「自分のせいで負けた」 浦和ベテランGK西川周作、ACLで味わった過去の苦き思い
ACL決勝第1戦のキーマン、過去の悔しさを経て因縁のアル・ヒラルと激突
J1浦和レッズは4月29日に、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)の決勝第1戦でアル・ヒラル(サウジアラビア)とのアウェーゲームを迎える。厳しい試合展開が見込まれるなか、最後方でゴールを守るGK西川周作の活躍に大きな期待が懸かる。
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西川は2014年にサンフレッチェ広島から移籍加入。ミハイロ・ペトロヴィッチ監督の下で超攻撃的なサッカーを展開するも大量失点に苦しんでいたチームで救世主のようにゴールを安定させた。必ずしも順風満帆ではないなかでも、常に浦和のゴールを守り続けて今季で10シーズン目になる。
その間には、ACLでの悔しい思いもあった。その1つが16年大会ベスト16のFCソウル(韓国)戦だ。アウェーでの第2戦はPK戦までもつれ込む激闘に。当時の方針で立候補制だったキッカーは3人目まではスムーズに決まったが、4人目以降は難航したという。そこで西川は「4人目でも、5人目でも大丈夫」と手を挙げた。相手の枠外ミスが1本あったことで、決めれば勝利の5人目となるなかでキッカーとして登場するも、中央の上を狙ったキックは踏み込みが決まらず高さが出なかった。GKに弾かれると、8人目までの激闘に敗戦。シュートセーブは1本もできず、「自分のせいで負けてしまった」と悔やまれる敗退だった。
また、19年には準決勝の広州恒大(中国)との第2戦で、厳しい判定で遅延行為による警告を受けて決勝第1戦の出場停止が決まってしまった。しかも、試合中には相手選手との接触で手を負傷。普通なら出場が難しいレベルのものだった。今回と同じアル・ヒラルとのアウェーゲームを前に、当時の大槻毅監督は第2GK福島春樹に出場機会を与えることを決断し、鹿島アントラーズとのリーグ戦に起用。そのため、西川のリーグ戦の連続出場記録も225で止まった。自然な采配だったとはいえ、歴代1位の曽ケ端準(鹿島)が持つ244試合に迫っていただけに、その決勝戦で敗れたことも含めて悔しさの残る準優勝だった。
ユースから昇格して将来を嘱望されるGK鈴木彩艶の台頭もあり、また年齢を重ねていく西川の立場は必ずしも安泰ではなかったが、22年に浦和がジョアン・ミレッGKコーチを招聘すると西川は再び進化を見せている。「すべてをリセットするような」新しいGK理論の指導のなかで、明らかにプレーが変わっていった。また、ジョアンGKコーチが何か新しい技術を提示した時に、自身の思うとおりに身体を動かすコーディネーション能力が優れていることから、GKたちのトレーニング中に多くの場面で西川が最初にその技術をものにする。まるで若手が伸びるようなスピードで、そのスペイン人コーチによるGK理論を吸収していった。
「17年、19年の時に比べると今の自分は成長できている」
そうしたなかで迎えた今大会では、昨年夏の東地区決勝トーナメントで全北現代(韓国)との準決勝がPK戦にもつれ込んだ。西川は相手の1本目と2本目を完璧なセーブで弾き出し、枠外ミスも1本。チームをPK戦スコア3-1の勝利に導き、1つのリベンジは達成した。
そして、今年2月に決まった西地区を突破した決勝の相手はアル・ヒラル。17年には撃破し、19年には敗れた相手と3回目の決勝戦になる。西川にとっては、出場できなかった前回のアウェーゲームに対するリベンジの意味もある。だからこそ「これ以上ない相手だと思う。本当にリベンジをしたい。自分たちが越えていかないといけない相手だと思っていて、2019年に感じたあの強さを、もう1回、自分たちがガチンコ勝負で経験できるのはすごいことだと思うので、そこに尽きるかなと思っている」と思いを胸に臨む。それだけなく、昨季から大きく変化してきた自身の成長を確かめる場にもなる。
「自分の今持っているものを思う存分出したいなと。17年、19年の時に比べると今の自分は成長できているなと感じている部分が多い。押し込まれる時間帯も想定して自分はしっかりとピッチに立ちたい。今はジョアンと出会って、GK全員がゴール前の空間をいかに守るかに集中してやれている。解決方法があるのは、守備面はもちろん攻撃面でも非常に落ち着いていられる1つの理由にもなっているので、アウェーでもそういった姿勢で落ち着いてやることができれば、勝つチャンスももちろん出てくると思う」
ACLの戦いでは、ホームとアウェーで全く違う雰囲気、あるいは全く違うレベルのサッカーになるような試合展開や相手が見られる。浦和も対外的にはそう思われているクラブの1つかもしれない。アル・ヒラルとのアウェーゲームも過酷を極めることは確実視されるが、最後の砦としてゴールを守る西川の力が浦和にとっての3回目のアジア制覇、そしてアル・ヒラルへのリベンジ達成には絶対に必要だ。
(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)