GWで輝きを放ったJリーガー7人 徳島帰還の“ジーニアス”躍動、横浜FM助っ人アタッカーはキング級の活躍

(左から)乾 貴士、鈴木優磨、大迫勇也、柿谷曜一朗【写真:Getty Images & 徳原隆元】
(左から)乾 貴士、鈴木優磨、大迫勇也、柿谷曜一朗【写真:Getty Images & 徳原隆元】

【識者コラム】ゴールデンウィーク中に活躍したJ1~J3リーグの選手を厳選

 Jリーグはゴールデンウィーク(GW)期間中(4月29日~5月7日)、J1~J3で白熱のリーグ戦が行われた。この期間に活躍が目立った選手たちを筆者の独断で7人選出。なお、ACL(AFCアジアチャンピオンズリーグ)ファイナルでアジア王者に輝いた浦和レッズの選手たちには敬意を評して「殿堂入り」ということで、今回は対象外としている。

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■上福元直人(GK/川崎フロンターレ)
今季リーグ成績(J1):4試合2失点

 この期間、3連勝で勝ち点を一気に伸ばしてきた川崎を最後尾から支えている。今季初めてスタメン起用されたのがGW前の浦和戦。1-1の引き分けだったが、そこから4試合起用され続けて4試合で2失点に抑えている。しばしば“神福元”とも呼ばれるが、シュートを止めるだけでなく、キャッチで終えてマイボールにする姿勢も素晴らしい。最終ラインの背後を幅広くカバーしながら、組み立てにおいても積極的に顔を出して、安定した攻撃にも寄与している。チョン・ソンリョンという偉大な守護神はいるが、33歳の上福元もいろいろなクラブで経験を積んできており、このままスタメンに定着していく可能性も大いにある。

■鈴木優磨(FW/鹿島アントラーズ)
今季リーグ成績(J1):12試合6得点

 川崎と同じく、このGW期間内で3連勝を飾った鹿島の前線に君臨して2得点。1-0で勝利したセレッソ大阪戦(第12節)のゴールはなかったが、ガンバ大阪戦(第10節/4-0)では名古新太郎のクロスに豪快なヘッドで、北海道コンサドーレ札幌戦(第11節/1-0)では相手側のミスを逃さずにゴールネットを揺らした。幅広く顔を出していたプレースタイルを一度改め、できるだけフィニッシュに専念させるという岩政大樹監督のコメントがあったなか、この2つの得点シーンも起点のところで鈴木が絡んでいるのは興味深い。基本的にはゴール前で勝負するストライカーだが、やはり一度自分がチャンスの起点として関わるほうが、フィニッシュの流れを読めるのかもしれない。

■大迫勇也(FW/ヴィッセル神戸)
今季リーグ成績(J1):12試合9得点

 現在J1の首位に立つ神戸で獅子奮迅の働きを見せているが、GW期間中も3得点をマーク。9ゴールで得点ランキングのトップを走っている。名古屋グランパス戦(第11節/2-2)はヘディング、横浜FC戦(第12節/3-0)ではPKに加えて、シュートのリバウンドを押し込んだ。無得点だった湘南ベルマーレ戦(第10節/2-0)でも、スローインを受けて相手ディフェンスに囲まれながらこぼれ球が山口蛍に渡ってゴールになるなど、ほとんどの攻撃は大迫を経由している。今回はGWの活躍にフォーカスしたが、神戸がシーズン終盤まで優勝争いを演じていくには、最も欠かせない存在であることは間違いないだろう。

■ヤン・マテウス(FW/横浜F・マリノス)
今季リーグ成績(J1):12試合4得点

 このGWで大きく株を上げたのが、F・マリノスの外国人アタッカーだ。途中出場の名古屋グランパス戦(第10節/1-1)で同点ゴールの起点になると、スタメン起用されたサガン鳥栖戦(第11節/3-1)で逆転に導く2得点など3得点のすべてに絡んだ。さらに4-1と勝利した京都サンガF.C.戦でもマルコス・ジュニオールのアシストから試合を決定付ける3点目をマークした。オウンゴールになったチームの2点目もヤン・マテウスのクロスが相手のクリアミスを誘ったもの。つまり、この3試合でF・マリノスが挙げた8得点の大半に絡んでおり、まさしくGWのキング。今後のさらなる活躍も期待される。

奈良クラブのCBは最もホットなDFの1人

■乾 貴士(MF/清水エスパルス)
今季リーグ成績(J2):9試合3得点

 GWの締めくくりとなったいわきFC戦(第14節)。衝撃の9ゴールを記録した清水は中山克弘、チアゴ・サンタナと2人がハットトリックを達成したが、元日本代表アタッカーの乾は1得点3アシストなど5得点に絡んだ。乾といえば左サイドアタッカーとしてのイメージが強いが、シーズン途中からチームを率いる秋葉忠宏監督は経験豊富なMFを4-2-3-1のトップ下に起用している。2-0で勝利した4月29日の栃木SC戦(2-0)でも鮮やかなシュートを決めており、個性的なアタッカー陣の中心として躍動を見せている。もともと野洲高校の“10番”に君臨して一世を風靡したタレントで、このポジションに帰結していくのはある種、運命かもしれない。このポジションではJ1アルビレックス新潟の伊藤涼太郎が注目を集めるが、J2では乾が輝きを放っている。

■柿谷曜一朗(FW/徳島ヴォルティス)
今季リーグ成績(J2):13試合4得点

 昇格候補の一角という大方の予想に反して、最下位に沈んでいた徳島だが、ここ3試合で勝ち点7を獲得して20位に浮上した。その立役者は徳島に帰ってきた“ジーニアス”柿谷だ。ジュビロ磐田戦(第12節)では一瞬の隙を突いたカウンターと前線のプレスで相手のミスを誘ったところから、持ち前のシュート技術を発揮して2ゴール。少ないチャンスをモノにする形で3-2の勝利に導いた。1-1で引き分けた清水戦(第13節)もフリーキックで得点の起点となり、大宮アルディージャ戦(第14節/3-1)では先制ゴールに加えて、2トップを組む22歳FW森海渡のゴールを見事なワンツーからアシストした。その森もGWだけで3得点を記録しており、11歳差のコンビが徳島の躍進を牽引して行きそうだ。

■伊勢 渉(DF/奈良クラブ)
今季リーグ成績(J3):9試合1得点

 JFLからの“参入組”ながら、J3首位を走る奈良をセンターバック(CB)のポジションから力強く支える。5月7日に天皇杯の代表決定戦(飛鳥FCに1-0で勝利)があったため、GWのリーグ戦は2試合だったが、ガイナーレ鳥取に2-0、テゲバジャーロ宮崎に3-0とクリーンシートでの勝利を飾っており、鈴木大誠とともに奈良特有の多角的なビルドアップを実行しながら相手の攻撃を見事に遮断している。宮崎戦では効果的なパスでオウンゴールとなった先制点につなぎ、さらにフリーキックの流れから得意のヘッドで嬉しい今季初ゴールを記録した。守備ではボールを跳ね返すだけではない。チームの性質上、カウンターからピンチを招くことも多いが、粘り強くアタッカーに進路を止める役割も果たしている。現在のJ3で最もホットなDFの1人と言えるだろう。

(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)

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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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