J2磐田助っ人、4か月出場禁止からついに復帰へ 「相手からしても脅威」…規格外FWに漂う“起爆剤”の予感
【識者コラム】FWファビアン・ゴンザレス、FIFAの出場禁止処分が明け出場可能に
J2リーグはここまで14試合を消化して、FC町田ゼルビアが勝ち点30で首位を走り、大分トリニータが同28で追いかける展開となっている。現在10位(同20)のジュビロ磐田は第15節で5位のザスパクサツ群馬と対戦するが、“ラッソ”ことコロンビア人FWファビアン・ゴンザレスが4か月の公式戦出場禁止から明けて、ついに出場可能となる。
ファビアン・ゴンザレスには磐田と契約締結前、タイのクラブと契約を結んでいたことが発覚。磐田にはFIFAの紛争解決室(DRC)による2度の移籍期間での選手登録の禁止、ファビアン・ゴンザレスにも4か月の公式戦出場禁止という重い制裁が下された。昨シーズンはJ1でも規格外の突破力を見せていたが、本格的なブレイクの期待がかけられていたこともあり、ショッキングなニュースだった。
「ラッソとは普段からしっかりコミュニケーションを取りながら、あと何日だなとか、あと何週間だなとか、そういう話をしながら」
そう語るのは今シーズンから磐田を率いる横内昭展監督だ。処分期間中もファビアン・ゴンザレスはチームの練習に参加しており、コンディションを維持してきた。横内監督によれば、ミーティングで話を聞いたり、紅白戦では次の対戦相手を想定したフォーメーションでも手を抜くことなく取り組んでいたりしたという。
J2に降格した磐田は外から補強ができないばかりか、大学から加入内定していた選手も取り消しに。苦しい状況で期限付き移籍していた4人の選手を戻すなど、何とか戦力を整えて今シーズンに臨んでいた。
そうしたなかで、3月下旬には開幕戦からスタメン起用されていたFW杉本健勇が横浜F・マリノスに期限付き移籍。その後はFW大津祐樹と“高校生Jリーガー”のFW後藤啓介が攻撃を牽引した。その大津が4月23日のツエーゲン金沢戦で右大腿直筋腱断裂の重傷を負って、全治5か月という診断を受けた。さらにU-20ワールドカップの日本代表メンバー有力候補としても期待された後藤が、東京ヴェルディ戦で足首を負傷。当面の出場は困難だと見られる。
上位進出への戦力として横内監督も期待
本来であれば、大津や後藤も健在なところに“ラッソ”が加わるのが理想だが、久々の公式戦でいきなりのフル稼働が求められる。横内監督も「ゴール前のプレーが迫力ありますし、パワーを持って入って行くので。相手からしても脅威だと思います」と期待をかける。ただ、ここのところ9連戦、中5日を挟んで3連戦と試合を消化するなかで、なかなかフルピッチの練習試合などが組めなかった事情もある。
「公式戦から少し時間は経っているので。慣れるまでは少し時間がかかるかなとは思っています」
横内監督はそう前置きしながらも「すぐにフィットしてくれることを期待しています」と語った。磐田は横内監督が攻守の切り替えや球際でのこだわりといったベーシックな部分にフォーカスしながら、徐々に戦術的な組み上げも積み重ねて、戦えるチームを作ってきた。そこに“ラッソ”というビッグピースが加わることで、どんなパワーが生み出されるのか。ここから上位に躍進していくための起爆剤になる予感はある。
今回の件に関して磐田はもちろん、当事者であるファビアン・ゴンザレスや関係者にも大きな責任はあるし、それは忘れるべきではない。それでもピッチで結果を出すことが、多大な心配をかけてきたファンサポーターに恩返になるはずだし、磐田に“ラッソ”が来て良かったと周囲に思わせるようなパフォーマンスに期待している。
(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)
河治良幸
かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。