岡崎慎司の現在地、37歳FWの飛躍宣言「まだまだやれる」 ベルギーで今季30試合出場に手応えと反省【現地発コラム】

シント=トロイデンで活躍する岡崎慎司【写真:(C) STVV】
シント=トロイデンで活躍する岡崎慎司【写真:(C) STVV】

昨夏ベルギー1部シント=トロイデンに加入した岡崎、以降は全試合スタメン出場で貢献

 元日本代表FW岡崎慎司は今季ベルギーリーグ1部の開幕後にシント=トロイデンへ移籍した。加入直後の2022年8月20日第5節のオーステンデ戦でいきなりスタメン出場すると、34節アントワープ戦まで全30試合にスタメン出場。チーム事情で、これまで本職のFWからインサイドハーフへとポジションを変更しながら、チームを助けるプレークオリティーの高さで監督の信頼を見事に勝ち取った。

「全部試合に出るというのは、個人的に持っていた目標でもあった」と最終節アントワープ戦後に振り返った岡崎は、この試合でも右インサイドハーフで出場すると、味方のビルドアップからタイミング良くハーフスペースでボールを受けて、攻撃の起点を作り出していく。時折見せる鋭い裏への抜け出しや迫力あるチェイシングは健在だった。

「ウチは今季右で攻めることが多かったですね。僕と右ウイングバックとで三角形を作って、起点を作る。基本的に橋岡(大樹)も右ウイングバックでやっているので、僕がためを作ってスルーパス出して、橋岡からクロス。そこから点が決まるみたいなのが多かったかなと思います」(岡崎)

 攻撃面以上に、守備面での秩序や味方へのサポートが多く要求されていたのは事実。シント=トロイデンのベルント・ホラースバッハ監督は、かつてフェリックス・マガトがボルフスブルクで監督をやっていた時のアシスタントコーチだ。ハードワークを基に、ピッチ上で常に戦い、攻守に汗をかける選手を好む。

「バランスが求められるポジションで、自分の経験値が重要視されていたと感じています。いつでも戦えるとか、必要なところにポジションを取るとか、動き回ってボールをもらうとか、そういう基準に加えて、経験を生かしたプレーができるから起用されたと思っています」(岡崎)

シーズン終盤に身体への影響「人工芝というのもあって、結構足にはきてましたね」

 岡崎はバイタルエリアまでしっかりと戻り、中盤でスペースを埋め、パスコースを消す動きを繰り返す。攻撃面での起点作りに加え、守備でも足を止めずに動き続けられるのだから、監督にとっては貴重な戦力だったことだろう。

 37歳という年齢を感じさせない豊富な動きと経験に基づくクレバーなプレーで重要な役割を果たした岡崎。ただ、シーズン終盤は少なからず足に影響が出ていたと明かしている。実際にアントワープ戦では中盤でイージーなパスミスをしたり、ターンして前へ運ぼうとしながら相手に引っかかってボールを奪われるシーンもあった。この試合では後半11分に途中交代となった。

「人工芝というのもあって、結構足にはきてましたね。怪我をしないというのは自分の中で最重要なこととしてあったんですが、人工芝のピッチって身体がきつい時に余計な力が入っちゃうんで、そうならないように気をつけながら。

 これだけ試合に出て、今日で言えばやっぱりミスも多かったし、身体がやっぱり動かないっていうところがあった。それでも監督に信頼して使ってもらえたというのはポジティブなこと。もちろん反省点もありますし、その反省点を来季に生かせるっていうことがシーズンを通して出れて良かったことだったなと思います」

日本人選手らとともにベルギーでキャリアを歩む【写真:(C) STVV】
日本人選手らとともにベルギーでキャリアを歩む【写真:(C) STVV】

来季へ「やりようがもっとある」 オフは古巣レスターや他クラブの試合を観戦予定

 手応えと反省。それがあるから次へと進んでいける。そして来季はさらなる成長を目指す。

「まずはコンディション。やりようがもっとあると思うんです。膝や足首にきたり、いろんなところにシーズン途中から疲れがきて、そうするとどうしても100%でやりたいところを、抑えながらになってしまう。だから来季はそうならないように、トレーニングを積んでいきたいと思っています。自分の感覚で上手く向き合えて、次への材料がかなりあります。相当ハードな練習をやって、走りの練習もたくさんありながら、休みなくこのチームでやることができた。これをシーズン通してやれたっていうことは、まだまだやれるなっていうのを実感しています」

 ミックスゾーンでそう語る岡崎の目は、今も力に満ちあふれている。最後に最終節が終わったあとということで、「オフシーズンにどんなことをしたいのか」と聞いてみた。

「ほかの国はまだサッカーをやっているので、日本にすぐ帰るんじゃなくて、レスターであったり、いろんな試合を見に行ったりと、ヨーロッパクラブを回って勉強したり、関わりだったりというので予定を立てているんです」

 岡崎慎司は止まらない。いつでも前を見て、走り続けているのだ。

(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)

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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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