苦闘が続く香川の現在地 アーセナル戦直後に見せた日本人MFの葛藤

 

アーセナル戦敗戦後、珍しく声を荒げた香川

 

「まだそんなことを考える余裕はないです。まずチームが勝つことが大事なんで」

 普段はどちらかといえば飄々とした印象で、淡々と話す香川が珍しく声を荒らげた。

 確かに2点をリードしたアーセナルの守りは固かった。その徹底した守備に関しては、香川も「あそこまでしっかりラインを引かれて、しっかりブロック(壁)を作って、なかなかスペースも……。起点も作れてなかったので、正直、難しかった」と振り返るしかなかった。

 しかも、日本代表MFを追いかけるように後半22分にアルテタのサブとして登場したフラミニは、執拗に香川をマークした。

 そうした状況で、タッチ数はわずか16。得点のチャンスに結びついた効果的なプレーは、後半33分に放った縦パス1本。もちろん本人のシュートは0。これでは“イングランドでまたやってみたいという気持ちは出たか?”という質問は愉快ではなかっただろう。

 本当なら、久々のイングランドでその存在感を示したかったはずだ。志半ばでマンチェスター・Uを去った香川が、かつてのライバル・アーセナルを相手に活躍する。英国のメディアもそんなストーリーを待ち望んでいたはずだ。

 しかし、前節のリーグ戦は、前半2点をリードしながら終ってみれば2-2ドロー。香川もこの試合に関しては、「敗戦に近い引き分けだった。しかも相手が昇格組」と話して結果に対する不快感を示すと、このドローが影響して、「すごくやっぱり苦しい中で今日を迎えた」と続け、「最初の方にそういうのが出ちゃったというか。立ち上がりであんな失点をするというのは、なかなか勝てない流れになっているのかと思う。こういう失点は絶対しちゃいけない」とさらに語って、前半2分の段階で先制点を奪われ、終始アーセナルに主導権を握られっぱなしだった試合を振り返った。

 これで無敗だった欧州CLでも初黒星。もちろん、それでも最終戦を勝てばグループ1位通過が文句なしに決まる。引き分けでもアーセナルがガラタサライ相手に6点差以上の大勝を記録しなければ順位が入れ替わることはなく、この1敗を喫してもドルトムントが圧倒的に有利な立ち場にいることには変わりはない。

 しかし、終ってみればシュート数は9本。ポゼッションも45%で、それほど良くなかったアーセナルに全く見せ場を作れず完敗したのは今後に不安を残す。

 後半16分に登場し、後半4分だったロスタイムを含め33分間をプレーした香川だったが、味方のチャンスにからんだといえる効果的なプレーは後半33分に放ったスルーパスだけだった。

 それに、負けに等しいドローを記録した前節は後半13分での交代。そしてこの試合はベンチスタート。ドルトムントに復帰して約3か月が過ぎたが、この起用法を見る限り、クロップの采配からは、香川に対する中軸としての信頼感はまだまだ乏しいと見るしかない。

 そんな現実に対して、日本代表MFは「自分ではもう、やることはピッチに出て、結果に向ってがむしゃらに自分のやれることをしっかりやることなんで。その中で結果を出すことが一番だし、チームとしてもそうですけど、それを辛抱強くやっていかなくてはしょうがない」と話す。“がむしゃら”また“辛抱”という言葉からは、復帰初戦となった9月13日のフライブルグ戦のゴールから、なかなかゴールが生まれない香川の苦しみが伝わってくるようだ。

page1 page2

今、あなたにオススメ

トレンド

ランキング