レアル撃破弾の久保建英にスペイン激賞「努力する姿を見せた」 番記者も大絶賛「率直に言って素晴らしかった」【現地発コラム】
メンバーを大幅に入れ替えてきたレアル、ソシエダは久保が2試合ぶりに先発出場
レアル・ソシエダMF久保建英が昨季まで所属していた古巣レアル・マドリード相手にスペイン4季目にして初得点を記録した。
来季のUEFAチャンピオンズリーグ(CL)出場権獲得まであと一歩に迫る4位レアル・ソシエダは、現地時間5月2日にホームで開催されたラ・リーガ第33節で2位レアルと対戦し、久保は2試合ぶりに先発出場した。
久保にとってレアルとの対戦はキャリア通算8回目。毎回恒例となっているが、今回も現地メディアに脚光を浴び、スペイン紙「AS」は試合当日の一面で久保の写真を大きく掲載して見出しにするほどだった。
今回対戦したレアルは本来の姿とは程遠い状態だった。その理由はFCバルセロナに逆転優勝がほぼ不可能な勝ち点差をつけられていることで、タイトル獲得に向けて重要な6日の国王杯決勝オサスナ戦、9日のCL準決勝第1戦マンチェスター・シティー戦に照準を合わせていたためだ。それは、ここまで戦力外だったセンターフォワードのマリアーノ・ディアスが、今季初めて公式戦で先発起用されたことでも明らかだった。
カルロ・アンチェロッティ監督は、フィジカル面に少しでも問題のある選手を起用せず、戦力を大幅に落としてこの試合に臨んでいた。MFルカ・モドリッチ、DFダビド・アラバ、DFフェルランド・メンディが怪我、FWカリム・ベンゼマが温存、FWヴィニシウス・ジュニオールとMFエドゥアルド・カマヴィンガが出場停止で招集外、そして打撲傷のMFフェデリコ・バルベルデはベンチ入りするも出番がなかった。
そのような状況のなか、久保は最近の定位置となっている4-3-3の右ウイングでプレー。前半、チームが次々とチャンスを作り、久保は同15分に右サイドからコーナーキック(CK)を蹴り、MFマルティン・スビメンディがゴール前で合わせるがクロスバー直撃し、惜しくもアシストはならなかった。
古巣レアル相手にスペイン4季目で初ゴールの久保、現地メディアが軒並み高評価
しかし後半開始直後、FWアレクサンデル・セルロートの厳しいプレスを受けた相手DFエデル・ミリトンが足を滑らせながら出したパスがGKティボー・クルトワの前を横切った。序盤から献身的にプレスをかけ続けていた久保はその瞬間を逃さず、ゴールに蹴り込んで待望の先制点をチームにもたらした。
その後、相手DFダニ・カルバハルが2枚目のイエローカードを提示されて退場になり、レアルが反撃の駒不足を露呈したことで試合はほぼ終了。久保は後半29分にスタンドから大きな拍手とクボコールを受けながらピッチをあとにした。ソシエダはさらに終盤、FWアンデル・バレネチェアが追加点を奪い、2-0で勝利してホーム4連勝を成し遂げ、CL出場に向けて力強く前進した。
この日のレアルは主力を多数欠き、優勝の可能性のある2大会を見据えた陣容で、いつもとかなり違った様子だった。とはいえこの勝利は間違いなく、久保やMFダビド・シルバなどが躍動したソシエダの功績によるものだ。
2戦連続ゴールをマークし、古巣相手に初ゴールを挙げた久保に対し、スペインメディアは再び称賛の言葉を並べている。
クラブの地元紙「エル・ディアリオ・バスコ」は、「21歳にして今季8点目と素晴らしい数字を残している。立ち上がりはナチョ(フェルナンデス)や(アントニオ)リュディガーのマークに苦しめられ、ショートパスでシルバと連係して打開しようとした。その後、中にドリブルを仕掛けてレアル・マドリードの混乱を招いた」と評価し4点(最高5点)をつけた。
もう1つの地元紙「ノティシアス・デ・ギプスコア」は、「久保にとって最高のパフォーマンスではなかったが、常にすべてのことに気を配り、非常に高い競争心を持って先制点を記録し、スビメンディがクロスバーに当てたCKを蹴った。努力する姿を見せ続け、シルバとともに素晴らしいプレーを披露した」と評し7点(最高10点)。スペイン全国紙の「AS」、「マルカ」の評価はともに2点(最高3点)だった。
ソシエダの番記者は久保のハードワークぶりを称賛「相手のミスを虎視眈々と狙った」
試合直後、スペインのラジオ局「カデナ・セル」でソシエダの番記者を務めるロベルト・ラマホ記者に、この日の久保を振り返ってもらった。
「率直に言って、本当に素晴らしかったよ。タケクボにとってもチームにとっても、今日は非常にいいゲームだった!」と大絶賛から始まり、「彼は少しずつ調子を上げながらチームの流れの中に入っていった。チームが今、なんのために戦っているかを十分に理解しているからこそ、あのように献身的なプレーをしていたんだと思う。そして、プレーに関与し続けたことが素晴らしいパフォーマンスにつながったんだ」と、サボることなく動き続けた久保のハードワークを高評価した。
続けて、「タケクボは試合中ずっと相手のミスを虎視眈々と狙い、ミリトンが犯した致命的なパスミスから先制点を記録した。今季の通算得点を8に伸ばして勢いに乗っているし、今日はタケクボにとって本当に良い試合になったと思う」と分析した。
今季も残すところあと5試合。ソシエダはこの後、ジローナ、バルセロナ、アルメリア、アトレティコ・マドリード、セビージャとの対戦を控え、油断できない状態が続くが、昨季の王者レアルを下したことは大きな弾みになるだろう。
絶好調の久保があと1か月、集中力が研ぎ澄まされた今の状態を維持し、ハイパフォーマンスを発揮し続けられるのであれば、来季のCL出場という夢が現実のものとなるだろう。
高橋智行
たかはし・ともゆき/茨城県出身。大学卒業後、映像関連の仕事を経て2006年にスペインへ渡り、サッカーに関する記事執筆や翻訳、スポーツ紙通信員など、スペインリーグを中心としたメディアの仕事に携わっている。