パリ五輪へ期待の「タレント7人」 横浜FMの“シンデレラボーイ”、怪我で不遇の大型SBら厳選
【識者コラム】U-22日本代表候補トレーニングキャンプのメンバーから7人をピックアップ
2024年に行われるパリ・オリンピック(五輪)まで1年半を切った。大岩剛監督が“A代表経由パリ行き”を標榜。前回のA代表にバングーナガンデ佳史扶(FC東京)、半田陸(ガンバ大阪)が選ばれた一方で、U-22日本代表は欧州遠征でドイツ、ベルギーと対戦するなど、まずはU-23アジアカップで出場権に向けて、チームのベースは出来上がりつつある。
しかしながら、この世代は短期間で大きく伸びる選手がおり、”大学組”の有望なタレントも少なくない。今回は4月23日から26日まで千葉県で行われたU-22日本代表候補トレーニングキャンプのメンバーから期待のタレント7人をピックアップした。
なお欧州遠征に参加していたDF今野息吹(法政大/ガンバ大阪内定)、DF加藤聖(V・ファーレン長崎)、MF佐藤恵允(明治大)、FW木村勇大(京都サンガ)の4人は、今回は対象外としている。
■FW中島大嘉(北海道コンサドーレ札幌) 20歳
自他ともに認める抜群の身体能力と爆発的なスピードを武器に、ゴール前で迫力あるフィニッシュを見せる。その能力を前面に押し出して、ひたすらゴールを目指していた昨シーズンから守備、ポストプレーなどを取り入れる中で、ミシャ(ミハイロ・ペトロヴィッチ)監督が率いる北海道コンサドーレ札幌で、リーグ戦では途中から出たり出なかったりという立場にある。
大言実行タイプで、思いの通り結果が出せないと眠れない日もあるようだが、徐々にメンタル的にも成長しており、1つトンネルを抜けた今は“凪の中島大嘉”を心掛けている。プロ入りの頃から世界の舞台で活躍するのが目標と公言しており、それは日の丸だけでなく、個人のステージも含めてのことだが「コンサドーレめちゃめちゃ好きなんですよ」と語る、愛するクラブにタイトルの星を付けて旅立つことを誓っている。
■DF長澤シバタファリ(関東学院大/サガン鳥栖内定) 21歳
筆者が初めて観たのはシーズン前の沖縄キャンプだった。まだ内定も特別指定も出ておらず“練習生”という立場だったので、表立って取材はしなかったが、ずば抜けたパワーに見入ってしまった。それと同時にシーズン中、おそらくサガン鳥栖を助ける存在になるだろうとも予想していた。そして4月6日に加入内定がリリースされると、特別指定選手として3日後の広島戦でJデビューを果たした。
関東大学選抜に選ばれたのをきっかけに、U-20日本代表にも招集されたが、その時は怪我で辞退。なかなか表舞台で輝けなかった。サイズに恵まれているが器用さもあり、ボランチや3バックのストッパーもこなすことができる。「まずは自分のレベルを上げられるように。そこから自分が日本を代表していける選手になれるように頑張りたいと思って、意識はしてます」と静かに野心をギラつかせる大型サイドバックに期待大だ。
■MF櫻井辰徳(徳島ヴォルティス) 20歳
前橋育英高の司令塔として鳴らしたプレーメーカーであり、同世代のライバルたちにも無い長短のパスセンスと高精度のプレースキックは国際試合で大きな武器になりうる。ヴィッセル神戸から育成型期限付き移籍をした徳島ヴォルティスで、戦術的なポジショニングなどを学び、着実な成長を見せているが、現在はチームがJ2の最下位に低迷。自身もコンディションを崩し、復帰後も短い時間の出場が続くなど、難しい時期を過ごしている。
神戸の試合は全て観ているというが、主力の山口蛍や齊藤未月が見せているボール奪取は明確な課題で、すぐ神戸に戻っても「自分で奪う個の能力が明らかに違いすぎるので。神戸で出るって考えたら難しいなと思います」と素直に認める。だからこそ、徳島でも自分の課題に向き合っているが、今は「徳島に対し何もできてない申し訳なさがすごいあるので。徳島の状況を変えたい」と強い思いを語る。徳島の主力としてチームを上昇させることが、そのまま五輪代表での序列アップにもつながるはずだ。
初めての日本代表へ招集された横浜MF内定DF、去就未定の182センチの大型ボランチも
■DF吉田真那斗(鹿屋体育大 / 横浜F・マリノス内定) 21歳
横浜F・マリノスではセレッソ大阪戦でのスタメンでのリーグ戦デビューが印象的だが、今回の代表招集がパリ五輪世代だけでなく、アンダーカテゴリーを含む初めての日本代表だった。そもそも鹿屋体育大から宮崎キャンプの怪我人を補うため急遽、マリノスの練習に参加したところでケヴィン・マスカット監督に高く評価されて、来年の加入内定と特別指定を勝ち取った“シンデレラボーイ”だ。
右サイドバックからビルドアップに参加しながら、チャンスがあれば攻め上がってクロスだけでなく、強烈なミドルシュートに持ち込む。172センチと決して大きくないが対人に強く、攻撃的な戦い方の中でも守備力を発揮できるスペシャリティーはパリ五輪世代はもちろん、A代表でもやや層の薄いサイドバックで台頭していく可能性は大いにある。J1連覇、そして秋から開幕するAFCアジアチャンピオンズリーグ(ACL)での躍進を目指すマリノスで存在感を高めることが、そのまま代表レベルの評価にもつながるだろう。
■DF鶴野怜樹(アビスパ福岡) 22歳
U-22代表合宿の紅白戦では代表チームの常連メンバーでもある佐藤恵允(明治大)のゴールをアシストするなど、短い時間でアピールしたのが、快速アタッカーの鶴野だ。小柄で童顔な見た目とは裏腹に、守備から鋭い動きを見せて、マイボールになった瞬間には相手ディフェンスの背後を取っている。ドリブルを強みとするが、アビスパ福岡では味方を生かすプレーと使い分けることで、攻撃の威力が増している。ルヴァンカップ(杯)のアルビレックス新潟戦では1トップにスタメン起用されると、佐藤凌我のスルーパスから抜け出して、左足でデビュー戦ゴールを決めた。リーグ戦は全て途中出場だが、夏場になって来ればリーグ戦のチャンスも増えそうだ。
■MF細谷航平(法政大) 21歳
182センチの大型ボランチはサンフレッチェ広島ユース時代、もともとセンターバックをメインにする選手だった。そのためデュエルに強く、FW経験もあることから得点力も秘めている。特にセットプレーからのヘディングシュートは圧巻だ。代表戦は中盤の空中戦やセカンドボールの奪い合いなど、激しいバトルが多い。あらゆる局面で強さを発揮できる細谷の存在は大きな武器になりうる。U-22代表の”大学組”でもMF山内日向汰(桐蔭横浜大/川崎フロンターレ内定)など、多くの選手はすでにJクラブ内定、そして特別指定でプロデビューもしているが、細谷は注目のMF佐藤恵允(明治大)とともに加入先が未定。キャンプに参加したという広島が有力視されるが、パリ五輪代表の候補という意味でも気になるところだ。
■MF近藤友喜(横浜FC) 22歳
日本大卒のルーキーだが、開幕戦から右サイドのアタッカーとしてスタメンに抜擢されて、湘南ベルマーレ戦では小川航基のゴールをアシストしている。鋭い仕掛けを武器としながら、守備でも強さを発揮する。パリ五輪の選手がJ1でなかなか試合に出られなかったり、J2でプレーしている選手もいる中で、2001年の早生まれでもある近藤にも少なからずチャンスはあるはず。ただ、チームを浮上させないことにはパリ五輪も見えてこない。そのためにはアシストにつながるラストパスやクロスはもちろん、ゴールという結果も欲しいところだ。
河治良幸
かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。