- HOME
- 今日のピックアップ記事
- 元Jリーガーに聞くアスリートの「NGフード」 “食のスペシャリスト”が挙げた有害物質とは?
元Jリーガーに聞くアスリートの「NGフード」 “食のスペシャリスト”が挙げた有害物質とは?
【インタビュー】アスリートの身体に悪影響を及ぼしかねない食材や調理法を紹介
スポーツを行うアスリートは、食べ物の良し悪しが怪我の防止やパフォーマンスアップにつながっている。「FOOTBALL ZONE」では「サッカー×食」のテーマで特集を組み、元Jリーガーで、食に関する専門的な知識を学んでSNSを通して自身の料理を発信してきた小泉勇人氏を直撃。第2回では、アスリートにとって「正しくない食事=NGフード」について語ってもらった。(取材・構成=河合 拓/全2回の2回目)
◇ ◇ ◇
身体が資本のアスリートにとって、食事は非常に重要です。スポーツ選手は、日常生活で消費されるエネルギーに加えて、トレーニングのためのエネルギー量と栄養素量も摂取することが必要になります。日々の食事から正しい食事をすることで、強い身体を作ることはもちろん、コンディションの維持、メンタル面でも良い効果が生まれてきます。
では、正しくない食事とは、どのようなものがあるでしょうか。アスリートにとって良くない「NGフード」としてまず挙げたいのが、質の悪い酸化した油です。油が酸化すると有害物質が発生し、身体に炎症を起こします。また、身体を老化させます。身体が老化したり、身体の動きが良くなくなるというのは、若々しくトップパフォーマンスを見せないといけないアスリートにとって、極めて良くありません。一般的にも「ファストフードやスナック菓子は食べない方がいい」と言われますが、酸化した油が使われがちなことも理由の1つです。
そもそも「揚げる」という調理法で有害物質が発生してしまいます。アスリートだけでなくとも、高温の油で揚げるという調理方法自体が良くありません。体の機能的な部分が悪くなっていきますし、老けていく速度が早まります。調理するときは、最低限の油で、低温で調理することが望ましいですね。
“油”は適量を、摂る種類に注意する
間違ってほしくないのは、油は重要なエネルギー源ですし、意識して摂取した方がいいものもあるのです。それは魚の油ですね。魚には、オメガ3の油があり、これは体内で作り出すことができません。摂取すると、体内でEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)に変わり、筋肉炎症を抑制する効果や心肺機能の安定、神経系や脳の機能向上、生活習慣病の予防といった効果があります。スポーツでも判断力の向上、集中力の向上、記憶力の向上につながるでしょう。
肉の油は常温では固まって個体になりますが、魚の油は常温では固まりません。常温で固体化しているものが体内に入ると血液もドロドロになり、液体化しているものが体内に入ればサラサラになるというイメージは、持ちやすいのではないでしょうか。このオメガ3の油は、お刺身や塩焼きでも摂ることができます。
また、オリーブオイル、アボカド、豆類や納豆、卵にも質の良い油が含まれています。
海外のニュースを見ていると、監督が食事制限をしたことが話題になることがありますが、ケチャップやマヨネーズなどの調味料を制限することでも大きな意味があります。例えば、マヨネーズには酸化した油が使われている可能性もあります。また塩分量的な問題もありますし、化学調味料が大量に含まれていると身体には良くない影響を及ぼします。人工甘味料もカロリーとして吸収されないのですが、身体には蓄積されているんです。カロリーとして計算されないから、食べやすいと思うのですが、それが蓄積されることで脳に障害を起こす可能性があるという研究結果もあるので注意が必要です。なるべく添加物が少ないものを選ぶなど、取るものの質にはこだわってもらいたいと思います。
練習後の栄養補給は重要だが、直後の栄養補給には注意
練習や試合をした後に、失われたエネルギーや栄養素を補給することは間違いなく重要です。ただし、バナナやプロテインも運動直後は避けた方がいいでしょう。運動した直後は疲れているので、胃腸などの消化器官にも負担がかかることになるからです。最低でも15分、できれば30分から1時間を目安に空けるようにしてください。スポーツ中やスポーツ直後は、消化のいいアミノ酸を補給するのがいいでしょう。練習中、練習直後にアミノ酸を飲んで、落ち着いてからおにぎりやバナナで糖質を取ったり、プロテインを飲んだりすることが理想だと思います。
アミノ酸は、多くのスポーツドリンクにも入っています。スポーツドリンクは甘いからといって、薄めてしまう方もいるかもしれませんが、汗をかいて失われた電解質を補うためには、薄めずにそのまま飲んでください。また熱中症予防の観点からも、水で薄めてしまうと糖分だけでなく、塩分も薄まってしまいます。アスリートはエネルギー消費が大きいわけですから、スポーツドリンクを飲むのは良い選択だといえるでしょう。
練習後の補食としては、おにぎりやバナナが理想的です。ただ、おにぎりの場合、海苔は消化されにくいので、海苔で巻いたものではなく、白米のおにぎりにすること。具材もタンパク質の入っている鮭にするといった工夫があると、より良いですね。
コンビニで、自分で補食を買っているという場合は、鮭のおにぎり、塩むすび、バナナ、ゆで卵、サラダチキンのスティックといったものがおすすめです。逆にツナマヨおにぎり、フルーツサンド、卵サラダサンドなどは避けましょう。ツナマヨ、フルーツサンド、卵サラダサンドはタンパク質もあるのですが、マヨネーズや生クリームに質の良くない油が多く使われている可能性もあります。
スナック菓子を買いたくなるかもしれませんが、脂質が多く、体脂肪の蓄積やパフォーマンス低下につながります。また、身体に必要なビタミンやミネラルも少なく、効率良くエネルギーを産生することはできません。スナック菓子を補食とすることは、おすすめできません。
背を伸ばすために効果的な栄養素とは
よく「背を伸ばしたければ、牛乳を飲みなさい」と言います。牛乳に含まれるカルシウムは注目したい栄養素の1つですが、ただ牛乳を飲めばいいわけではありません。カルシウムの吸収をサポートする働きがあるビタミンD、カルシウムが骨に沈着するのを助けるビタミンKといったビタミンと摂取することで、より効果的になります。
私は乳製品を口にしないようにしているのですが、カルシウムはしらすなどの小魚で摂っています。小魚にはビタミンDも含まれているため、効率よく摂取できます。納豆も栄養素が豊富でカルシウムも含まれているので、おすすめです。
逆に過剰摂取に気を付けないといけない、“リン”という栄養素があります。リンも体内で作れないため、食事で摂取することが必要ですが、過剰摂取はカルシウムの吸収を低下させます。リンは、ハムやソーセージ、ウィンナーといった加工肉、チョコ、カップ麺、スナック菓子に多く含まれます。
アスリートであっても、フワッと上を目指しているのか、それとも圧倒的に上を目指しているのかで、どれくらいの意識をもって食事をするかは変わってきます。自分が、どこを目指すのか。子供をどう育てていきたいのか。それを念頭に、日々の食に向き合ってもらいたいと思います。
[プロフィール]
小泉勇人/1995年9月14日生まれ、茨城県出身。現役時代のポジションはGK。鹿島アントラーズユースを経て、2014年よりトップチームへ昇格。水戸ホーリーホック、グルージャ盛岡、ザスパクサツ群馬と渡り歩き、19年夏にヴァンフォーレ甲府へ。選手としてプレーしつつ、コロナ禍で本格的に自炊をスタートすると、SNSを利用して自身の作った料理を発信。食に関する専門的な知識も身に着け、上級食育アドバイザー、野菜スペシャリスト、アスリートフードマイスターなど、数々の資格も取得した。23年2月に現役を引退し、「株式会社en’s life」を設立。[ftp_del]7月11日から17日にはおもて参道(ラフォーレ原宿)でアパレルブランドのポップアップの一部を社会貢献活動に活用、6月末には光文社よりレシピ本も出版が決定。[/ftp_del]「食を起点に多方面から人生を豊かに」という理念のもとに、さまざまな活動を幅広く行っている。[ftp_del]インスタグラムアカウント:@zumi_meshi、ツイッターアカウント:@yuto_koizumi40[/ftp_del]