J1前半戦査定・前編 神奈川勢4クラブで明暗…首位・横浜FMを凌ぐ高得点は?

9チームの前半戦を100点満点で評価【写真:徳原隆元】
9チームの前半戦を100点満点で評価【写真:徳原隆元】

札幌から神奈川まで、9チームを100点満点で評価

 J1リーグは2023シーズンの半分を折り返し、白熱した戦いも後半戦を迎えている。「FOOTBALL ZONE」では、「前半戦通信簿」と題してJ1クラブの前半戦をチームごとに考察。100点満点の点数と寸評を独自に行った。まずは前編として、北海道コンサドーレ札幌から川崎フロンターレまで9クラブを調査していく。(前編/文=河治良幸)

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■北海道コンサドーレ札幌(8位) 79点

 爆発的な攻撃力で、横浜F・マリノスに次ぐ40得点を記録しているが、37失点している。5-4で勝利した6月3日の柏レイソル戦(5-4)は象徴的で、サッカーをエンタメとして捉えるなら退屈な試合が無い素晴らしいチームだ。しかし、現在8位という現実に向き合い、悲願のタイトルやAFCチャンピオンリーグ(ACL)を狙うのであれば、攻撃の持ち味はそのままに、失点数をいかに減らすかにフォーカスしていく必要はある。守備はマンツーマンだが、ディフェンスリーダーの岡村大八を中心に、その中での柔軟性は徐々に掴んできているのは前向きな要素だ。

■鹿島アントラーズ(6位) 72点

 岩政(大樹)体制の2年目。前体制から正式に引き継いでからの時間、序盤戦に苦しんだことを考ええれば、折り返しで6位という結果だけ見ると悪くない。ただ、相手がどこであろうと押し切っていくほどの強さは無い中で、選手の組み合わせに応じて4-4-2と4-2-3-1を使い分けているが、結局はファイナルサードから先で決め手を出せていない。前線に鈴木優磨、後方に植田直通がいる限りは大崩れすることは考えられないが、もう1つ前にギアを上げる起爆剤がないと、タイトルはもちろんACLにも手が届かない懸念はある。その鍵は2列目のテコ入れにあると筆者は見ている。

■浦和レッズ(4位) 86点

 マチェイ・スコルジャ監督1年目で、ACLファイナルという国内のライバルにはないミッションがあったなかで4位に付けており、次期ACLを含むカップ戦のタイトルも全て可能性を残しているのは立派だ。チームは成長過程にあり、指揮官が本来やりたい理想からはまだ遠いところにあるようだ。それでもACLファイナル直後のサガン鳥栖戦を最後に、公式戦12試合負けなしが続いているのは守備のバランスの良さ、アレクサンダー・ショルツとマリウス・ホイブラーテンという鉄壁のCBコンビと守護神の西川周作によるところが大きい。ただ、今のままだと黒星は付かなくても、連勝街道に乗っていくことは難しく、夏の補強を含めて攻撃面のパワーアップは必須だ。

■柏レイソル(17位) 30点

 昨シーズンは前半戦で躍進し、後半に失速したが7位でフィニッシュ。ネルシーニョ前監督は進化を求めて中盤の補強などを行い、一時は4バックにトライしたが、攻守のバランスも見出せずに空転してしまった。3バックに戻してからもゲームの主導権を取れず、自陣のミスから失点を重ねると、重心が後ろ向きに。井原正巳監督に交代してからも未だ勝利は無い。札幌や横浜FMのような攻撃的な相手だと、カウンターから得点を狙えるが、守備を固められるとスーパーゴールぐらいでしか得点が期待できない。ただ、ここまで来たら細谷真大、マテウス・サヴィオなどを徹底的に生かして、高い位置で奪ってのショートカウンターを突き詰めるべきかもしれない。

■FC東京(11位) 49点

 志なかばでアルベル・プッチ・オルトネダ前監督が去り、ピーター・クラモフスキー監督が引き継ぐ形に。自分たちからボールをつないで攻めるベースの考え方は変わらないが、安部柊斗と松木玖生をボランチに下げたところから押し上げる形で、縦にスピードアップされてフィニッシュに迫力が出てきた。ただ、ビルドアップの質が短期間で良くなるということはなく、俗に“解任ブースト”とも呼ばれる最初の数試合の結果はともかく、新体制でどこまでジャンプアップしていけるかは未知数だ。攻守にダイナミズムをもたらせる選手として、夏に加入したサイドバックの白井康介は鍵を握る。

神奈川勢は昨季王者・横浜FMが踏ん張るも、去年2位の川崎は苦戦続く

■川崎フロンターレ(10位) 45点

 折り返しで10位。普通のチームならそこまで悪くないと言えるが、過去6シーズンで4度のリーグ優勝を果たし、昨シーズンも2位だった川崎だけに、高い評価をする方が失礼だ。序盤から怪我人が多発したこと、谷口彰悟という偉大すぎるキャプテンのカタール移籍による穴を埋めきれていないことなど、チーム事情はあるにしても、Jリーグ全体が縦にスピードアップされるなかで、自分たちの持ち味であるパスワークを効果的なフィニッシュに還元しきれていないことは14番目という得点数に表れている。FW、MF、DFともに人的なテコ入れも必要だが、中盤はなおJ1トップレベルであるだけに、そこは生かしながらバージョンアップを図るべきだ。

■横浜FC(16位) 68点

 元々の下馬評からすると、現在16位でもそんなに悪い評価はできない。おそらく降格の1枠を巡る残留争いをしていくことは監督、選手、サポーターともにある程度、覚悟していたのではないか。四方田修平監督はボールを動かしながら自分たちで攻め崩していくことにトライし、ある時点でボール保持率が川崎に次ぐ2位になった。しかし、結果はワーストの失点。前半戦の終わりの方から蹴る時は蹴る、守備を固める時は固めるという割り切りが表れている。そのなかで、ここまで6得点のエース・小川航基がオランダ1部ナイメヘンに移籍という逆境をどう乗り越えて、残留を掴み取るのか。FWマルセロ・ヒアンがキーマンと見る。

■横浜F・マリノス(1位) 82点

 リーグ連覇を目指しながら、カップ戦に弱いイメージも結果で払拭していくシーズン。相手は横浜FMに勝つために何とかしてこようとするので、圧倒できる試合はあまり多くない。それでも先制すれば逃げ切り、先制されても逆転まで持っていく勝負強さは“王者”のそれだ。15得点のアンデルソン・ロペスを筆頭に外国人3トップが猛威を振るっている分、逆に昨シーズンのようなターンオーバーはしにくくなっているが、それでもルヴァンカップや天皇杯で順当に勝ち進んでいる事実が、選手層の厚さを物語る。序盤戦は主力と言い難かった上島拓巳や植中朝日のフィット、宮市亮の復帰などもプラス材料だ。ここから夏場、さらにACLが入ってくる秋に、その真価は問われてくるだろう。

■湘南ベルマーレ(18位) 35点

 アウェーの開幕戦で鳥栖に5-1で勝利するなど序盤戦は悪くなかったが、神戸に敗れた第10節から公式戦6連敗を喫するなど、チームとして自信を失ってしまう傾向も見られた。それでもチームは奮起しており、ホームで0-6の“リベンジ”を食らった第18節の鳥栖戦はむしろビルドアップのミスパスや、前がかりに行った裏側を狙われる形で失点を積み重ねた結果であり、1-4で敗れた横浜FM戦なども、前に出て点を取りに行く姿勢は失われていない。ただ、かけるリスクにターンが見合わなすぎる。主導権を求めてきたが、堅守速攻に立ち戻るべきか。得点はもちろん、前線の収めどころとしても町野修斗の移籍は痛いが、逆に山口智監督が攻守のバランスや選手起用を見直す転機と捉えて、後半戦の巻き返しを期待したい。

(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)

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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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