好調・札幌を牽引する「東京五輪世代の6人」 日本代表入りも十分…J1で6戦6発アタッカーら上り調子のタレントたち

(左から)田中駿汰、浅野雄也、金子拓郎、小柏剛【写真:Getty Images】
(左から)田中駿汰、浅野雄也、金子拓郎、小柏剛【写真:Getty Images】

【識者コラム】勢いに乗る札幌の攻守を支える“東京五輪世代”6人に注目

 現在3連勝と好調の北海道コンサドーレ札幌。シーズン序盤戦は勝ち切れず下位に沈みかけていたが、ここ6試合で6ゴールの浅野雄也のブレイクにも引っ張られる形で、上位に浮上してきた。ここから夏場になると札幌ドームの試合は唯一のデイゲームになることも多い。その意味でも、札幌のファンサポーターに限らず、札幌をライブで目に触れる機会が多くなるはずだ。

 かつてサンフレッチェ広島、浦和レッズを率いたミハイロ・ペトロヴィッチ監督が掲げるマンツーマンの守備と連動性の高い攻撃という独特のスタイルだけに、チャンスの直後に大ピンチを迎えたり、ジェットコースター性の高いチームではあるが、その中でリベロの岡村大八がディフェンスリーダーとして存在感を高めるなど、チームの宿命に向き合いながら、徐々にパフォーマンスの安定感も高まっている印象だ。

 チームの中心になっているのが、主に“東京五輪世代”のタレントたち。田中駿汰や菅大輝、金子拓郎のように、本大会メンバー有力候補として期待されながら最終的に選外となった選手もいれば、岡村のようにアンダーカテゴリーの代表と無縁ながら、叩き上げで現在の地位を掴んだ選手もいる。そんな札幌の“東京五輪世代”の中から、森保一監督の率いるA代表入りを狙える6人をピックアップした。

■浅野雄也(MF/今季リーグ成績:14試合8得点)

 今、Jリーグで最もホットなアタッカーだ。東京五輪の候補合宿に招集されたこともあるが、昨年の広島で出番が減少していた。「覚悟を持って来た」と語る浅野にとって「結構攻撃に重点を置くスタイル」という札幌の水が合っていたのだろう。

 2シャドーからの鋭い動き出しと流れに乗った仕掛け、正確な左足のシュートを武器にゴールを積み重ねている。そんな浅野のキャラクターを象徴的に現したのが、アビスパ福岡戦(第9節/2-2)の“幻のゴラッソだ。

 浅野には珍しい右足によるゴールなどで2-1とリードしていた札幌。浅野が放った超ロングシュートがゴールに吸い込まれ、一度は札幌ドームのビジョンも3-1となった。だが、しばらくしてVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)チェックにより、数分前にあった青木亮太のハンドが取られてPKとなり、浅野のゴールも無効に。「や~もう3-1っすよ。3-1やと思ってます(笑)」と言いつつ、「ナイスジャッジっすね」と切り替えた。

 今思い返せば、あの“幻のゴラッソ”はその後の快進撃の予兆だったのかもしれない。シーズン前のキャンプで呼び方について聞くと「お兄ちゃん(浅野拓磨)がジャガーなのでってよく聞かれるんですけど、僕はなんでもいいです」と語っていたが、地元メディアやファンサポーターの間では「シャーク」という愛称が定着しつつある。そんな“シャーク浅野”も当然、代表は目標とするところだ。

「本当に1年でどうにでも状況が変わるので、もちろんワールドカップ(W杯)というところはサッカー選手である以上は目指したい。まずやっぱり、その前にJリーグでしっかり結果を残すことが大事かなと」

 そのコメントどおり、Jリーグで結果を出し続けている浅野が代表入りを果たせば“ジャガー”とともに“シャーク”の名が全国、いや世界に轟くことになるかもしれない。

ナンバーワンのパンチ力を誇る菅は、A代表復帰の可能性十分

■金子拓郎(MF/今季リーグ成績:14試合6得点)

 J屈指のドリブラーであり、鋭い仕掛けから左足のミドルシュートやラストパスを繰り出す。左利きながら右足のクロスも武器としており、今シーズンは従来のシャドーではなく、右のアウトサイドでスタメンに定着。ここまで8得点の“シャーク浅野”に注目は集まるが、金子も6ゴール3アシストを記録しており、起点のパスも含めて、リーグ最多得点(31)を誇る札幌で大半のゴールに絡んでいる。東京五輪世代の期待の1人として、田中とともに代表合宿にも招集されたが、本大会のメンバーには残れなかった。その理由を「結果」と認識しており、決定力にフォーカスしての今がある。札幌にとっては未体験であるアジアの舞台でも見たいタレントだ。

■菅 大輝(FW/今季リーグ成績:14試合3得点)

 レフティーが多い札幌の中でもナンバーワンのパンチ力を誇る左サイドのスペシャリスト。コパ・アメリカやE-1選手権でA代表に選ばれた経験を持つが、東京五輪のメンバーから外れた。現在は代表のことは考えず、クラブをいかに勝利に導けるかにフォーカスして来たという。持ち前の身体能力に状況判断が加わり、右からのサイドチェンジをタイミング良く受けて、そのままシュートに持ち込むシーンも。攻守両面で効果的な選手になって来ており、代表復帰の可能性は十分にある。もともと口数が多いタイプではなく、声よりはプレーで見せていきたいというが、言動もしっかりして来ている。

■岡村大八(DF/今季リーグ成績:14試合1得点)

 立正大からザスパクサツ群馬に加入。そこから当時JFLだったテゲバジャーロ宮崎に期限付き移籍するなど、叩き上げで評価を高めて2021年に札幌入りした。1対1の強さには絶対の自信を持っていたが、ビルドアップやライン統率は札幌で大きく伸びた要素だ。憧れの選手はクラブのレジェンドでもある河合竜二。周りを動かし、助け、ピンチには誰よりも身体を張る。これまで日の丸とは無縁だが、代表入りへの思いを隠すことなく語っており、湘南ベルマーレ戦(第13節/4-2)では町野修斗と熱いバトルを繰り広げた。個人としてもっと評価されていい選手だが、攻撃的なスタイルの中でいかに失点を減らせるか。そしてチームの躍進が何よりのアピールになるだろう。

■中村桐耶(DF/今季リーグ成績:12試合0得点)

 186センチのサイズと並外れたスピードを備える左利きのセンターバック。高校の途中までFWでプレーしていたが、センターバックに転向した。トップ昇格した翌年の夏、JFLの名門Honda FCに育成型期限付き移籍。1年半で精神的にも逞しくなって帰還し、3バックの左で出場時間を増やしている。インターセプトからのオーバーラップに魅力があり、しばしば攻撃に迫力ももたらしている。2000年生まれで残念ながらパリ五輪への出場資格はないが、ポテンシャルを考えれば今後の成長次第で貴重な左利きセンターバックの1人として、A代表候補に浮上してもおかしくない。

■小柏 剛(FW/今季リーグ成績:9試合4得点)

 大宮アルディージャのアカデミー出身で、明治大では3年次にユニバーシアード代表に選ばれるなど、同世代屈指のストライカーとして期待を集めた。在学中に特別指定選手として札幌デビュー。ルーキーイヤーとなった2021年には7得点を挙げるなどブレイク。翌年1月に予定されていたウズベキスタン戦(コロナ禍で中止に)に向けた日本代表に初選出されたが、怪我で辞退となると、2022年は怪我に苦しむシーズンとなった。そうした経緯を踏まえれば、今年はまさに勝負のシーズンだ。167センチと小柄だが、抜群のスピードとボールコントロール、連動のセンスで幅広く起点を作り、シャドーの浅野や駒井善成と絶妙なハーモニーで相手ゴールに迫る。現在4得点だが、浅野に負けず劣らずゴール量産の雰囲気を漂わせている。

(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)

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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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