股抜き弾の久保建英に止まない賛辞「鋭利だった」「最高の契約」 番記者も悔しさ交じりに称賛「危険な選手」【現地発コラム】

オサスナ戦でゴールを決めた久保建英【写真:Getty Images】
オサスナ戦でゴールを決めた久保建英【写真:Getty Images】

第32節のオサスナ戦で2-0勝利、久保は後半途中から出場して今季7ゴール目の活躍

 レアル・ソシエダの日本代表MF久保建英は、2試合ぶりのベンチスタートとなったオサスナ戦で後半途中から出場し、今季リーグ戦7点目を記録してこの試合のMVPに選出される活躍を見せ、チームも2-0と勝利した。

 ソシエダは現地時間4月28日にアウェーで行われたラ・リーガ第32節で、国王杯ファイナリストのオサスナと対戦。前節ベティス戦から再び中2日での試合とあって、イマノル・アルグアシル監督は再び大幅なローテーションを実施し、先発メンバー6人の入れ替えを敢行した。久保、ミケル・オヤルサバル、アレクサンドル・セルロート、ブライス・メンデスなどをベンチに置き、4-3-3で臨んでいる。

 ソシエダは前半6分、アンデル・バレネチェアが左サイドから入れたクロスから、相手GKセルヒオ・エレーラのオウンゴールを誘発し上々のスタートを切るも、その後は押し込まれる展開に。前半終了間際に反撃し、ミケル・メリーノやモハメド=アリ・チョーにチャンスが訪れるも、決め切ることができずに前半が終了した。

 後半開始後、1点を追うオサスナがさらに激しくプレーしたことで、ソシエダは劣勢の状況に陥ったため、アルグアシル監督は後半18分に久保を投入。久保はピッチに入るとすぐに右サイドでドリブル突破を図り、相手に危険な選手であることをアピールしたが、その後は苦しい展開になり、なかなかボールを受けることができなかった。

 久保は後半30分過ぎにようやく本領発揮し、次々とチャンスを作っていく。後半37分にコースを狙ったシュートはわずかに枠外。後半44分に単独でカウンターを仕掛けて、ペナルティーエリア内から打ったシュートはやや角度なくGKエレーラにキャッチされ、得点には至らなかった。

オサスナの本拠地エル・サダール【写真:高橋智行】
オサスナの本拠地エル・サダール【写真:高橋智行】

スペイン紙が久保に賛辞「攻撃にダイナミズムとフレッシュさをもたらした」

 久保は4試合連続無得点に終わると思われたなか、待望の瞬間が後半45分に訪れる。ペナルティーエリア内右サイドでミケル・メリーノのパスを受けた久保が素早く左足を振り抜き、マヌ・サンチェスの股下を通すシュートで追加点を奪った。30分程度の出場時間だったにもかかわらず、メリーノと並ぶチーム最多3本のシュートを打ち、今季7点目を記録してMVPに輝いた。

 このように素晴らしい活躍を見せた久保に対し、スペインメディアはおおむね賛辞を送っていた。クラブの地元紙「エル・ディアリオ・バスコ」は、「セルヒオ・エレーラを驚かせるニアポストへのシュートで、試合を決めるゴールを記録。攻撃面で非常に鋭利だった」と称賛し、4点(最高5点)をつけた。

 もう1つの地元紙「ノティシアス・デ・ギプスコア」は途中出場のため“採点なし”としたものの、「コンスタントに危険な存在となり、ゴールを決める前までにも4回チャンスに絡んでいた。クラブにとって今季最高の契約となっている」と大絶賛した。

 スポーツウェブメディア「エル・デスマルケ・ギプスコア版」は「疲労が見え始めたラ・レアルの攻撃にダイナミズムとフレッシュさをもたらし、チームに落ち着きを与えるゴールを決めた」と評し6点(最高10点)。スペイン全国紙の「AS」、「マルカ」の評価はともに2点(最高3点)と高かった。

スペインのラジオ局「カデナ・セル」でオサスナの番記者を務めるハビエル・ラキダイン氏が久保建英を称賛【写真:高橋智行】
スペインのラジオ局「カデナ・セル」でオサスナの番記者を務めるハビエル・ラキダイン氏が久保建英を称賛【写真:高橋智行】

敵地記者は感嘆「流れが変わった」「私たちは今日、目の当たりにしたんだ」

 試合後、スペインのラジオ局「カデナ・セル」で、この日の対戦相手オサスナの番記者を務めるハビエル・ラキダイン氏に、この日の久保を評価してもらった。

「今日はタケ・クボがピッチに入ってから試合の流れが変わったことは間違いない。彼のような質の高い選手は、後半にフレッシュな状態で投入されれば、場の流れを変えて違いを生み出すことができる。試合が拮抗していた得点前にも際立つパフォーマンスを見せていたしね。レアル・ソシエダの勝利はあのゴールにより確固たるものになったが、その前から彼はオサスナGKに対して、”自分が危険な存在” であることを明確に警告し続けるプレーをしていた。私たちは今日、パンプローナでタケ・クボが危険な選手だということを目の当たりにしたんだ」と、やや悔しさ混じりに称賛の言葉を発していた。

 ソシエダは第19節レアル・マドリード戦からの7試合、1勝4分2敗の勝ち点7と調子を落としていた。しかし、第26節エルチェ戦からオサスナ戦までの7試合、4勝1分2敗の勝ち点13と低迷期を脱し、再び勝利の道に戻り始めた。ラ・リーガも残すところあと6節となるなか、久保も含めチーム全体が口にする“来季のUEFAチャンピオンズリーグ(CL)出場権獲得”にあと少しで手が届くところまで来ている。

 残りの対戦カードを見てみると、ホームでレアル、ジローナ、アルメリア、セビージャ、アウェーでFCバルセロナ、アトレティコ・マドリードと厳しい相手がまだ揃っているが、現在の調子を維持できれば、今季最大の目標を間違いなく達成できるだろう。

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高橋智行

たかはし・ともゆき/茨城県出身。大学卒業後、映像関連の仕事を経て2006年にスペインへ渡り、サッカーに関する記事執筆や翻訳、スポーツ紙通信員など、スペインリーグを中心としたメディアの仕事に携わっている。

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