イニエスタが繰り返した「愛情」「誇り」「我が家」 5年間過ごした日本が「新たな居場所となった」

神戸を退団するアンドレス・イニエスタ【写真: (C)VISSEL KOBE】
神戸を退団するアンドレス・イニエスタ【写真: (C)VISSEL KOBE】

ラスト試合は先発で57分間プレー

 ヴィッセル神戸の元スペイン代表MFアンドレス・イニエスタは7月1日、J1リーグ第19節・北海道コンサドーレ札幌戦でラストマッチを迎え、先発出場で57分間プレーした。1-1で引き分けた一戦で、前半からイニエスタらしいパスやシュートを披露。退団セレモニーでは大粒の涙を見せて別れを惜しんだ。最後は日本に対して「愛情」「誇り」「我が家」を繰り返し伝えた。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小杉舞)

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 あふれ出る涙を止められなかった。特別なユニフォームを着用して臨んだ退団セレモニーではサプライズで家族が登場。花束を贈呈されると、大粒の涙を流した。スピーチ後に場内を一周すると、ゴール裏のスタンドまで上がり、サポーターとハグ。1人1人とハイタッチするなど、ファン・サポーターを大事にするイニエスタらしい最後となった。

「5年前に神戸、ヴィッセルに来ました。その時にはこの旅がこれだけ美しく感動的なものになると想像できなかった。大切な思い出として持ち帰るものはみなさんが、自分たちがここに着いた1日目から大きな愛情とリスペクトを持ってくれた。私個人、家族のみんなを代表して感謝したい。自分の家を遠く離れたところで我が家にいるような感覚は普通感じられるものではない。ここで私たちは感じられた。それもみなさんのおかげ。感謝したい。本当にみなさんは私たちの人生の一部分です」

 この日、トップ下に入ったイニエスタがまず見せたのが前半34分、右サイドでふわりとした浮き球パスでチャンスを演出。これはDF酒井高徳に通らなかったが、最終ラインの裏を突くイニエスタらしいパスとなった。続く同36分には、ペナルティーエリア内で相手DFを1人かわしてシュート。だが、惜しくもDFにブロックされてしまった。

 そして、イニエスタにとって神戸のピッチに終わりが来る。後半12分にMF佐々木大樹と交代が告げられると、満員のスタジアムから大歓声が送られた。キャプテンマークを取り、MF山口蛍へ渡すと佐々木とハグしてピッチに一礼。札幌のミハイロ・ペトロヴィッチ監督と約5秒間の熱い抱擁を交わした。57分間のプレーで日本での最後の試合を終え、チームは1-1で引き分けた。

 39歳のイニエスタは、スペイン1部の名門FCバルセロナで16シーズンプレーしたのち、2018年に神戸へ完全移籍で加入。卓越したテクニックと戦術眼で攻撃を司り、クラブ初タイトルとなった19年度の天皇杯優勝などに貢献した。2021年5月に神戸との契約延長に合意し、2023年までの2年契約を締結していた。今年で契約切れとなり今後の去就動向が注目されていたなかで、イニエスタは今シーズンの出番減少を理由に今夏での退団を決断。迎えたラストマッチだった。

「2018年にここに来た時このクラブをより大きなクラブにするという約束を果たしに来た。それを果たせたと思うし、ピッチ内外で最大限出すことに務めてきた。自分が感じた誇りと皆さんが同じくらいの誇りを感じてくれていると願っている。この最後の数か月は自分にとっても取り巻く人にとっても苦しい時期だった。自分のキャリアを終えるにあたってピッチの上でプレーしながら引退したいという気持ちがあり、その気持ちに従って次の1歩を踏み出そうとしている」

別れの言葉に選んだのは「マタアイマショウ」

 最後のスピーチ、イニエスタが繰り返した言葉は「誇り」「愛情」「我が家」。自身が5年間で築き上げたものへの「誇り」。ファン・サポーターから感じた「愛情」。それらを最大限に受け止め日本が「我が家」になったと何度も何度も伝えた。

 スペインから遠く離れた日本で過ごした5年間。世界的スターでも最初は戸惑うことが多かっただろう。それでも、ピッチではプレーで輝きを放ち、ピッチ外では背中でチームを牽引。日本のファン・サポーター1人1人に向き合って、大きな影響を与えた。

 ここ日本は我が家。「サヨウナラ」という言葉が好きではないイニエスタは「マタアイマショウ」が別れの言葉だとした。

「5年は長い時間だったし自分たちにとってはここが新たな居場所となった。みなさんから愛情を感じられた。自分にとってハートで感じることが大事なのでこの感情が5年間の中で大切な感情として持ち帰る」

 また会える日まで――。多くを残してくれたイニエスタに「Jリーグは誇りだ」と感じてもらえるよう、日本サッカーは成長し続けなければいけない。

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