今季欧州5大リーグ・日本人海外組DF査定 センターバックで明暗…唯一のA評価となったのは?
【識者コラム】怪我やコンディションに悩んだ冨安&吉田に厳しめの評価
日本人選手たちが海外に渡り活躍するケースが増えている。特にヨーロッパはレベルが高いとされるなか、日本人DFも徐々に参入。「FOOTBALL ZONE」ではそんな侍たちの活躍ぶりに焦点を当て、「海外組通信簿」と題し特集を展開。今回は欧州5大リーグ(プレミアリーグ/ラ・リーガ/セリエA/ブンデスリーガ/リーグ・アン)でプレーするディフェンス選手を厳選し、今シーズンを通した査定を行った。(文=河治良幸)
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【評価指標】
S=抜群の出来
A=上出来
B=まずまずの出来
C=可もなく不可もなく
D=期待外れ
■冨安健洋(アーセナル) 評価:C
右サイドバックでイングランド代表DFベン・ホワイトとポジションを争いながら、スタメン6試合、途中出場を含めると21試合。期待はずれの「D」にしていないのは、チームを勝利に導く活躍もあったためだが、とにかく怪我に泣いたシーズンだった。11月にハムストリング、3月に今季絶望となる右膝の負傷をしたのがUEFAヨーロッパリーグ(EL)だったのはなんとも皮肉だが、特に終盤戦は重要な存在になり得ただけに、惜しくもプレミアリーグを逃したチームの失速にも少なからず影響したように思える。
■板倉 滉(ボルシアMG) 評価:A
怪我の時期を除けばほぼフル稼働しており、開幕時は4バック、終盤戦では3バックの右ストッパーとして、獅子奮迅の働きを見せた。「S」にできないのは統率面だ。チームがリーグ戦55失点で、10位に終わった原因になった。4-0で敗れたマインツ戦など、直接のミスでやられた訳でなくても、ディフェンス陣の決壊を防ぎきれなかった。またセンターバックとはいえ、チームを救う得点も欲しかった。板倉自身はクラブMVPの最終候補にノミネートされるなど、現地での評価は高い。ただ、欧州カップ戦を逃し、ダニエル・ファルケ監督の退任も決まっていることから、欧州カップ戦に出場権のある国内外のクラブからビッグオファーがあれば、新天地に活躍の場を移しても驚きはない。
■吉田麻也(シャルケ) 評価:C
ブンデスリーガ復帰シーズンとなったシャルケ加入は、ベテランの吉田がカタールW杯を目指すにあたって、良い選択だったことは間違いない。板倉滉の“後釜”として、開幕戦から27試合スタメンで稼働し続けた吉田。前半戦は孤立する場面が目立ち、スピードで逆を取られるシーンも散見されたが、チームを把握するとリーダーシップを発揮。23歳のマトリと良好な2センターを構築して守備をまずまず安定させた。しかし、怪我の影響もあってかラスト7試合でのスタメンはブレーメン戦の1試合のみに。後半から出場となったバイエルン・ミュンヘン戦ではミスから失点を招いてしまった。シャルケは今季リーグで2番目に多い71失点となり17位で降格。吉田のコンディションが最後まで問題なければというタラレバを言っても仕方ないが、消化不良のシーズンになってしまったことは確かだ。
■伊藤洋輝(シュツットガルト) 評価:B
昨シーズンは本人もラッキーな部分があったと認める形でチャンスを掴んだが、迎えた今季はドイツでの評価を確固たるものにした。2度の監督交代という非常事態が続いたなかで、リーグ戦30試合に出場して、入れ替え戦を勝ち抜いての残留という結果は見事だった。3月の代表戦後、必ず残留を勝ち取ると誓って臨んだ終盤戦も失点につながるようなミスは少なかった。終盤戦は3バックの左で躍動したが、4バックの左センターバックも板についてきており、その経験も森保ジャパンに還元されそうだ。
(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)
河治良幸
かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。