原輝綺、欧州で受けた衝撃「デカくてゴツいのに…」 体感した「日本とのギャップ」とサッカーの醍醐味【現地発】

グラスホッパーでプレーする原輝綺(写真は清水在籍時)【写真:Getty Images】
グラスホッパーでプレーする原輝綺(写真は清水在籍時)【写真:Getty Images】

【インタビュー】清水からグラスホッパーへ移籍、「守備のほうが日本との違いを感じる」

 今冬に清水エスパルスからスイス1部グラスホッパーへ期限付き移籍したMF原輝綺は、欧州でハイブリット化を目指して戦い続け、サッカーの醍醐味を肌身で味わったという。日本と欧州サッカーの違いに触れつつ、「楽しさと難しさの両方を感じる」と明かしている。(取材・文=中野吉之伴/全3回の2回目)

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 日本サッカーと海外サッカーは違うという声をよく聞く。欧州移籍を果たした選手は多かれ少なかれ、そのギャップに戸惑い、順応・適応するためにさまざまなアプローチをする。その実感や取り組み方は選手それぞれだ。

 スイス1部グラスホッパーに半年間レンタル移籍で加入した原の場合はどうだろうか。距離感、スピード感、チームと個人におけるプレー領域……。さまざまな部分で違いがあるなか、「サイドバック(SB)として、例えば攻撃面と守備面とだと、どっちのほうにより違いややりにくさを感じるのか?」と尋ねてみると、原は「そうですね」と言って、しばらくじっと考え込んだ。

「守備のほうが大きいかな。守備のほうが日本との違い、ギャップを感じますね。日本の場合は組織で守るチームが多いというか、守備陣で上手くスペースを守りながら、スペースを消しながらという守り方がほとんど。だから誰かが出ていったら誰かがそこのスペースを埋める。そして選択肢として外は捨てるというやり方を取るところが多いです。

 でもこっちはカバーに入るというのはなく、前に出ていってそこで潰さないと、その選手の責任になる。プレーしていてカバーというのは、あってないようなものなのかなっていうのは思います。だからか、自分のスペースを捨てて出ていくことへの恐怖心は、こっちにはあまりないのかなとも感じていますね」

 自分が動いた裏のスペースを使われることを恐れるのではなく、それ以上先へボールを運ばせないために、一気に相手との距離を詰めて抑え込むという考え方がベースにあることが多い。守備を固めて跳ね返すの前に、自分たちで仕掛けてボールを奪い取るという思いが強いのだ。

 それがベースにあるから、ファンもそうしたプレーを常に求めるし、不用意に距離を取って下がるとブーイングが起こる。それは少しでも相手にスペースを与えると、ゴールに直結するパスやドリブル、シュートを許す危険性が高まるからだ。攻撃側の選手が心理的なプレッシャーを感じないほど距離を空けてしまったら、それはマークしていないも同然と言える。

「だからやっぱり1本目も早い。そこは日本とのギャップというか違いは大きくあるなと思います。強度はやっぱり高いですよね。単純に、身体の強さだったり速さだったり、スピード感っていうのは間違いなくJリーグより速い。シンプルな身体のぶつかり合い、足の速さ、ゲーム展開のスピードだったり。そういうのに慣れなくちゃいけないって感じています」

スピードあふれる選手たちとの対峙に見出した楽しさ「やられた時はもちろん悔しい」

 その一方、スピード面に関しては原も確かな手応えを得ており、自信を持って対応できているという。

「スピードある選手が得意なんで。スピードでは負けないっていうか、ぶっちぎられることはない。ただJリーグにいた時より、やっぱり神経を使いますね。速い選手がいっぱいいますから。デカくてゴツいのに自分と同じぐらい足が速かったりするんで。そこは結構、びっくりしました」

 そうしたガツガツした戦いを原はどのように受け止めているのだろう。楽しんで夢中になれているのだろうか。

「うーん、楽しさと難しさの両方を感じる場面が多いです。スピードがある選手と対人でやり合うのは面白いし、それに自分が負けないことが多いので、そういう時は嬉しい。そこでやられた時はもちろん悔しい。そういうサッカーの醍醐味、DFの醍醐味っていうのは楽しさを感じています」

 1対1での対応や守備でのアプローチに慣れ、チームメイトと共通のイメージを持ってプレーできれば、状況に応じたカバーリングやサポートが武器になる。戦術的多様性が欧州サッカーではどんどん広がり続けているなか、“気の利いた”プレーができる選手の有用性は高くなるはずだ。そんなハイブリット化を目指して原は日々戦ってきた。

「守備のところはもう少し改善が必要だなと思います。そこも臨機応変に使い分けていかないといけないかなと。全部突っ込むのも駄目だし、行っていい場所と駄目な場所、行っていいタイミングと駄目なタイミングの見極めが必要かなと思います」

[プロフィール]
原輝綺(はら・てるき)/1998年7月30日生まれ、埼玉県出身。AZ’86東京青梅―市立船橋高校―アルビレックス新潟―サガン鳥栖―清水エスパルス―グラスホッパー。2017年に新潟へ加入し、ルーキーイヤーはJ1リーグ戦18試合1ゴール。19年から鳥栖、21年から清水でプレーし、22年12月にグラスホッパーへ期限付き移籍。加入後に負傷して戦線から一時離脱するも、左右のSBに対応して徐々に出場機会が増加し、最終的にリーグ戦12試合に出場。シーズン後、グラスホッパーからの退団が発表された。19年5月に日本代表に初選出され、同年6月に開催されたコパ・アメリカのチリ戦でA代表デビューを飾った。

(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)

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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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