エルサルバドルDFの退場劇は「すごく残念なシーン」 元主審・家本氏が見たPKシーン「何やってんだよと…」
【専門家の目|家本政明】前半早々に上田に対するファウルで相手DFロドリゲスが退場に
日本代表は6月15日、豊田スタジアムでエルサルバドル代表との国際親善試合を行い6-0で勝利した。前半早々の退場劇について、元国際審判員・プロフェッショナルレフェリーの家本政明氏は判定を解説しつつ、「すごく残念なシーン」とフレンドリーマッチでの軽率なファウルを嘆いた。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部・金子拳也)
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前半1分にDF谷口彰悟のゴールで先制した日本は、相手のミスを突きビッグチャンスを迎える。同2分、エルサルバドルのバックパスに対しFW上田綺世がプレスをかけると、相手がミスした隙を見逃さず身体を入れてボールを奪取。ペナルティーエリア内で相手DFロナルド・ロドリゲスが上田を抱え込むように倒してファウルの判定となった。
この試合を担当したイギリス人のアンドリュー・マドレイ主審は、日本にペナルティーキック(PK)を与えるとともにDOGSO(通称ドグソ/Denying an Obvious Goal-Scoring Opportunity/決定的な得点機会の阻止)の判定でロドリゲスにレッドカードを提示。前半早々の退場劇となった。
試合を左右した序盤のファウルシーンについて、家本氏は「上田選手のプレッシャーのかけ方が良かったと思うし、試合を通じて上田選手のパフォーマンスは素晴らしかった」と称賛しつつ、「100%レッドカード」と判定に関してははっきりと言及。「全くボールにプレーしようとしていない。身体と腕を使って、上田選手に対してホールディングに行ったので、退場以外の選択肢がない」と所感を語る。
判定を踏まえたうえで、フレンドリーマッチでの序盤の退場劇は「個人的にはすごく残念なシーン。あれで試合が決まってしまった」と、11対11の試合を90分間できなくなってしまった事象の印象を明かした。
新競技規則でも、現行のルールでも「レッドカードになると思う」
一方で、ペナルティーエリア内での守備側ファウルについては、国際サッカー評議会(IFAB)が2023-24の競技規則の改正を通達。これまで「ボールをプレーしようと試みて反則した場合」は判定が一段階下がるとされていたが、今回の改正で「ボールに向かうことで(相手競技者に)チャレンジして反則を行った場合」と文言が修正されている。
この点について、家本氏も「これまではタックルなど足でボールにプレーしようとしていると判断された場合に限り三重罰(PK・退場・次節出場停止)を避けるため、一段階判定が下がっていた。今回の新改正では、それ以外の反則でもボールにプレーしようとしていると判断できたら一段階下がるという解釈に代わった」と解説。今回の事象についてもこの部分を踏まえて考察している。
「(上田選手のシーンが)これに該当するかなとも思ったが、どう見てもボールにプレーしようとしているようには見えない。現在の競技規則でも駄目で、新しいものでもあれはレッドカードになると思います。完全にうしろから抱えに行ってますからね」
家本氏は、抱え込む形で上田を止めたロドリゲスの退場は免れなかったと説明。「レフェリーとしても『何やってんだよ』と思いながらレッドカードを出したのではないかと。フレンドリーマッチのレフェリーは割と基準を緩めがちなんですが、あれを見逃すことはできない」と相手DFの軽率な判断に苦言を呈していた。
家本政明
いえもと・まさあき/1973年生まれ、広島県出身。同志社大学卒業後の96年にJリーグの京都パープルサンガ(現京都)に入社し、運営業務にも携わり、1級審判員を取得。2002年からJ2、04年からJ1で主審を務め、05年から日本サッカー協会のスペシャルレフェリー(現プロフェッショナルレフェリー)となった。10年に日本人初の英国ウェンブリー・スタジアムで試合を担当。J1通算338試合、J2通算176試合、J3通算2試合、リーグカップ通算62試合を担当。主審として国際試合100試合以上、Jリーグは歴代最多の516試合を担当。21年12月4日に行われたJ1第38節の横浜FM対川崎戦で勇退し、現在サッカーの魅力向上のため幅広く活動を行っている。