J2首位・町田のサッカーに「驚かされた」 現場カメラマンも唸った“黒田ゼルビア”の真骨頂
【カメラマンの目】大分撃破の町田が見せたエネルギッシュなプレーの連続に焦点
正直、FC町田ゼルビアが前半にピッチで見せたサッカーには驚かされた。FWの荒木駿太にエリキの2トップ、そして中盤の髙橋大悟ら攻撃の選手がボールを持った大分トリニータ守備陣へ次々と詰め寄り、ボール奪取に挑んでいく。大分の選手の動きを徹底的に封じようとハイプレスを仕掛け、そこから一気にゴールを目指す町田のサッカーは、心を高揚させるほどエネルギッシュなプレーの連続だった。
上位対決となったJ2第10節町田対大分の一戦は、ホームチームが前半に3ゴールを挙げ、失点を後半の1点で凌ぎ切り勝利。町田が首位へと返り咲く結果となった。試合後の盛り上がりが表していたように、スタンドのサポーターもピッチで躍動する選手たちを目の当たりにして、さぞかし爽快だったことだろう。
チームを勝利へと導いた前半23、33、39分と連続して町田が創り出した3ゴールはどれも秀逸なものだった。そのなかで1点目となった右コーナーキック(CK)を起点としたゴールは、連係プレーの美しさから話題となったが、町田の真骨頂が示されたのは、むしろ2点目のほうだったのではないだろうか。
ペナルティーエリアゴールライン近くの深い位置で、髙橋がボールを持つ大分の選手を追い詰めパスミスを誘い、そのボールを荒木が奪ってゴール。前線からの守備が機能した、相手陣地の最奥部から仕掛けが始まった見事なゴールだった。
前半は大分にまったくサッカーをさせず、自分たちが思い描くスタイルをピッチで存分に表現した町田。ただ、前半は絶賛の内容だったが、すべてにおいて完璧だったというわけではない。こんなハイペースでプレーする状態が最後までもつのかと思いながらピッチの選手たちに向けてカメラのシャッターを切っていたが、やはり90分間を通してハイプレスをかけ続けるのは難しかったようだ。
ハイプレスとボールを奪ってからの鋭いカウンター攻撃は、後半に入り時間が経過していくと運動量の低下とともに徐々に勢いが失われていくことになる。後半34分には、黒田剛監督もさすがに体力が消耗した前線の3選手を一気に交代させるモーションを起こす。失点も後半31分と町田が目指すサッカーの体現は、いまの段階では75分間ほどが限界だったようだ。
フルスロットルのスタイルに懸念も、シーズンを通して体現できるか
攻撃の選手でありながら、本来のポジションとは正反対の守備に全力で挑めば時間の経過とともに運動量が低下するのも当然で、キックオフからフルスロットルでプレーするスタイルで懸念されるのは、やはり選手のスタミナである。特に体力の消耗が激しい夏場は町田サッカーにとって難関となるだろう。
どんなチームでもシーズンを通して好調を維持するのは難しい。波の大きさの違いはあるにせよ不調やチームが上手く機能しない時はやってくると考えていい。その波をいかに小さくし、自分たちが得意としているスタイルを貫けるかが好成績を挙げるカギとなる。
ただ、1点目となった華麗な技ありの得点のように、練習どおりのプレーが試合で成功すると、自分たちがやってきていることの正しさを肌で感じられ、チームの勢いは加速される。なにより町田の選手たちは楽しそうにプレーしており、試合後に見せた笑顔が充実感を物語っていた。
彼らが目指すプレースタイルがシーズンを通して多く見られれば、町田のJ1昇格は現実となることは間違いないだろう。
徳原隆元
とくはら・たかもと/1970年東京生まれ。22歳の時からブラジルサッカーを取材。現在も日本国内、海外で“サッカーのある場面”を撮影している。好きな選手はミッシェル・プラティニとパウロ・ロベルト・ファルカン。1980年代の単純にサッカーの上手い選手が当たり前のようにピッチで輝けた時代のサッカーが今も好き。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。