英国人レフェリーはなぜ安定? 優れた要素を元主審・家本氏が考察「大きく理由が3つある」

エルサルバドル戦を裁いたアンドリュー・マドレイ主審【写真:Getty Images】
エルサルバドル戦を裁いたアンドリュー・マドレイ主審【写真:Getty Images】

【専門家の目|家本政明】エルサルバドル戦を裁いたマドレイ主審について総評

 日本代表は6月15日、豊田スタジアムでエルサルバドル代表との国際親善試合を行った。日本が6-0と大勝を収めた試合を裁いたイギリス出身のアンドリュー・マドレイ主審について、元国際審判員・プロフェッショナルレフェリーの家本政明氏が“安定感”の理由を考察している。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部・金子拳也)

  ◇   ◇   ◇

 日本は開始1分、DF谷口彰悟のゴールで先制。直後には相手のミスからペナルティーエリア内でFW上田綺世が倒されPK(ペナルティーキック)を獲得する。このファウルでエルサルバドル代表DFロナルド・ロドリゲスが決定的な得点機会の阻止(ドグソ/DOGSO/Denying an Obvious Goal-Scoring Opportunity)で退場となったなか、上田が冷静にPKを沈めて2点のリード、さらには数的優位となった。

 その後はワンサイドゲームの様相を呈し、前半25分にMF久保建英、同44分にMF堂安律が決めて前半だけで4得点。後半にも交代でピッチに入ったMF中村敬斗、FW古橋亨梧が得点を挙げ、6-0でエルサルバドルを下している。

 マドレイ主審は、日本サッカー協会(JFA)とイングランドにおける審判員の統括組織(PGMOL/Professional Game Match Officials Limited)の審判交流プログラムの一環で来日。J1リーグ2試合をすでに担当しており、選手たちがジャッジを絶賛したことでも話題となった。

 この日カタールの審判団とタッグを組んだマドレイ主審は、前半早々の一発退場シーンにも迷わずレッドカードの判定を下す。エルサルバドル側が1人少なくなったことにより、日本の一方的な展開となった試合をそつなく裁いた。

 そんなマドレイ主審について、家本氏に「なぜ安定感があるのか?」と疑問をぶつけると「大きく理由が3つある」とレフェリー目線での凄さを解説。まずは判定にブレがないことを挙げ「ファウルを取る、取らないの基準がすごく分かりやすいから、『これ取って、これ取らないの』とクエスチョンが付く判定が少ない。すごく安定している。納得感が高い」と称賛している。

 2つ目にはコミュニケーション能力の高さを挙げ、「選手といいタイミングで、非常にいいコミュニケーションを取っている。積極的に選手と話をしている」と試合を通してのマネジメントの部分を称えた。

 また、「世界的にもよくあることだが……」と触れたのが、対外国でのレフェリングだったという点だ。「異国の人(レフェリー)に対して、人間は躊躇することが多少なりともある」と国籍の違いから起こる変化を指摘する。

「僕も現役時代に経験があるが、たとえば僕がある国のリーグ戦を担当すると、普段は荒れる試合なのに“外国人レフェリー”だからという理由で治まるというのはよくある話」と持論を展開していた。

「いずれにせよ、流石だなと思うシーンもたくさんあったし、みんなが納得する安心感と安定感があった」と能力の高さを称えた家本氏。エルサルバドルとの一戦でも、持ち前の能力を遺憾なく発揮していたようだ。

page1 page2 page3

家本政明

いえもと・まさあき/1973年生まれ、広島県出身。同志社大学卒業後の96年にJリーグの京都パープルサンガ(現京都)に入社し、運営業務にも携わり、1級審判員を取得。2002年からJ2、04年からJ1で主審を務め、05年から日本サッカー協会のスペシャルレフェリー(現プロフェッショナルレフェリー)となった。10年に日本人初の英国ウェンブリー・スタジアムで試合を担当。J1通算338試合、J2通算176試合、J3通算2試合、リーグカップ通算62試合を担当。主審として国際試合100試合以上、Jリーグは歴代最多の516試合を担当。21年12月4日に行われたJ1第38節の横浜FM対川崎戦で勇退し、現在サッカーの魅力向上のため幅広く活動を行っている。

今、あなたにオススメ

トレンド

ランキング