浦和MF伊藤敦樹、背番号「3」の系譜…先輩から受け継いだ魂胸に掴んだ優勝 「連絡をもらった」

アカデミー育ちの伊藤敦樹【写真:徳原隆元】
アカデミー育ちの伊藤敦樹【写真:徳原隆元】

アカデミーで育ち流通経済大を経て21年に浦和へ入団

 浦和レッズはアル・ヒラル(サウジアラビア)と対戦した5月6日のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)決勝第2戦で1-0の勝利。初戦との合計2-1でアジア王者の座を手にした。アカデミー育ちで主力に成長したMF伊藤敦樹は「本当に夢が叶った」と満面の笑み。そして、「3番」の先輩からも力強い激励があったと話した。

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 伊藤は浦和のホームタウンでもある旧浦和市(現さいたま市の一部)出身で、幼少期から浦和を応援しながらプロになることを目指すサッカー少年だった。中学から浦和の下部組織に入ると6年プレーし、直接のトップ昇格は果たせなかったが、流通経済大学で力をつけて2021年に浦和へ。185センチの長身と強靭なフィジカルを武器に、センターバックやトップ下でのプレー経験もあることから万能型のセンターハーフとして初年度から出場を重ねた。

 そして、この決勝でもダブルボランチの一角としてスタメン出場。チーム戦術の中で右サイドのカバーもしつつ、対面するペルー代表MFアンドレ・カリージョに苦しめられた。「カリージョ選手の所がフリーになってミドルシュートだったり、あの選手からのクロスだったり、スルーパスが増えてしまった。ただ、あそこにもう少し行きたかったですけど、行って自分がいなくなったスペースを空ける方が怖かったので、そこはうまくバランスを取りながらやった感じ」と、ギリギリの対応だった。

 後半にはカリージョへのプレッシャーをかけられる場面も増え、約30メートルの強烈ミドルは際どく枠を外れたが、アル・ヒラルに冷や汗をかかせるに十分だった。ラスト5分を切って、より守備的な長所を持つMF柴戸海と交代で最後を託した。ピッチ脇で「危ないシーンもありましたけど、周くん(GK西川周作)を中心に守ってくれたので本当に祈りながら」戦況を見守った。そして、タイムアップの笛とともに「本当に最高しかないですね。最高の瞬間でした」と喜びを爆発させてピッチに駆けこんだ。

 自身も浦和を応援しにスタジアムに通っていたことから、「小さい頃から浦和レッズのユニフォームを着て、このピッチでACLを取るっていうのが本当に夢見た舞台なので、それが今日叶った。まだ通過点ですけど、まず1つの夢、幼い頃からの夢が叶いました。アップから最高の雰囲気を作ってもらって、素晴らしい後押しをしてもらった。入場した時も素晴らしい光景でした。このサポーターと一緒に優勝をして、喜びを分かち合いたいと思っていた」と、感慨もひとしおだった。

 背番号「3」は、21年限りで退団したDF宇賀神友弥(現FC岐阜)から受け継いだ。浦和の下部組織で中高の6年間を過ごし、流通経済大学を経ての浦和入りは全く同じキャリアの先輩。「他の新しく入った選手に、自分が11年つけた3番を簡単に付けてほしくない。これからのレッズを背負ってほしい」と託された。17年の優勝と19年の悔しい準優勝を知るその先輩からは、決勝を前に力強いメッセージが届いていたという。

「試合前にウガさん(宇賀神)から、このピッチに立てるのは本当に世界中で浦和レッズのユニフォームを着ている数十人しかいないんだから、その幸せと責任を感じながら楽しんでプレーをしてくれと連絡をもらって、その思いを胸に試合ができました」

 このACL出場につながった21年の天皇杯決勝、浦和でのラストゲームになった宇賀神はラスト15分ほどでピッチに立ち、フル出場した伊藤ともに優勝を勝ち取っていた。そこからつながったアジア制覇は、受け継いだ思いが結実した瞬間になった。

(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)



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