ソシエダ久保は敵地記者も唸らせる 「個人的にとても好き」と称賛も足りなかった点は?「彼の潜在能力を考えると…」【現地発コラム】
ベティス戦で先発復帰、終始好守で奮闘するもスコアレスドロー
スペイン1部レアル・ソシエダMF久保建英は、現地時間4月25日のラ・リーガ第31節レアル・ベティス戦で先発復帰。4位対5位の重要な一戦を0-0のスコアレスドローで終えた。
UEFAチャンピオンズリーグ(CL)出場権を争う直接のライバルとの大一番となるなか、イマノル・アルグアシル監督は前節ラージョ・バジェカーノ戦から中2日という非常に厳しいスケジュールを考慮し、主力の元スペイン代表MFダビド・シルバやMFミケル・メリーノを温存。これにより久保は中盤ダイヤモンド型の4-4-2の右サイドハーフでプレーした。
立ち上がりはソシエダが好パフォーマンスを見せ、久保も得点には至らなかったが何度かシュートを放つ。さらに、前線での激しいプレスでFWアレクサンデル・セルロートのチャンスを生み出した。しかし時間の経過とともにチームが押し込まれ始めると、久保もボールを受けられない状態に。後半に入るとその状況はさらに悪化していく。それを打開すべく久保は右サイドに大きく開いてカウンターを仕掛けるタイミングを窺ったが、ボールが出てくることがほぼなく孤立するシーンが何度もあった。また守備に追われる時間が増え、ハードワークしながらフル出場で試合を終えた。
久保は試合後、「前半は僕たちが攻めていたし、このままなら勝てるという感じがあったけど、試合が進むにつれて自分たちには失うものがあると皆が気づいてしまい、少し弱気になってしまった。いつものような攻撃的なサッカーができなくなったので残念だ」と分析。さらに、「CLという舞台に挑戦するのであれば、もっと自信を持って自分たちの強みを出し、今日の相手には簡単に勝たなければならなかった」ともコメントした。
ホームのベティスに主導権を握られる時間が長かった試合内容となるなか、久保に対するスペイン各紙の評価は賛否両論あった。
クラブの地元紙「エル・ディアリオ・バスコ」は「右サイドハーフに入り、試合を通じてミランダ相手に何度も突破を試みるも苦戦し、シュートも弾き返された。セルロートへ出したいくつかパスがこの試合における久保のハイライトとなり、疲れを知らず最後まで走り続ける力強さがあった」と称賛し、チームトップタイの4点(最高5点)と高評価を与えた。
一方、もう1つの地元紙「ノティシアス・デ・ギプスコア」の評価は5点(最高10点)。「出だしは良かったが、スローダウンした。スタートダッシュで相手に脅威を与えるも、ラストパスやフィニッシュワークの精度を欠いた」とやや厳しいものとなった。スペイン紙「AS」は2点(最高3点)、「マルカ」は1点(最高3点)だった。
対戦相手ベティスの番記者 「チームにもっと多くのものを提供できた」
スペイン各紙の意見が分かれる中、現地メディア「BeSoccer」でベティスの番記者を務めるペドロ・ホセ・ゴンサレス・メディーナ記者の目に、この日の久保のパフォーマンスはどう映ったのだろうか?
「いい試合をしたと思う。個人的にとても好きなタイプの選手だよ。チームの調子が良かった前半、特に素晴らしいパフォーマンスを発揮し、(フアン)ミランダとの1対1にも何度か勝っていた。そして劣勢となった後半もチームの攻撃をリードしようとしていた。概ね素晴らしいシーズンを送れている選手の1人だよ」とポジティブに捉えていた。
しかし、「彼のポテンシャルを考えると、チームにもっと多くのものを提供できたと思う。もちろん、今日はベティスのようなタフな相手に、しかも難しいスタジアムでの対戦だったので、本来の力を出し切れないのは仕方ないことだけどね」と期待が大きい分、やや物足りない部分もあったようだ。
またCL出場権争いのライバルであるソシエダについて、「選手層が厚く、確固たる信念を持って戦っているチームだ。私はCL出場圏内の4位の最有力候補だと思っている。昨季は最終的に失速してしまったが、今季は非常に素晴らしいシーズンを送り、リーガ最高のチームの1つであることをここベニート・ビジャマリンで前半に証明した。彼らが4位入りの本命であることに間違いない」とベティスよりも有利な状況であることを認めていた。
ソシエダは一時期、勝利に見放され厳しい状況に陥っていたものの、5位ベティスと引き分けて勝ち点「6」差の4位をキープした。早いもので今季も残り7節となる中、CL出場権獲得に向け大きく前進している。
高橋智行
たかはし・ともゆき/茨城県出身。大学卒業後、映像関連の仕事を経て2006年にスペインへ渡り、サッカーに関する記事執筆や翻訳、スポーツ紙通信員など、スペインリーグを中心としたメディアの仕事に携わっている。