FW林大地、ベルギーで衝撃「Jリーグにはいない」 日本代表入りへ滲む闘魂「結果を出さないと絶対呼ばれない」【現地発コラム】
今季ベルギー1部シント=トロイデンで31試合7ゴールの結果を残した林
ベルギー1部シント=トロイデンでプレーするFW林大地にとって今季はどんな年になったのだろう。リーグ戦31試合に出場し7ゴールという数字をどのように受け止めているのだろうか。
レギュラーシーズン最終戦ロイアル・アントワープ戦(0-1)後のミックスゾーンで振り返ってくれた。
「(ゴールを)二桁取りたいって言ってたんで全然駄目ですね。9試合ぐらい残して7点だったんですけど、そこから最後点を取ってない。試合数があった分、いやあって感じですね」
アントワープ戦でスタメン出場した林は前線で何度もパスを呼び込む動きを見せるのだが、なかなかいい形でボールは入ってこない。ボールを受けると身体を上手く相手との間に入れて起点を作り、そこからもらい直してスピードに乗った飛び出しやドリブルでゴールへ迫るプレーを見せた。
「チームが守備重視な分、(ボールが来るのが)少ない。そこで簡単に失ったらどんどんチーム的にしんどくなると思います。そこはFWがしっかり収めて、つなげて。キープをしっかりしろって監督に言われるので意識はしてます」
前半には左サイドのワイドな位置からセンターへとダイアゴナルなフリーランでタイミング良く飛び出していくシーンがあった。最後のところで右ウイングバックからのロビングパスにあと少し届かなかったが、観客が沸き、相手守備を上手く攻略しかけるシーンとなった。
「そうですね、スペースでもらいたいし、やっぱり近くでFWを生かす選手とのコミュニケーションのなかから裏へ抜け出したり、コンビネーションでっていうところは、日本にいる時から意識していたんですけど、今のチームのスタイルだと厳しいかなっていう感じはしてます。でも、それをもう言い訳にしたくないなという自分がいます。1試合に1回あるかないかのチャンスでも、そこでどれだけ結果を残せるかですね」
ベルギーリーグの上位クラブはさすがに守備組織も安定しており、個々の技量やフィジカル能力も高い。この試合で言えば、アントワープ守備の主軸ベルギー代表CBトビー・アルデルヴァイレルトはさすがの存在感を見せていた。
「あのサイズでパワーのあるセンターバック(CB)は、Jリーグにはいないなって感じます。上位クラブのCBはシンプルに能力が高いし、みんなでかくて、身体も強くて足も速いですよね」
飛躍の鍵はフィジカル強化と動きの質追求「もっと突き詰めていかないといけない」
ハイレベルな守備陣を攻略してゴール数とアシスト数を増やすため、どんな取り組みが必要と感じているのだろうか。
「もっと筋量を増やしたり、自分の身体を大きくするっていうのも絶対必要。それプラス、動きの質をもっと突き詰めていかないといけないかなと思います」
チーム事情もあり、自身の思いどおりのプレーがいつでもできるわけではないかもしれない。だがそれはどんなチームでプレーしていても、多かれ少なかれ直面する問題ではある。優れたFWというのは、どんな難しい試合でも、どこかでゴールへの可能性を見つけ出し、作り出し、そしてこじ開けることができる選手だ。
アントワープ戦の後半、林がボールに絡む頻度は確実に増え、惜しいシーンもあった。後半15分にはペナルティーエリア内でファールを誘い、値千金のPK獲得かと思われたが、直前の飛び出しがわずかにオフサイド判定。やり続けるしかない。
日本代表への思いは強い。そのためにやるべきことも分かっている。
「入りたいです。同世代がすごい活躍してるのを見ると、やっぱり自分も、と思う。そこは意識してやり続けて、次の3年半後のワールドカップを目指したいです。前の選手は結果を出さないと絶対呼ばれない。結果が大事ですべてだと思います」
FWとしてチームの役割を理解して取り組みながらも、ゴールに貪欲にこだわっていく。そのためのすべを身に付け、どんな試合でも、どんな相手でも違いを生み出せるプレーを求めていく。覚醒の時を信じて。
(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。