アルゼンチン代表GK、W杯優勝に導いた味方への“心理学アドバイス”とは? 「ただ突っ立っているだけのバカだと…」
チームメイトに「僕がPKを止めた後に、次のシュートは真ん中に蹴るんだ」と助言
アルゼンチン代表は昨年12月にカタール・ワールドカップ(W杯)決勝でフランス代表にペナルティーキック(PK)戦の末に勝利し、同国史上3度目のW杯制覇を成し遂げた。決勝のPK戦では、大会最優秀GKに選ばれることになるGKエミリアーノ・マルティネスが活躍を見せたが、心理学に基づくアドバイスをチームメイトにしていたことを明かしている。アルゼンチン紙「Ole」が報じている。
前半からフランスを圧倒していたアルゼンチンは、ハーフタイムを迎える時点で2点をリードしていた。後半35分まで、前回大会優勝のフランスを完璧に抑えていたが、試合終了間際にFWキリアン・ムバッペにPKと素晴らしいダイレクトボレーを決められ、2-2の振り出しに戻される。延長戦でも先制点を挙げていたFWリオネル・メッシのゴールでリードしたアルゼンチンだったが、再びムバッペにPKを決められて同点に追い付かれた。
このままPK戦に突入する形になったアルゼンチンだったが、GKマルティネスは冷静なプレーを見せる。ムバッペとメッシという両チームのエースが、1人目として成功して迎えたフランス2人目のキッカー、FWキングスレイ・コマンのシュートをマルティネスは右に飛んでセーブ。マルティネスは大きく3度ジャンプしながらガッツポーズをしていたが、この時、すでにチームメイトへのアドバイスは終わっていたという。
アルゼンチン2番目のキッカーであるFWパウロ・ディバラは、ゴール中央に低いボールの決して強くないシュートを蹴った。これに対してフランス代表GKウーゴ・ロリスは左に飛んでしまい、中央で待っていれば防げたボールに触れなかった。
PK戦の前にマルティネスは、チームメイトたちにこう言っていたという。「僕がPKを止めた後に、次のシュートは真ん中に蹴るんだ」。そう語ったのには、しっかりとした根拠があった。
「僕は何年も心理学の勉強をしていたい。相手のGKが防いだ時、もう1人のGKは自分も防がないといけないという心理になる。『ゴール中央に、ただ突っ立っているだけのバカだと思われたくない』と、考えてしまうんだ。しかも、それがW杯決勝なんていう舞台だったら、なおさらだ。そうすれば、必ずどこかに飛ぶからね」
マルティネスの読み通り、ディバラが中央に蹴ったボールはゴールに決まった。続くフランス3番手のMFオーレリアン・チュアメニの心理に、アルゼンチンがリードしたという事実がどれだけ影響したかはわからないが、当時22歳だったMFのシュートは左に外れて行った。最終的にアルゼンチンはキッカー4人全員が成功して4-2でPK戦を制している。
ピッチ上で熱いパフォーマンスを見せていたマルティネスの的確なアドバイスが、アルゼンチンを史上3度目の優勝に導く要因になっていたようだ。