MF原輝綺、清水からスイス移籍で感じた違いとは? 「JリーグにはJリーグの良さがある」【現地発】
【インタビュー】清水からグラスホッパーへ期限付き移籍「スイスは個人戦が多い」
原輝綺が清水エスパルスから期限付き移籍でスイス1部グラスホッパーへ加入してから約半年が経ち、新天地でリーグ戦12試合に出場した。自身初となる海外挑戦でどんな日々を過ごしていたのか。そしてどんな取り組みをしていたのか。チューリッヒ郊外にあるグラスホッパーのオフィスを訪問し、インタビューを行った。(取材・文=中野吉之伴/全3回の1回目)
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決して順調な滑り出しだったわけではない。2023年1月21日、ワールドカップ(W杯)中断期を経て再開されたスイスリーグ第17節首位ヤングボーイズとの試合で後半15分からの途中出場でデビューを飾った原は、翌ルガーノ戦でスタメン出場を果たして後半29分までプレー。徐々に調子を上げていくかと思われたが、2月1日に行われたスイスカップのバーゼル戦で開始15分に肩を負傷して途中交代し、練習復帰まで数週間を要することとなった。
「ルガーノ戦にスタメンで出させてもらって、戦い方っていう面でちょっと掴んだなって感じもしたんですけど、すぐその次の試合で怪我をしてしまって。どうしても試合に出ていないと慣れない部分もあるし、練習だけじゃっていうので難しさは感じてる。そことのギャップというか、もう来て数か月になりますけど、実際試合してる時間はかなり少ないので。慣れるまでにはもうちょっとかかるかなと思います」
復帰後もなかなか起用されず、出ても短い出場という時期が続いた。そんな原に久しぶりに十分なプレー時間が与えられたのが第27節ヤングボーイズ戦だった。この試合で後半45分間、右サイドバック(SB)として奮闘すると、続くホームのシオン戦でも後半開始から今度は左SBとして出場し、何度も惜しいチャンスに絡んでいた。
第30節のヤングボーイズ戦で、ルガーノ戦以来となるスタメン出場を飾ると、そこから3試合連続でスターティングメンバー入り。スイスリーグで戦う日々は原に何をもたらしたのだろうか。
「結構オープンな展開が多くて、組織立って戦うというよりかはオールコートで1対1みたいな形なることも多いかな。日本のサッカー、Jリーグのサッカーとは全く別物。JリーグにはJリーグの良さがあって、こっちにはこっちの良さがあって。どっちも自分を成長させてくれるリーグだなっていうのは感じてます。スイスリーグは個人戦が多いので、そういう面で成長はあるかもしれないですね」
同世代の海外行きに刺激「それまではJ1かJ2でできればいいほうだなって」
シオン戦では左サイドでMF川辺駿とコンビを組む形になっていた。ボールを預けたいところに顔を出してくれるし、自分の動きも見てくれる。パスに対する距離感やタイミングを共有できる選手が近くにいるのは助けになる。
「同じ日本人ですし、お互いJリーグでプレーをしてますから、距離感をよく気にしながらサッカーできている。近くにいるとすごいやりやすいです。ただどうしてもその2人だけじゃっていうのが難しい場合もある。合わしてもらうんじゃなくて、自分がこっちのサッカーに合わせないといけないのは分かってます」
貪欲な学習意欲がある。原はどんな思いで海外に来たのか。海外への思いを抱いたのはいつ頃なのだろうか。
「具体的には同世代が海外に行き出してからなんですけど、それまではJリーグ、J1かJ2どっちかでサッカーできればもう自分はいいほうだなって思ってたので。U-20W杯を経験させてもらって、周りの選手がどんどんどんどん海外に渡っていくなかで、ちょっとずつ自分も機会があれば行ってみたいし、行けるタイミングがもしあるなら行きたいなって。行かない後悔より行って後悔したほうがいいなと思っていたので。今回、ちょうどそういう話をいただいたので来たという感じですね」
スイスの地で原は毎日いろんな発見をし、自身の成長と向き合い続けている。
[プロフィール]
原輝綺(はら・てるき)/1998年7月30日生まれ、埼玉県出身。AZ’86東京青梅―市立船橋高校―アルビレックス新潟―サガン鳥栖―清水エスパルス―グラスホッパー。2017年に新潟へ加入し、ルーキーイヤーはJ1リーグ戦18試合1ゴール。19年から鳥栖、21年から清水でプレーし、22年12月にグラスホッパーへ期限付き移籍。19年5月に日本代表に初選出され、6月に開催されたコパ・アメリカのチリ戦でA代表デビューを飾った。
(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。