”ヒーローになり損ねた”磐田MF古川陽介の前向きな悔しさ 「良い選手とそうではない選手の差」を自己分析

磐田でプレーする古川陽介【写真:徳原隆元】
磐田でプレーする古川陽介【写真:徳原隆元】

【識者コラム】さらなる成長を誓う古川「尖ってる部分を意識。そこを磨き続ける」

 ジュビロ磐田は、味の素スタジアムで行われた5月3日のJ2リーグ第13節で東京ヴェルディと対戦し、スコアレスドローに終わった。前半はセットプレーからの失点ピンチを除き、ほぼ磐田のペース。後半は城福浩監督がFW坂野豊史を入れて、システム変更した東京Vが押し込む時間が長かった。

 磐田も前線で起点になっていた17歳のFW後藤啓介が、後半7分に負傷退場する苦しい流れで、ロングカウンターからチャンスは作ったものの、ホームの東京Vにより勝機のある試合展開だった。そうした状況ながら0-0で迎えた後半38分、磐田の横内昭展監督は左サイドに19歳MF古川陽介、右サイドに21歳MF吉長真優を投入する“ファイヤーアタック”で勝負を賭けると、後半44分に磐田にビッグチャンスが訪れた。

 スローインからDF松原后のパスを受けた古川が、左サイドでMFバスケス・バイロン、MF加藤弘堅、DF宮原和也を突破し、さらに中央のMF山田大記とのワンツーからペナルティーエリア内に入り込んで右足でシュートを狙った。センターバックの相手DF林尚輝とDF平智広のブロックを破る見事なシュートが決まるかと思われたが、実際は上手くミートし切れず、ボールはゴール右外に逸れてしまった。

「本当に、ヒーローに……あそこを決めるか決めないかが、良い選手とそうではない選手の差だと思います」

 古川は悔しそうに振り返った。高校サッカー選手権で名声を高めて、静岡学園高校から鳴り物入りで磐田に昨シーズン加入。当時からドリブルは際立っていたが、守備や周りを生かし、生かされるプレーに課題があり、2年目の今シーズンもリーグ戦でなかなか絡めなかったところから、ルヴァンカップで出番を得ながら地道に成長を続けている。

 結果的に2-3と敗れた前節の徳島ヴォルティス戦でも良い感触を得ていたという古川。この日も0-0の流れを見ながら「自分が鍵を握ってるな」と思っていたという。それだけに、自分の武器を発揮してチャンスに持ち込みながら、最後に掴み取れなかったことに悔しい思いはあるだろう。後半アディショナルタイムにも見事なドリブルから松原の惜しいクロスにつなげたシーンはあったが、勝利に結び付けられなかった。

「守備を求められたり、そこは大事なんですけど、自分の尖ってる部分を意識してますし、そこを磨き続けることは外せない」

 この日、東京Vと引き分けた勝ち点17の磐田は11位で、首位のFC町田ゼルビアと勝ち点12差、2位のV・ファーレン長崎と9差。一方の東京Vは勝ち点23の4位と上々だが、ギアを上げて勝ち点を積み重ねていかないと昇格の可能性はどんどん遠のいてしまう。

 この日はヒーローになり損ねた古川だが、ここから何倍にも返していくチャンスはある。

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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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