日本の“デュエル王”遠藤航の顔面ファウル被害、元主審・家本氏の見解は?「イエローカードが出てもおかしくない」
【専門家の目|家本政明】前半終盤のペルーMFとの衝突シーンに言及、ファウルになりやすいマッチアップ“例”とは…
日本代表は6月20日、国際親善試合で南米のペルー代表と対戦し4-1の快勝を飾った。この試合でキャプテンとして先発したMF遠藤航(シュツットガルト)が顔面に受けたファウル被害について、元国際審判員・プロフェッショナルレフェリーの家本政明氏が見解を示している。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部・金子拳也)
◇ ◇ ◇
前半22分にDF伊藤洋輝(シュツットガルト)のゴールで先制した日本。同37分には自陣から始まった華麗なパスワークから、最後はMF三笘薫(ブライトン)が決めて2点目をゲットする。後半も攻撃の手を緩めなかった日本は、後半18分にMF伊東純也(スタッド・ランス)、同30分にFW前田大然(セルティック)がダメ押し弾を決めて4点を奪う。終盤に失点してしまったものの、4-1の快勝を収めている。
そんななか試合終了前、キャプテンに指名後、初の出場となった遠藤に対する危険なファウルがあった。遠藤が球際に飛び込んだ際、少し遅れて飛び込んだペルーMFウィルデル・カルタヘナの右肩が顔面を直撃。しばらく遠藤が倒れ込む姿があった。
カードが出なかったこの判定について、家本氏は「行き方は危険だった。イエローカードが出てもおかしくないプレー」と見解を示す。「絶対イエローだと言い切れるシーンではない。レフェリーがそういう風に見えなかった、もしくは感じなかったからファウルにとどまった」と考察した。
このようなシーンはサッカー界では良く起こる事象の1つ。起こりやすいシチュエーションとして、家本氏は特に身長差がある選手同士のマッチアップを例に挙げてレフェリーの判断の難しさを主張している。
「悪気はないけれど、距離を取ろうと思って手を広げたらそれが顔だったというような場面など、例はいくつもある。大柄な選手からするとそんなので……と言いたい気持ちは分かる。とはいえ、一方で顔とか人間の急所に当たった場合、それは競技規則で結果的にという文言が書かれているから、力の程度によっては警告の対象にもなり得る。相手に配慮する必要もあると協議規則には書かれているから、レフェリーとしてもなかなか難しい」
今回、178センチの遠藤とマッチアップしたカルタヘナは180センチと、そこまで身長に差はなかった。ギリギリの攻防でボールを競り合ってきた“デュエル王”の遠藤だからこそのファウルシーンだったと言えるのかもしれない。
家本政明
いえもと・まさあき/1973年生まれ、広島県出身。同志社大学卒業後の96年にJリーグの京都パープルサンガ(現京都)に入社し、運営業務にも携わり、1級審判員を取得。2002年からJ2、04年からJ1で主審を務め、05年から日本サッカー協会のスペシャルレフェリー(現プロフェッショナルレフェリー)となった。10年に日本人初の英国ウェンブリー・スタジアムで試合を担当。J1通算338試合、J2通算176試合、J3通算2試合、リーグカップ通算62試合を担当。主審として国際試合100試合以上、Jリーグは歴代最多の516試合を担当。21年12月4日に行われたJ1第38節の横浜FM対川崎戦で勇退し、現在サッカーの魅力向上のため幅広く活動を行っている。