札幌の50mロング弾から一転、取り消し→PK献上判定に「誤りはないが…」 前代未聞の事件が残した後味の悪さ

浅野雄也のゴールを巡り前代未聞の”事件”が【写真:Getty Images】
浅野雄也のゴールを巡り前代未聞の”事件”が【写真:Getty Images】

札幌MF浅野が超ロング弾も…直前のハンド判定で取り消し→PK失点の珍事発生

 北海道コンサドーレ札幌はホームでアビスパ福岡と2-2で引き分けた。堅守で定評のある福岡を相手に流れの中からMF荒野拓馬、MF浅野雄也の得点で先先よく2ゴールを奪った。前半を2点リードで折り返し迎えた後半6分、3-4-2-1から4-4-2に変更した福岡に1点を返された直後、前代未聞の事件が起きた。

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 福岡のサイドチェンジのワンバウンドしたボールがMF青木亮太の広げた腕に当たってしまったが、レフェリーの笛が吹かれないまま試合が流れる。一度は福岡側のボールになるが、つなぎのミスを逃さなかった浅野がボールを拾ってすぐにロングシュートを狙うと、高く浮き上がったボールはGK村上昌謙の頭上を破ってゴールに吸い込まれた。

「(GKの村上昌謙は)大阪体育大学の先輩なので。出てるやろなって思って、チラッチラッと見てたんですけど、めちゃくちゃ出てたので。タイミング合えば狙ってやろうと思って、うまく行きました」

 浅野はおよそ50メートル先のゴールへ蹴り込んだ一撃をそう振り返る。家族も試合を観に来ているなかでの、月間ベストゴール級のゴラッソとなるはずだった。

 スタジアムの電光掲示板にも3-1のスコアが表示されたが、しばらくしてVARが介入。レフェリーによるOFR(オンフィールドレビュー)の結果、ハンドの判定で福岡側にPKが与えられた。

 これをキッカーのFWルキアンがきっちりと決めて同点。この判定そのものに異論の余地はないが、木村博之レフェリーから見ても可視性の高そうなシーンで、なおかつVARチェックまで約2分間も試合が流れそこからゴールが決まったという点で、VARシステムの1つの課題が出たとも言えそうだ。

 試合後、札幌のミハイロ・ペトロヴィッチ監督は「私も40年以上、プロのキャリアがありますし、長い長い経験がある監督ですけど、自分たちがゴールを決めたのに、逆PKを取られて失点するという稀なシチュエーションが起きた」と振り返った。

 繰り返しになるが、判定そのものは誤りではない。むしろVARがなければハンドが見逃される誤審が起きていた可能性を考えれば、VARがしっかり機能したことになるが、それにかかるタイムラグとスーパーゴールの取り消しが、後味の悪さを残してしまったのは確かだ。

 これに関して浅野は「やーもう3-1っすよ。3-1やと思ってます」と苦笑い。決まった瞬間は「めちゃくちゃ嬉しかったですよ」と振り返ったが、そのあと「ナイスジャッジっすね」と付け加えた。時間がかかったことには納得いかない部分もあるはずだが「あそこで白黒付けるのが審判の仕事というか。審判がブレたらダメなので。あそこで、しっかりジャッジしてくれたことはリスペクトします。今日のことはしっかり切り替えて、次に良い準備をしていきたい」と明るい表情で語った。

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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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