「レッズは一番飢えている」 興梠慎三が抱くACL&J1制覇の野望…感謝の言葉を忘れないエースの存在

ACL制覇を喜ぶ興梠慎三【写真:徳原隆元】
ACL制覇を喜ぶ興梠慎三【写真:徳原隆元】

自身関与のゴールでACL優勝「半分僕のゴールじゃないですかね」

 J1浦和レッズのFW興梠慎三は、5月6日のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)決勝第2戦、アル・ヒラル(サウジアラビア)戦にスタメン出場すると、少ないチャンスの中でも相手ゴールに迫った。記録はオウンゴールだが「半分僕のゴールじゃないですかね」という後半の1点は、チームに大きな勝利をもたらした。

【注目】白熱するJリーグ、一部の試合を無料ライブ配信! 簡単登録ですぐ視聴できる「DAZN Freemium」はここから

 浦和は2017年、19年に続くアル・ヒラルと3回目の決勝戦だった。17年は浦和が勝利し、19年はアル・ヒラルが勝利。17年の決勝はホーム、アウェー共にFWラファエル・シルバがゴールして優勝に導いた。逆に19年の戦いは浦和との間に大きな力の差があったことを感じさせるもので、2試合ともゴールできなかった。つまり、日本人最多ACLゴール記録を保持している興梠も、実は決勝でのゴールだけがなかった。

 そのエースは4月29日の決勝第1戦アウェーゲームで嗅覚を見せた。MF大久保智明からのラストパスを受けようとしたが、相手DFに当たった。しかし、そのボールはゴール方向へ転がっていく。そして、ゴールポストに当たった跳ね返りを興梠が押し込んだ。ゴールに近づきすぎれば、ボールが正面に跳ね返らなかった時に対応できない。かといって、相手が先にクリアしてしまえば千載一遇のチャンスを逸する。相手DFよりわずかにゴールに近い位置をキープしながら、跳ね返りに全力で詰めて蹴り込んだ。そして、満面の笑みで貴重なアウェーゴールを喜んだ。浦和は敵地で1-1の引き分けを持ち帰った。

 第2戦のホームゲームも浦和は苦戦した。最低でも1得点が必要な相手だけに、序盤から一気に押し込んできた。しかし前半30分、DF酒井宏樹の突破からGKと最終ラインの間に高速クロス。逆サイドから興梠が右足アウトサイドで飛び込んでボレーを放つ。ボールはクロスバーに当たって枠外に外れたが、アル・ヒラルの攻勢に冷や水を浴びせかけた。

 そして後半4分、ピッチ中央でのフリーキックをMF岩尾憲がペナルティーエリア内左サイドに蹴り込むと、DFマリウス・ホイブラーテンがゴール前にヘディング。興梠が飛び込んだ動きが相手GKを惑わすとボールも風にあおられてゴール方向に変化し、カバーに入ったペルー代表MFアンドレ・カリージョがクリアしきれずオウンゴールになった。これが決勝点になり浦和は1-0で勝利し、2戦合計2-1で決勝を制した。

興梠慎三がACLトロフィーを掲げた瞬間【写真:徳原隆元】
興梠慎三がACLトロフィーを掲げた瞬間【写真:徳原隆元】

今季浦和に復帰「不細工な試合でも、今回に関しては勝ちたかったのが正直な気持ち」

「(ボールに)届かなかったです。たぶん僕が触ってたら入らなかったと思います。あれは半分僕のゴールじゃないですかね。オウンゴールじゃないと思いますよ」

 ちょっとした茶目っ気も見せつつ、確かに興梠の動きがなければGKはボールをセーブできただろう。あるいは、本当に興梠が触ればボールはGKの正面に飛んだかもしれない。それら全ては、浦和に優勝をもたらすゴールとして大団円になった。

 昨季は北海道コンサドーレ札幌へと期限付き移籍し、今季に復帰。そのため、このACLはグループステージと決勝トーナメントに出場していない。だからこそ、ここまでチームを導いたすでに退団した選手たちへの感謝も口にしてきた。36歳のベテランは「不細工な試合でも、今回に関しては勝ちたかったのが正直な気持ち」と、ラストチャンスと覚悟したアジア制覇に賭けた。

 13年に浦和へ移籍加入してから10年が経つ。「Jリーグタイトル。そこにレッズは一番飢えているんじゃないですか」と、エースは前人未到のACLとJ1の同一シーズン制覇を見据えた。

page1 page2 page3

今、あなたにオススメ

トレンド

ランキング