後半戦の浮上も。

■サガン鳥栖(9位) 74 点

 序盤戦は要所要所に怪我人が出た影響もあってか、なかなかギアが上がらないなかで、2年目の川井健太監督にも厳しい声が飛んだ。しかし、指揮官は慌てふためくことなく、地道にチームを軌道に乗せており、後半戦で十分に上位を狙えるポジションまで引き上げた。ここまでの成績だけ見れば60点ぐらいだが、川井監督が前半戦で、秋の収穫に向けた“田植え”をしていたと見て、この評価にしている。昨年のようにシステムをあまり可変させないビルドアップなどにも取り組みながら、ゲーム体力は着実に付いて来ており、ベンチにもリーグ戦でのスタメン経験者が並ぶようになったことが、選手層のアップを示している。怪我人も戻って来たなかで、本田風智の長期離脱は痛いが、後半戦での浮上の可能性は高いと見ている。

(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)

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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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