歴代日本人ストライカー「ワイドアタッカー」TOP10 新旧プレミア戦士、川崎勢が上位に君臨

「ワイドアタッカータイプ」のトップ10を独自に選定【写真:Getty Images】
「ワイドアタッカータイプ」のトップ10を独自に選定【写真:Getty Images】

【識者コラム】「決定力」「駆け引き」「打開力」の3項目で評価

 日本サッカー界にはこれまで、さまざまなタイプのストライカーがその名を轟かせてきた。相手との巧みな駆け引きから得点嗅覚を発揮した者や力強いポストプレーを武器にゴールへ迫ったハンターなど、特徴は多岐にわたる。「FOOTBALL ZONE」では今回、日本人ゴールハンターの系譜を振り返るべく特集を展開。ここでは歴代日本人ストライカーの中から「ワイドアタッカータイプ」のトップ10を独自に選定し紹介する。

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 左右のウイングはもちろん、幅広いポジションからゴールを目指すタイプを「決定力」「駆け引き」「打開力」の3項目で評価し、数値化した。この中には小林悠などのように「センターフォワード」部門や「シャドー&セカンドトップ」部門に入れられる選手もいるが、ストライカーとしての能力が高い選手を10人ずつランキングするため「ワイドアタッカー」としてまとめた事情もある。この部門で最も高い「27」に評価したのは岡崎慎司と三笘薫だ。

 岡崎は日本代表の国際Aマッチで50得点を記録しており、清水に6年間在籍したJリーグでも2008年から3季続けて2桁得点、ドイツ1部でもマインツで2014-15シーズンにキャリアハイの15得点、翌シーズンも12得点をマークした。レスター・シティでは主力として奇跡的なプレミアリーグ制覇を経験している。

“一生ダイビングヘッド”を座右の銘にしているように、泥臭く、ひたむきにゴールを目指す姿勢が特徴的だが、経験を重ねるなかで相手ディフェンスとの駆け引きや、味方からラストパスを引き出す動きなど、上手さが加わることで完成度を上げていった。ウエスカでは2019-20にスペイン2部ながら、34歳で12得点をマーク。欧州の厳しい環境で戦い続けるなかで、ポジションも常に理想的だったわけではない。日本人FWの開拓者として道なき道を切り開いてきたこともリスペクトするべきだろう。

 三笘の場合は純然たるストライカーというよりも、驚異的な「打開力」を武器とするサイドアタッカーという色は強い。点を取るという仕事に関しても日本人選手の中ではハイレベルであり、今回のテーマでも上位に食い込んできた形だ。基本ポジションは左のウイング。ベルギーのユニオン・サン=ジロワーズではウイングバックを担っていたなかで、ドリブルからのミドルシュートはもちろん、オフの動きからクロスに合わせるなど、非凡な得点力を見せている。

 三笘は「シャドー&セカンドトップ」部門にランキングした古橋亨梧と並び、これからさらなる成長が見込まれるタレントでもある。初めての挑戦となったプレミアリーグで7得点を記録しているが、今後の活躍によって比類なき次元に到達する期待も込めて、今回はこの評価にしている。

勝負に直結するゴールが多い小林悠、駆け引きの上手さは秀逸

 その三笘に次ぐ位置づけとなったのは“川崎勢”の小林悠と家長昭博だ。小林の場合は「センターフォワード」部門や「シャドー&セカンドトップ」部門でランクインさせることもできたが、バランスの関係で「ワイドアタッカー」部門に組み込んだ。拓殖大学の最終年に水戸ホーリーホックの特別指定選手としてJ2リーグに出場していたが、大卒後は川崎フロンターレ一筋で、前線のさまざまなポジションで起用されながら得点を積み上げてきた。三笘のような独力で打開するタイプではないが、幅広い動きから点で合わせることも、線で結ぶこともできる。

 2017年にはリーグ戦で23得点をマークし、得点王を獲得。クラブの初優勝に大きく貢献した。しかも、勝負に直結するゴールが多い印象だ。大久保嘉人やレアンドロ・ダミアンといったハイレベルなFWと競争、共存しながらJ1通算得点で歴代8位、現役Jリーガーとしては「センターフォワード」部門にランクインした興梠慎三に次ぐ137得点を記録している。ここからさらにゴールを積み上げて、歴代トップとなる191得点の大久保に近づいていってもらいたい。

 家長の場合は三笘と同じく、純然たるストライカーというわけではないが、大宮アルディージャ時代のエースとして、さらに川崎の主翼として得点力を発揮しており、2020年、22年にJ1で2桁得点を記録。そうした実績も評価して、この部門で上位にランクインするのは当然と言える。家長の場合は目に見える数字に表れないチャンスメイクでも貢献も光り、日本サッカーを代表するアタッカーの1人であることは間違いない。

 武藤嘉紀、玉田圭司、福田正博といった選手たちもチャンスメイクとフィニッシュの両面で高く評価されるべきストライカーたちだ。前田大然、永井謙佑、浅野拓磨に関してはサイドのスペシャリストというより、持ち前のスピードを武器に、幅広く稼働するワイドアタッカーであり、現代サッカーを象徴するタイプの選手たちでもある。

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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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