「クボはあの日以来、愛されている」 ソシエダ久保建英、なぜ短期間で人気者に?…現地サポーターが語ったリアルな声
【現地発コラム】久保建英の印象とは? 現地ファンの声をお届け
スペインの名門FCバルセロナの下部組織で育った久保建英は、現地ファンからどのような印象を持たれているのか。「FOOTBALL ZONE」ではスペインで4シーズン目を戦う21歳の若きアタッカーの人間性に焦点を当てた特集を展開。レアル・ソシエダサポーターに直撃取材し、実際に語られた声をお届けする。
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「クーボ!クーボ!クーボ!クーボ!」
5月2日にレアル・ソシエダがホームにレアル・マドリードを迎えたラ・リーガ第33節、後半29分にピッチを去る際にスタンドから巻き起こった大歓声は、古巣相手に先制点を決めた久保建英がサン・セバスティアンの地で認められていることをひしひしと感じられる素晴らしい瞬間となった。
久保は昨年7月の加入から1年も経たずして、ソシエダサポーターの間ですでにアイドルとなっている。ゴールを決めたすべての試合でチームが勝利していることから、スペインメディアに “ラ・レアルのタリスマン(お守り)”と称されている。
久保はシーズン開幕から怪我人が続出するなか、FWのレギュラーとして出場を続け、ここまでリーガで30試合8得点3アシストを記録。この得点数はチーム内でFWアレクサンドル・セルロート(10得点)に次ぐ2位、アシスト数はMFミケル・メリーノ(9回)、MFダビド・シルバ(5回)に次ぎ、MFブライス・メンデスと並ぶ3位という素晴らしいもの。開幕当初はFW起用を疑問視する意見もあったが、十分得点に絡んでいる今、それを口にするものは誰もいない。
このように飛ぶ鳥を落とす勢いの活躍を見せており、サポーターがそのパフォーマンスを高く評価しているのは間違いない。一方、普段あまり知り得ないソシエダ初の日本人プレーヤーの人間性については、どのように感じているのだろうか?
スペインのクラブは現在、基本的に練習を非公開で行っているため、サポーターが選手と触れ合う機会はたまにある公開練習やイベント、スタジアムや練習場での出待ち以外にほとんどない。そのため選手の人となりは、記者会見やインタビュー、SNSなどのメディアを通じて知ることが多い。
「ピッチ外でとても面白いから好きになった」
そんな状況のなか、レアル戦当日、レアレ・アレーナ周辺で久保の人間性ついてサポーターに聞いてみると、一様にポジティブな印象を持っているようだった。“TAKE”のユニフォームを着たアシエルさんもその1人。久保のユニフォームを買った理由について「ピッチでのパフォーマンスはもちろんだけど……」と前置きしつつ、「ピッチ外でとても面白いんだよね。サッカー選手にその要素を持ち合わせている人はあまりないから好きになった」と、久保がインタビューなどで話す内容や、そこから感じ取った人柄を気に入り、ユニフォーム購入に至ったことを説明してくれた。
一方、ソシエダの監督と同名のイマノルさんは「タケクボはとてもいい奴でフレンドリーな感じがするよ」と話し、「ピッチではいつも模範的な姿勢で臨んでいて、全力を尽くしているのが好印象だ」と日本人らしい真面目な点を褒め称えた。
続いて、「クボには愛嬌のある面白い人という印象を持っている。試合後のインタビューでいつも、少し笑いを誘うようなフレーズを入れているからね。受け答えの様子がとても自然体だし、彼のキャラクターにカリスマ性を感じているよ」と答えてくれたのはアイトールさん。さらにピッチ内での様子について「イマノルに指導をしっかりと受けている若者だというのが感じ取れる。まだ改善すべきものはあるけれど、数年後にはクラック(名手)になっていると思う」と大きな期待を寄せていた。
シャビさんも久保に日本人的な生真面目さを感じており、「非常に謙虚で勤勉な人間で、何事にも日々懸命に取り組み、それによって短期間でレアル・ソシエダのトップレベルに達することができたんだ。僕たちはここで彼と一緒にいられることに本当に幸せを感じているよ」と印象を述べた。
続けて久保に関する鮮明に覚えているエピソードを語ってくれた。「バスクダービーでゴールを決めたあと、ユニフォームを脱いでそのまま真っ先にサポーターのところに向かって行った姿はとても印象的だった。タケクボはあの日以来、ドノスティア(サン・セバスティアン)で愛されている」とし、今年1月にホームで行われた最大のライバルであるアスレティックとの一戦で見せた活躍とその後の振る舞いが、サポーターに受け入れる決定的な出来事になったことを強調していた。
またインタビューに答えてくれたサポーターの多くが口にしたのは、日本でもよく知られている久保のスペイン語力の高さについてだ。前出とは別のアイトールさんは、「僕たちはみんなクボが少年時代にバルサのカンテラにいたこと、そしてマジョルカなどでプレーしていて、スペインに長く住んでいることを知っているし、クボの話すスペイン語はまるでネイティブみたいだよ」と母国語以外の言語を流暢に話す様子を褒めた。続けて、「僕たちサポーターはみんな、クボには本当に感謝しているし、大きな愛情を持っている」と、来季のUEFAチャンピオンズリーグ出場を目指すチームにおいて、その原動力の1人になっている久保に心からの感謝を述べていた。
一方、ハビエルさんは「クボのスペイン語は本当に上手いけど、彼はバスク語を話せないので、もし話せるようになったら、もっともっとサポーターの心を鷲掴みにできるだろうね(笑)」と冗談交じりに、久保に新たな言語習得を勧めていた。
久保自らソシエダ残留宣言「来季も100%、チュリウルディンだ」
ピッチで見せているパフォーマンスはもちろんだが、サポーターの愛情のある言葉を耳にすると、ソシエダは久保にとって、スペイン4季目でようやく見つけた最適な場所だと言うことができそうだ。
シーズンが終わりに近づく今、来季の古巣復帰の可能性が注目されているが、久保はレアル戦後の記者会見でそれを一蹴した。「僕は来季も100%、チュリウルディン(ソシエダの愛称)だ」とサン・セバスティアンでのプレー続行を力強く宣言していた。そしてこの発言はソシエダサポーターを安心させるものになったはずだ。
久保の契約は2027年6月30日までと、まだ4年以上残っているが、来季さらなる飛躍を遂げて、サポーターにより愛される存在になれることを期待したい。
高橋智行
たかはし・ともゆき/茨城県出身。大学卒業後、映像関連の仕事を経て2006年にスペインへ渡り、サッカーに関する記事執筆や翻訳、スポーツ紙通信員など、スペインリーグを中心としたメディアの仕事に携わっている。