川崎×浦和でVARチェックに中断計5分 必要以上に行う判定への“議論”は正しいのか
2度VARのチェックで試合が中断
川崎フロンターレと浦和レッズが対戦した4月23日のJ1リーグ第9節の試合では、後半にビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)のチェックで試合が止まる場面が2回あった。
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1回目は川崎のゴールシーンだった。後半2分にFW家長昭博が縦に突破した後の折り返しにMF脇坂泰斗が詰めたが、ここで浦和のMF伊藤敦樹と競り合いながら押し込んだ際に、ボールが脇坂の腕に当たっているかの確認に約2分間を要した。競技規則のうえでは、「偶発的であっても、ボールが自分の手や腕に触れた直後に」決まった得点はハンドの反則で取り消しになる。これは「当たったか、当たっていないか」だけの確認であり、何か議論が必要なものではない。そのため、飯田淳平VARが慎重になったのは理解ができるだろう。
2回目は後半の半ば、22分から23分になろうという時。浦和の攻撃でMF関根貴大の縦パスが川崎のDF高井幸大に当たってペナルティーエリア内にこぼれたものをFW興梠慎三が確保しようとしたところ、高井の右足が興梠の左足を蹴る形になった。谷本涼レフェリーはこれをノーファウルと判断したが、直後に川崎のクリアがタッチラインを割った時点で試合をストップし、VARがチェックする時間に入った。
その間に多少、ピッチ上の選手とコミュニケーションを取る場面はあった。興梠はこの判定について谷本レフェリーからは「蹴られてはいるけどね、みたいな感じだった」という会話があったと話した。谷本レフェリーは興梠の左足を、接触を誘発する動き(イニシエート)と受け取ったのだろう。それにしては高井が振った右足の位置は興梠の足がなかったとしてもボールをクリアできていたのか疑問があり、そしてかなり強い振りだったのでそもそも危険性のあるようなものにも見えた。だが、いずれにせよ振った足が止まっている足にヒットした事実も、理由が興梠にあるように受け取れるような要素もある微妙な判定だったとは言える。
過去に日本サッカー協会が行ったレフェリーブリーフィングでは、ピッチ上で選手たちがレフェリーに話し掛け続けることや、VARと交信中にも関わらず選手が何度もプレーを再開しようとしてレフェリーが対応に追われ、VARとコミュニケーションをきちんと取れなかった場面が実例で示されたこともある。ただ、このゲームで谷本レフェリーと飯田VARが交信を試みているタイミングでは、それが明らかに妨げられているようには見えなかった。それでも、このチェックには約3分間を要した。最終的にはオンフィールドレビューを行わずにプレー再開となった。
VARは「はっきりとした明白な間違い」をなくすためのシステムだが…時間の使い方に疑問
必要のないプレーまでオンフィールドレビューを行っていればプレーを必要以上に途切れさせ、時間を浪費してしまう。しかし、オンフィールドレビューを行ったとして、同じかそれ以上の時間がチェックに掛かるのであれば、映像を見ながらレフェリーとVARがコミュニケーションを取る方が効果的なのではないか。
ここで時間が掛かったことは、ノーファウルと判断した谷本レフェリーに対し、飯田VARはファウルの可能性が少なからずあると考えていたことを推定させる。そして、このような場面では主審は記憶の中にあるプレーを脳内再生しながら話し、VARは実際の映像を見ながら話す。その結果として時間が掛かることが果たして、当初の目的に対して有効な手続きなのかは疑問が残る。
元より、VARは「最良の判定を見つけようとするものではなく、『はっきりとした明白な間違い』をなくすためのシステム」とされている。それであれば、時間を使って議論するような判定はどちらにしてもはっきりとした明白な間違いとは言えないだろうし、一方でVARが「主審に映像を見せた方がいい」と確信しているなら、両者が映像を共有してコミュニケーションを取った方が、状況がクリアになって話せるだろう。最終的に判定を変更するかどうかは別にして、オンフィールドレビューを行うのかの決断はもう少し早めた方が、あるいはハードルを少し下げた方がいいのではないだろうか。