横浜FMエースFWはなぜ躍動できるのか? カメラが捉えたJ1王者が誇る攻撃の「カラクリ」
【カメラマンの目】4ゴールを叩き出した湘南戦の攻撃シーンにフォーカス
「Artilheiro (得点王)!」
試合後、場内を周ってサポーターに挨拶をしに行くアンデルソン・ロペスに向かってそうポルトガル語で声をかけると、トリコロールの背番号11番は右腕で力こぶを作る得意のポーズをとりながら、野性味を感じさせる精悍な顔立ちとは裏腹に「アリガドネ」と日本語で答え、カメラのファインダーの先で笑顔を見せた。
J1リーグ第19節、ホームの日産スタジアムに湘南ベルマーレを迎えた横浜F・マリノスは4ゴールを奪取し勝利。多彩な得点パターンから生み出された4得点のうち、エースA・ロペスは2ゴールをゲット。ストライカーとしての仕事をしっかりと果たし、リーグ通算得点も15点と積み上げ得点ランキングトップを快走している。
A・ロペスはフィジカルを武器に最前線で圧倒的な存在感を放つ。相手守備陣が密集するゴール前でもコースを狙ったシュートは正確で、ヘディングにも抜群の威力を発揮する。そうした彼の活躍の裏にはチームのサポートも欠かせない。
横浜FMの攻撃陣を撮影していて目に留まるのがドリブルで攻め上がって来る選手たちが、A・ロペスの動きを注視しているところだ。周囲の選手たちはストライカーとして彼を信頼しているから、パスを供給しようという意識が高い。
ここで見逃せないのが、エウベルやヤン・マテウス、そして西村拓真といった攻撃陣の技術である。テクニックを駆使したドリブルで左サイドからの攻略を担うエウベル、右サイドを担当するY・マテウスはフィジカルを武器としながらも、湘南戦では華麗なテクニックで相手を翻弄していた。西村が放つスルーパスもチャンスメイクに欠かせない武器だ。
彼らに共通しているのはボールをキープしながらも視線が下がらず、ルックアップして周囲の状況を確認できる冷静さを持っているところだ。味方の動きを視野に捉え、そこから放たれるパスは正確で、そうしたゴールへの演出の中心にいるのがA・ロペスだ。
今シーズンのJリーグは上位に位置するチームには軒並み優秀なゴールゲッターが存在し、ゴールを量産している。得点ランキング上位を見てもヴィッセル神戸の大迫勇也(12点)に、名古屋グランパスにはキャスパー・ユンカー(10点)と好調なチーム状態と符合するようにストライカーが活躍している。さらに新しい指揮官を迎えたFC東京の得点源であるディエゴ・オリヴェイラも10得点を挙げ、チーム上昇のために奮闘している。
リーグ戦も後半に突入し、各チームの立ち位置が見え、主役となる顔触れも定まってきた。リーグ制覇の争いとともに得点王の座を賭けた戦いにも注目していきたい。
徳原隆元
とくはら・たかもと/1970年東京生まれ。22歳の時からブラジルサッカーを取材。現在も日本国内、海外で“サッカーのある場面”を撮影している。好きな選手はミッシェル・プラティニとパウロ・ロベルト・ファルカン。1980年代の単純にサッカーの上手い選手が当たり前のようにピッチで輝けた時代のサッカーが今も好き。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。