不退転の決意でゴールを守ったGK山岸 魂のV弾でJ2山形を昇格プレーオフ決勝に導く

2011年以来のJ1に王手
 そのヘディングに魂を込めた―ー。
 J2山形GK山岸範宏は、J1リーグ昇格プレーオフ準決勝磐田戦で、値千金の決勝弾を決めた。
 1-1で迎えた後半アディショナルタイム1分、守護神はゴールを捨てて相手ゴール前へと出た。右CKのチャンスで、石川竜也の放ったクロスをニアサイドに呼び込んだ。マーカーに競り勝つと、完璧なヘディングをファーサイドへと流し込んだ。
 次の瞬間、敵地ヤマハスタジアムは静まり返り、重苦しい空気へと包まれた。そのピッチでは、倒れこんで歓喜を爆発させる守護神がいた。そして、同僚が次々と抱きつき、手荒い祝福を受けた。
「ガッツポーズしようと思った。でも、慣れていないので……誰かが首を絞めてきたので苦しかった」
 山岸自身キャリア初得点となった一撃がJ1昇格に王手をかける値千金の決勝ゴールとなった。
「ゴール前に上がったのはベンチの指示。自分でも上がろうと思っていた。もう一度同じゴールは繰り返せません」
 守護神は、Jリーグ史上GKが挙げたゴールで最も価値のある得点をそう振り返った。ただし、不退転の決意で山形のゴールを守っていた。
 今年6月にJ1浦和から期限付き移籍で山形へと加入した。山岸は2006年に浦和のリーグ優勝の立役者となり、イビチャ・オシム監督時代には日本代表にも招集された、レッズ生え抜きの実力者だった。だが、GKにも足元の技術を求めるミハイロ・ペトロビッチ監督就任後は、出場機会を失った。若手GKが拙いミスで失点を重ねるたびに、ベンチで悔しい思いをかみしめてきた。昨季終盤戦で定位置を奪還したが、今季は広島から日本代表GK西川周作が移籍してくると、第3GKの座を言い渡されたという。
 GKは、経験や読みがモノをいう。年齢を重ねれば重ねるほど、いぶし銀の輝きを放つことができるポジションだ。それだけに、山岸は、実力を何としても証明したかったはずだ。
 そして、この日、戦力に勝る磐田の攻撃を持ち味の安定感抜群のセービングで防ぎ、自らの得点で撃破するおまけ付きで、36歳の守護神は主役となった。
 だが、これで終わりではない。7日に味の素スタジアムで行われるJ1昇格プレーオフ決勝戦で、J2リーグ3位の千葉と戦う。円熟の守護神は、2011年以来となるJ1の高みに山形を再び押し上げる。
【了】
サッカーマガジンゾーンウェブ編集部●文 text by Soccer Magazine ZONE web
ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images

page 1/1

今、あなたにオススメ

トレンド

ランキング