浦和、ACLアル・ヒラル戦「必勝ポイント」考察 リンセン?カンテ?…ベンチ入り助っ人の選択も鍵に
ACL決勝第1戦、敵地サウジアラビア決戦をプレビュー
J1浦和レッズは4月29日に、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)の決勝第1戦でアル・ヒラル(サウジアラビア)と戦う。公式戦11戦無敗でこの決勝戦を迎えた浦和は、どのようにこのゲームに臨むのか。
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今季就任したマチェイ・スコルジャ監督は、「浦和レッズでの初日から、ACL決勝のことは意識していました。そして沖縄キャンプが始まったころから、そこに向けて全員でハードワークしてきました」と話している。その言葉は選手起用に表れていて、特にリーグ戦のメンバーは固定傾向だった。それは、この決勝戦を見据えてなるべく同じメンバーでプレーする時間を与える意図からだ。その意味からも、浦和のスタメンはおそらく普段のリーグ戦と同じようなメンバーが並ぶだろう。
昨季にジョアン・ミレッGKコーチが就任してから進化が著しいGK西川周作を最後方に、デンマーク代表招集歴を持つアレクサンダー・ショルツと、ノルウェーで世代別代表を経験し続けてきたDFマリウス・ホイブラーテンの北欧コンビが中央を固める。左サイドはDF明本考浩が一番手。右サイドは4月9日の名古屋グランパス戦での負傷から、この決勝に合わせて調整してきた主将のDF酒井宏樹が強行出場の構えだろう。もし酒井の出場が難しければ、明本を右に回して左にDF荻原拓也が起用されるか。
ダブルボランチはMF岩尾憲とMF伊藤敦樹の組み合わせが確定的。岩尾はマイボール時の立ち位置を調整し、伊藤はより前線に飛び出していく役割を持つ。2列目は右からMF大久保智明、MF小泉佳穂、MF関根貴大の並びが続く。全体的に小柄な選手たちではあるが、技術と「気の利いたプレー」でチームを助ける。そして、最前線はFW興梠慎三が貴重なアウェーゴールを狙う。
ポイントになるのはベンチ入りメンバーか。今大会の外国籍選手枠は3人+アジア枠1人の形式のため、興梠に次ぐ日本人FWが計算できない現状からFWホセ・カンテとFWブライアン・リンセンの二者択一をゲームまでに行うことになるだろう。長身であり興梠同様に前線でキープ力を見せるカンテか、小柄ながらも一発で背後を取ってゴールに迫る、あるいはクロスに飛び込む強さのあるリンセンか。ここは指揮官の考え方が反映されそうだ。
また、完全に押し込まれる展開、あるいは首尾よくアウェーゴールを奪うような展開になれば守備的な良さを持つ選手をピッチに送り込む可能性もある。中盤でボール奪取力のあるMF柴戸海やボランチが本職ながらトップ下での起用も多いMF安居海渡は有力な交代選手だ。あるいはDF岩波拓也やDF犬飼智也を投入しての3バック化も選択肢になる。また、サイドハーフでは外国籍選手枠の関係でMFダヴィド・モーベルグやMFアレックス・シャルクの起用が難しいと見込まれるので、荻原や明本を1列前に出すパターンに加え、17歳のユース所属MF早川隼平の投入が現実的な選択肢に入ってくる。
空中戦に強く、肉弾戦を厭わない明本がどこまで戦えるか
一方のアル・ヒラルはまず外国籍選手枠に誰を起用してくるのかが非常に読みづらい。ナイジェリア代表FWオディオン・イガロの得点力は脅威だが、浦和の北欧コンビは引けを取らないだろう。マリ代表FWムサ・マレガが右サイドに起用された試合では、サイドバックの前で空中戦のターゲットになるプレーも見せる。身長の与える印象よりも空中戦に強く、肉弾戦を厭わない明本がどこまで戦えるかはポイントになるだろう。
また、サウジアラビア代表FWサレム・アル・ドサリが左サイドに起用されてくれば、酒井と代表チームでも見せたような丁々発止のやり合いがあるか。19年の決勝で対戦した際に大きな存在感を発揮したペルー代表MFアンドレ・カリージョも警戒選手だが、こうした選手たちですら起用されるかどうか不透明だ。浦和の分析スタッフたちがどれだけ相手のメンバーを予想できているかも準備の重要なポイントになるかもしれない。
いずれにせよアル・ヒラルは特にホームの初戦で人数をかけて前に出てくるだろう。だからと言って浦和は耐えるだけでなく、相手に脅威を与え るカウンターを繰り出すこともそうだし、90分間のゲームを考えればマイボールの時間を作って相手の攻撃回数を削りつつ、自分たちのペースを整える時間も絶対に必要だ。国内で最強クラスのチームということもあり、アル・ヒラルは相手が自陣で守備を固める試合展開に慣れている。ボールを持つ時間が長く、押し込んだ状態で攻撃を繰り返す展開にストレスは感じないだろう。
浦和は23日のリーグ戦、川崎フロンターレ戦後に等々力陸上競技場をあとにするとそのまま出国。中東でのミニキャンプを経て現地時間27日にサウジアラビア入りして決戦に臨む。第2戦をホームで戦えることはアドバンテージの1つ。そのゲームに現実的な条件を残す結果を持ち帰ることができれば、3回目のアジア制覇は十分に視界に入ってくる。
(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)