「歴代日本人MFスピードスター」10選 今季のJで覚醒! “ジャガー”の弟、“シャーク”もランクイン
【MF編】現役、レジェンドの年代を問わない歴代スピードスターに注目
世界中には“スピードスター”と呼ばれる選手が多く存在する。「FOOTBALL ZONE」では日本サッカー、森保ジャパン第2次政権でもキーワードになる「スピード」に注目した特集を展開。今回は日本人MF編をお届けする。(文=河治良幸/全3回の2回目)
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■藤井智也(24=鹿島アントラーズ)
現役Jリーガーでは最速クラスと断言できる。高校時代はほぼ無名だったが、異例のセレクション合格を勝ち取った立命大で頭角を表すと、大学最速のサイドアタッカーとして、在学中にサンフレッチェ広島の特別指定選手として多くの公式戦に起用された。広島時代は3バックの右ウイングバックを主戦場としていたが、4バックの鹿島ではウイングやサイドハーフがメインになっている。どことなくキャリアやスタイルが伊東純也と重なる藤井。1対1の突破力に絶対の自信を持ち、縦の仕掛けは抜群だが、プレー強度の安定性やゴールに関わるフィニッシュワークに明確な課題がある。
■伊東純也(30=スタッド・ランス/フランス)
日本を代表するスピードスターと言えば、多くのファンが真っ先に思い浮かぶ1人だろう。大卒からヴァンフォーレ甲府で急成長し、柏レイソルで花開いて、欧州に活躍の舞台を移した。フリーランもさることながら、ボールを持っても鋭く縦に突破して高速クロスに持ち込む。またワイドからゴール前に飛び出すプレーも得意としており、しかもスピードを生かしたプレーを短い間隔で繰り出せる。30歳になっても身体的な衰えが感じられないばかりか、状況判断や動きの引き出しも増えており、まだまだクラブと代表の両方で活躍が期待できそうだ。
■小屋松知哉(28=柏レイソル)
圧倒的な加速力とトップスピードでもバランスがブレないドリブルを武器に、高校サッカー選手権で1学年上の仙頭啓矢(柏)との2トップが注目を集めた。京都橘高校から鳴物入りで名古屋グランパスに加入したのが2014年。その評判に違わず高卒ルーキーにして第6節の広島戦でデビューを果たすが、その試合中に重傷を負ってしまった。そこからは順風満帆のキャリアとはならなかったが、京都サンガF.C.、サガン鳥栖を経由して、現在は柏で輝きを放つ。今季の北海道コンサドーレ札幌戦では超高速のロングカウンターからゴールを決めて、改めて類まれなスピードを知らしめた。
■西村拓真(26=横浜F・マリノス)
一瞬のスピードであれば、もっと速い選手はいるかもしれないが、動きの連続性においては現在のJリーグでも最高峰であり、国際的な基準でも高いレベルにある。走行距離は14キロに達することもあるが、その中にスプリントや鋭い動きを入れていけるのは彼のスペシャリティーだ。フィジカル的な能力が高いだけでなく、決断して行動に移していく速度が非常に速い。横浜FMでは4-2-1-3のトップ下が固定的のポジションだが、もともとFWの選手でもあるので、飛び出しからのボックス内での決定力も魅力だ。
■山田隆裕(51)
Jリーグ草創期を代表する快速選手として彼を挙げないわけにはいかない。名門の“清商”で高校1年生からレギュラーになり、スピードに加えてテクニックも抜群。日産自動車サッカー部から横浜マリノス(当時)に移行する時期にヤングスターとして活躍した。オフト・ジャパンにも選ばれたが、招集されてもなかなか起用されないことから一時期は参加を辞退するなど、自己主張の強さでも話題に。期待通りのキャリアになったとは言い難いが、終盤はドリブルよりパスを駆使するチャンスメイカーとして、所属したベガルタ仙台をJ1昇格に導いた。
■屋敷優成(19=大分トリニータ)
大分のアカデミーから育った若き俊英は今年開催されたU-20ワールドカップ(W杯)のメンバーでもあり、ウイングからサイドハーフ、サイドバックまでこなせる俊足のポリバレントとして、評価を高めている。一瞬の加速力はJリーグ屈指で、アタッカーをマークすればタイトなマークで封じ、攻撃では素早い攻め上がりと仕掛けでワイドからチャンスを作り出す。戦術眼が高く、ワンツーなど、コンビネーションプレーの中でも持ち前のスピードを発揮できる、多彩なスピードスターだ。
誰にも止められない“高速ドリブラー”に今季Jブレイクタレントも
■大久保智明(24=浦和レッズ)
アジア王者の浦和にあっても、一際スピード感のある動きで、チームに推進力を与えている。自他ともに認める高速ドリブラーでありながら、2列目であればどこでもこなせる器用さがあり、マチェイ・スコルジャ監督も左、中央、右と起用し、誰と組んでもアジャストできるセンスは特筆に値する。スピードはプレスや裏抜け、カットインなどで発揮される。アスリート能力とメンタリティーを兼ね備える大久保の課題は決定的なシーンにおけるクオリティーと精度。そこで一皮剥ければ日の丸も見えてくるタレントだ。
■石川直宏(42)
横浜FMのアカデミー育ちで、デビューもマリノスだが、長くFC東京で活躍した。本人曰く実際の走るスピードはそれほどでもないという。しかし、常にイメージと予測をしながら前向きに加速させていくスタイルが、歴代のJリーグを代表するスピードスターを形成した。最短距離でゴールに迫るスタイルに加えて、DFを抜くというよりは引き剥がしていくドリブル、そして鋭い切り返しで確実にチャンスを作り出した。
■三都主アレサンドロ(45)
1度スピードに乗ったら誰にも止められないほどの高速ドリブラーであり、左利きであることも付加価値に。明徳義塾高のサッカー留学生として来日したのが16歳の時。そこから俊足のサイドアタッカーとして評価を高めると、清水エスパルス、浦和などで活躍。2シーズンだがオーストリアの名門ザルツブルクでもプレーした。日本代表ではフィリップ・トルシエ監督時代から招集されて、日韓W杯にも出場したが、ジーコ監督の左サイドバック起用が転機となり、2006年のドイツW杯まで主力に定着した。キャリアの終盤は母国ブラジルで過ごしたが、間違いなく日本サッカーの歴史を代表するスピードスターの1人だ。
■浅野雄也(26=北海道コンサドーレ札幌)
水戸でプロデビュー。新天地の札幌では”シャーク”の愛称で呼ばれる。”ジャガー”の異名を取る兄・拓磨(ボーフム)ほどの爆発的な加速力はないが、代わりにアジリティーとクイックネスでDFの背中を取ったり、ちょっとしたギャップに飛び込んでいく。ポジションはMFの部類に入るが、タイプはれっきとしたストライカーだ。左足のキックもスペシャリティーで、あらゆる角度や距離からゴールチャンスがあれば躊躇なく狙っていくメンタリティーも今シーズンのゴール量産につながっている。
河治良幸
かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。