久保建英、絶好調の要因は? ソシエダ番記者が分析「チームメイトに理解され、上手くなっている」【現地発コラム】
久保がジローナ戦で2得点に絡む活躍、PK奪取&アシストでまたもMVP選出
スペイン1部レアル・ソシエダMF久保建英がジローナ戦で2得点に絡む大活躍を見せ、またしてもMVPに選出された。
来季のUEFAチャンピオンズリーグ(CL)出場圏内の4位をキープしているソシエダは現地時間5月13日、ホームで開催されたラ・リーガ第34節で、3連勝と勢いに乗り、UEFAヨーロッパカンファレンスリーグ(ECL)出場圏の7位につけながら、さらにUEFAヨーロッパリーグ(EL)出場権を狙うジローナと対戦した。
前節レアル・マドリード戦(2-0)ではチームを勝利に導く先制点を挙げ、ここ2戦連続得点と好調を維持している久保は2試合連続で先発入りし、最近の定位置である4-3-3の右ウイングでプレーした。
試合はスペイン北部らしい大粒の雨が降り始めたなかでキックオフ。ホイッスルと同時に久保は右サイドを主戦場として積極的に攻撃に絡んでいく。前半2分に最初のシュートを打つと、その1分後に右サイドでロドリゴ・リケルメを突破しようとした際にファールを受けPKを獲得。これをミケル・オヤルサバルが決め、ソシエダが先制点を手に入れた。早い段階で勢いに乗った久保はその後も次々とゴールを狙い、前半24分には右サイドから左足でファーポストにピンポイントクロスを入れ、ダビド・シルバの2点目をお膳立てした。
後半に入るとさらにギアを上げ、幾度となくドリブル突破を披露しては会場中のサポーターを沸かせ、後半12分には再びシルバの決定機を演出。さらに後半16分にはあと一歩でゴールという低空のショットを放ち、終了間際の後半40分に蹴ったコーナーキック(CK)はカルロス・フェルナンデスのヘディングシュートがクロスバーに当たり、惜しくもゴールとはならなかった。
久保は今季最高とも言えるパフォーマンスを見せたものの、前半終わりにチームが2失点を許してしまい、2-2の引き分けで終わり、勝ち点の追加は1のみとなった。さらにこの日の勝利はクラブ史上の1シーズンの公式戦最多記録となる28勝に並ぶものだっただけに、サポーターにとっても悔しさが残るものとなった。また試合後に勝ち点2を失ったと思うかを聞かれると久保は、「そう感じている。勝ち点3を獲得するつもりで臨んだが叶わなかった」と残念そうに話していた。
スペイン紙絶賛、ソシエダ番記者も最大級の賛辞「唯一の存在だった」
チームが惜しくも勝ち切れなかったなか、MVPに選出された久保に対するスペインメディアの評価はほぼ満点だった。
クラブの地元紙「エル・ディアリオ・バスコ」は、「先制点のPKを誘発し、立て続けにシルバの2点目では素晴らしいアシストを記録するなど完璧な試合内容だった。両サイドから幾度となく仕掛け、右サイドでハビ・エルナンデスを苦しめた。2本のシュートはゴールまであと少しで、ボールコントロールで技術的なクオリティーの高さを発揮した」とし、チーム唯一の最高点(最高5点)をつけた。
もう1つの地元紙「ノティシアス・デ・ギプスコア」は「恒星のように光を放つ。得点を除き、試合に勝つためにできることはほぼすべてやった。ハビ・エルナンデスを思うがまま突破してはコンスタントにチャンスを作り、先制点のPKを誘発し、シルバの2点目をアシストした。また、カルロス・フェルナンデスがヘディングシュートをクロスバーに直撃したCKのキッカーを務めた。誰も久保を止めることはできなかったので、この結果は彼にとって物足りないものになったはずだ」と寸評し、チーム最高の9点(最高10点)。さらにスペイン全国紙「AS」、「マルカ」の久保評価もチーム唯一となる最高点(最高3点)だった。
誰もが絶賛するほどのパフォーマンスを見せた久保について、試合直後にスペインのラジオ局「カデナ・セル」でソシエダの番記者を務めるロベルト・ラマホ氏が語ってくれた。
「タケは今日、本当に凄い試合をやったと思うし、特にボールを持った時はラ・レアルのベストプレーヤーの1人だ。切れ味が非常に鋭く、すべてのアクションが非常に効果的だった。先制点のPKを誘発し、シルバが決めた2点目にクロスで関与した。そして後半に入り、チーム状態はあまり良くなかったと思うが、再びハイパフォーマンスを発揮し、チャンスを作り続けた。タケは今日、試合を決めるためにチームで最も活用された武器となり、ゴールチャンスを生み出すことができた唯一の存在だった。本当に素晴らしかったよ」と興奮した様子で話した。
久保の成長を指摘「ボール扱いがより上手くなっている」
さらにラマホ記者は、シーズンのこのシーズンの重要な最終局面を迎えたなか、久保の動きがより研ぎ澄まされている理由について、次のように見解を述べている。
「タケが好調を維持できているのは、居心地の良い場所を見つけたからだと思う。自分のサッカーがチームメイトに理解され、タケもそのような選手たちと一緒にプレーし、サポートを受けることでボール扱いがより上手くなっている。また監督に自分のプレースタイルを促進され、さらに創造力やチームメイトとの協調性を持つことを求められることで大きく改善されている。それが今、ハイパフォーマンスを見せている要因の1つになっているのだと思う」
10季ぶりのCL出場権獲得を目指すソシエダの戦いもあと4節。FCバルセロナ、アルメリア、アトレティコ・マドリード、セビージャと手強い相手が残るなか、最後まで久保がチームを牽引する活躍を見せ、夢を掴んでくれることを願ってやまない。
高橋智行
たかはし・ともゆき/茨城県出身。大学卒業後、映像関連の仕事を経て2006年にスペインへ渡り、サッカーに関する記事執筆や翻訳、スポーツ紙通信員など、スペインリーグを中心としたメディアの仕事に携わっている。