U-17日本代表、W杯導いた3人の「九州産ストライカー」は何者? 有望高校生が2人、唯一のプロ選手も
【識者コラム】アジアカップ準々決勝で躍動、U-17日本代表のFW3人にフォーカス
“06ジャパン”U-17日本代表はアジアカップの準々決勝でU-17オーストラリア代表に3-1で勝利し、11月にインドネシアで開催されるU-17ワールドカップ(W杯)の出場権を獲得した。23人の選手と代表スタッフ全員で勝ち取った世界の切符だが、このオーストラリア戦ではFWの選手3人がそれぞれゴールを決めるという素晴らしいトピックもあった。
1点目を決めたのはFW名和田我空(神村学園高)だ。U-20W杯の出場したFW福田師王(ボルシアMG)の後輩でもある名和田は非凡な敏捷性と研ぎ澄まされた得点感覚を持っており、長身FW道脇豊(ロアッソ熊本)と2トップを組んだ、この試合のゴールシーンでもそれが発揮された。
MF佐藤龍之介(FC東京U-18)が粘り強く獲得した高い位置のスローインから右サイドバックのDF柴田翔太郎(川崎フロンターレU-18)が思い切り良くゴール方向に投げると、道脇と3バックの中央を担う相手センターバックが競り合う背後でボールがバウンド。それを処理しようとするオーストラリアDFの背後に回り込み、ボールの落ち際に右足アウトで合わせて流し込んだ。
名和田はグループリーグ3戦目のインド代表戦で2得点を記録しており、これで今大会3点目。それでいて前線からのプレスや必要なら自陣に戻ってでもチームの守備をカバーする。狡猾なストライカーの顔と献身的なハードワーカーの顔を両方持つ、日本人FWのお手本のような存在と言える。
2点目はエースの道脇だ。今回のメンバーでは唯一、正式にプロ選手としてプレーする道脇はここまでウズベキスタン代表戦、ベトナム代表戦とゴールを重ねていた。過密日程の大会で、3試合目のインド戦は仲間に託してベンチから見守る形になったが、オーストラリア戦のゴールにより、出場したすべての試合でゴールを決めている。
形としては自陣の左サイドでボールを回したところから、左センターバックのDF永野修都(FC東京U-18)がロングパスをディフェンスの背後に送り込むと、DF吉永夢希(神村学園高)が左足でグラウンダーのパスを中央へ送る。そのボールに走り込みながら右足で合わせて、GKの逆を突いた。実はその前に、相手ディフェンダーを一瞬の動きで振り切っており、ストライカーらしいゴールだった。
吉永から良いボールが来ることは分かっていたという道脇は「駆け引きして。スピードで相手を外して。落ち着いて決められた」と振り返る。公表されているデータは186センチながら、すでに188センチあるという。ここまで高さを生かすヘディングでのゴールを決めていた一方、足もとでもしっかり決められることを証明するゴールとなった。
FW陣だけでなく、MF登録の望月耕平、佐藤龍之介も結果を残す
勝利を決定付ける3点目は途中投入されたFW高岡伶颯(日章学園高)がもたらした。左サイドからボランチのMF中島洋太朗(サンフレッチェ広島ユース)、MF矢田龍之介(清水エスパルスユース)とつなぎ、中央に流れた右サイドハーフの佐藤がボールを持つ流れで、道脇が引いて受ける動きをすると、高岡は逆の動きで、4バックに変更したばかりの相手右サイドバックとセンターバックの間を突いた。
完璧なタイミングで裏に抜け出した高岡はカバーに来た相手の右サイドバックが止めに来ると、GKを右足のインサイドカットで同時に逆を取り、冷静に左足で流し込んだ。8得点が入ったインド戦では名和田とのコンビで何度もゴールに絡みながら決め切れずにいただけに、ようやくストライカーらしい仕事ができたことに、嬉しさもひとしおだろう。
森山佳郎監督も「こっちの足が止まり出して、向こうがガンガン突いてきているところで取った、本当に貴重なゴールだった」と高岡の仕事を評価する。この時点で、お気づきの方もいるかもいるかもしれないが、3人とも“九州産ストライカー”であり、過去にもFW大迫勇也(ヴィッセル神戸)や福田などを生み出してきた九州という地のストライカー産出力を思い知らせる結果でもある。
そのほか、MF登録ながら2トップの一角も担える望月耕平(横浜F・マリノスユース)が3得点、同じくサイドハーフとFWを兼任する佐藤もベトナム戦でゴールを決めており、アタッカー陣が結果を出していることは頼もしい。世界の切符は勝ち取ったが、まだアジア王者になるというミッションが残っている。準決勝の相手は強豪のイラン代表。そして勝ち上がれば優勝をかけたファイナルを迎えるなかで、FW陣がいかに活躍して結果を出すか。非常に楽しみだ。
河治良幸
かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。