3度目のアジア王者へ 浦和、赤く染まったスタジアムがもたらす大きなアドバンテージ

浦和に大きなアドバンテージをもたらすサポーターの存在【写真:徳原隆元】
浦和に大きなアドバンテージをもたらすサポーターの存在【写真:徳原隆元】

【カメラマンの目】浦和サポーターはチームに勇気を与える存在

 浦和レッズが繰り広げてきた、アジア王者の座を賭けた戦いの最終章がいよいよ近付いてきている。2007年、17年に続き3度目のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)制覇を目指す浦和は、アル・ヒラル(サウジアラビア)との決勝第1戦を1-1で切り抜け、5月6日に大一番の第2戦を迎える。

 慣れない国外での試合を含む国際試合で、勝利の鍵となるのはチームの総合力である。勝敗を決定するのは単純な戦力差にとどまらず、選手たちが試合を万全の状態で迎えるための周囲のサポートなど、さまざまな要素が勝利への条件となる。

 さらにアウェーゲームとなれば、スタジアムは国内チームとの対戦とはひと味違った異文化による独特の熱気をはらんだ緊張に包まれる。相手サポーターは強い対抗心を持ち、激しくプレッシャーを浴びせてくる。そんな敵地では選手たちには技術面だけでなく、強い精神力も欠かすことのできない勝利への要素だ。

 その点、浦和は厳しさが予想されるアウェーゲームでも、選手たちの闘志を突き動かす頼もしい味方を有している。これまでの取材ノートを読み返してみると、ACLにおける浦和のアウェーゲームを取材したのは07年から7回を数えた。場所はすべて隣国のライバルである韓国のクラブとの試合である。

 韓国でのアウェーゲームの印象を思い出してみると、浦和サポーターはホームチームのそれを凌駕する熱狂をスタンドで創り出していた。ある時には、知り合いの韓国人カメラマンが韓国のサポーターより浦和のほうが多いと冗談交じりに言っていたこともある。現実的には数では劣っていたが、浦和サポーターは異国の地でもその存在感を十分に発揮し、チームに勇気を与える存在であった。

 ただ、言うまでもなくこうした浦和のACLでのアウェーゲームの取材体験は限りなく断片でしかない。彼ら、彼女らは今回の決勝第1戦のサウジアラビアでの試合がそうであるように、報道陣でも尻込みするような敵地へと赴き、チームをスタンドから強烈に後押ししているのだから。

過去2回優勝している時と同じ、第1戦を1-1で終えて第2戦へ

 こうして迎える第2戦は、赤く染まったスタジアムの圧倒的な熱量を感じながら、赤き血のイレブンたちはプレーできる。それは大きなアドバンテージだ。

 これまで浦和が成し遂げた過去2回の優勝も、今回と同じく勝敗が決定する第2戦が埼玉スタジアムとなっていたため取材をしており、せっかくの機会なので撮影した記録メディアを探してみた。

 07年はイランのセパハン相手に第1戦を1-1で引き分け、迎えた第2戦は永井雄一郎と阿部勇樹のゴールで勝利して優勝を勝ち獲っている。

 17年はそれほど遠い過去ではないので、この日の取材のことを覚えていた。第1戦を1-1で引き分け、ホームの第2戦も終盤を迎えスコアは0-0と動きがなかった。第1戦のアウェーゴールがモノを言い、勝敗の行方がほぼ決まったと判断し、浦和の選手たちが優勝カップを掲げる場面を撮ることを見越して望遠レンズを片付け、自分の撮影位置を離れてメインスタンド側のコーナーエリア付近で待っていた時だ。

 後半43分、ラファエル・シルバの目も覚めるような豪快なシュートがアル・ヒラルゴールのネットを揺らした。優勝を決定付けるゴールを決めたR・シルバは、コーナー付近へと駆け抜けて来て、そこに歓喜の輪が広がった。おそらく本来のカメラポジションにいては浦和の選手たちが喜びを爆発させた、この場面を撮影することはできなかっただろう。

 奇しくも過去2度と同様に第1戦を1-1で終え、第2戦へと臨み3度目のアジア制覇を目指して戦う浦和。サポーターの絶大な声援をバックに優勝を勝ち取り、人々の記憶に刻まれ語り継がれる試合となるか。決戦はいよいよ近付いてきている。

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徳原隆元

とくはら・たかもと/1970年東京生まれ。22歳の時からブラジルサッカーを取材。現在も日本国内、海外で“サッカーのある場面”を撮影している。好きな選手はミッシェル・プラティニとパウロ・ロベルト・ファルカン。1980年代の単純にサッカーの上手い選手が当たり前のようにピッチで輝けた時代のサッカーが今も好き。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。

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