大卒Jリーガー→日本代表入り「期待の9人」 初招集の筆頭候補は?…ガーナ人の父持つ大型FWら厳選
【識者コラム】初のA代表入りが期待できそうなJリーガーをJ1~J3の中から厳選
近年のJリーグでは大卒選手の台頭が目立ち、日本代表への選出を経て、海外クラブへ移籍を果たすケースも多い。そうしたステップアップを果たす可能性を秘めた選手を占うべく、近い将来、初のA代表入りが期待できそうなJリーガーをJ1~J3の中から厳選し、9人を紹介する。
■橘田健人(J1・川崎フロンターレ/MF/桐蔭横浜大卒・3年目)
A代表未招集の大卒選手では筆頭とも言うべき選手だ。広大な活動エリアと確かな技術、危機察知能力があり、勝負どころになるほど頼りになる中村憲剛のようなパーソナリティーも備えている。順調に成長すれば、川崎の先輩である守田英正(スポルティング)などを脅かす存在になり得る。24歳にしてキャプテンとしてチームをまとめるが、苦しい序盤戦を乗り越えて上位浮上を支えることができるか。
■大久保智明(J1・浦和レッズ/MF/中央大卒・3年目)
多くのテクニシャンを育ててきた東京ヴェルディのアカデミー出身。ドリブラーとしての高い能力を持ちながら、浦和でオフ・ザ・ボールやコンビネーション、戦術的なインテリジェンスにも磨きをかけている。攻守でスピードを発揮でき、2列目なら左右中央のどこでもこなせるマルチアタッカーとしての資質も備える。スプリント回数でJ1の上位に名を連ねるが、目下の課題はチャンスをゴールに結び付ける決定力だ。
■金子拓郎(J1・北海道コンサドーレ札幌/MF/日本大卒・4年目)
大学4年次から特別指定選手としてリーグ戦とカップ戦、合わせて14試合に出場しており、札幌の選手としては実質5年目になる。カットインから左足のミドルシュートを最大の武器とするサイドアタッカーだ。もともとシャドーのポジションで台頭したが、マンツーマン主体の札幌で守備力にも磨きをかけて、右ウイングバックとして精力的に、チャンスメイクからフィニッシュに絡んでいる。2020年には東京五輪の代表候補選手として、田中駿汰、高嶺朋樹(柏レイソル)と参加。そこからも成長は続けているが、ポテンシャルに見合うブレイクスルーを果たせていない。左利きの右サイドアタッカーという大枠は堂安律(フライブルク)と一緒だが、動きのタイプはかなり違いがあり、招集されれば面白い存在になり得る。
大在学時には就職活動もしていた“非エリート”選手の星も
■中村帆高(J1・FC東京/DF/明治大卒・4年目)
横浜F・マリノスのアカデミー出身だが、明治大在学時には就職活動もしていたと言う“非エリート”選手の星だ。絶え間ない上下動と1対1の強さ、さらにFC東京で攻撃面にも磨きをかけている。大怪我さえなければすでにA代表入りしていた可能性もあるが、そうしたことにへこたれるタイプではない。定位置は右サイドバックだが、左サイドもこなせる。A代表ではややタレントの層が薄いポジションだけに、タイミングが合えば、いつ招集されてもおかしくはない。
■菊井悠介(J3・松本山雅FC/FW/流通経済大卒・2年目)
“流経大”と言えば守田英正(スポルティング)が代表格だが、後輩の菊井は親戚の関係で、プレー面でも影響を受けているという。昨シーズンはルーキーながら住田将とともに、名波浩前監督に重宝されて、高いセンスは垣間見せた。しかし、守備面に比重が置かれてゴールが遠くなっていたのも事実。より攻撃的なスタイルを標榜する霜田正浩監督の下“10番”としてチャンスメイクの中心を担い、フィニッシュにも顔を出している。チームの副キャプテンだが、キャプテンの安東輝が負傷離脱していることもあり、ゲームキャプテンとしても牽引している。
■平河 悠(J2・FC町田ゼルビア/FW/山梨学院大卒・1年目)
大卒ルーキーだが、大学3年次から町田の特別指定選手としてプレーしており、昨シーズンは16試合で2得点を記録した。満を辞してのプロ1年目となる今シーズン。大型補強が話題になった町田にあって、開幕戦からすべての試合で黒田剛監督にスタメン起用されている。4月12日のジュビロ磐田戦ではGKのロングキックのこぼれをエリキが拾って仕掛けると、左サイドから見事に連動して鮮やかなゴールを決めている。大柄ではないが身体能力が高く、攻撃的なポジションであればどこでも機能するマルチ性も代表向きだ。
神戸の最終ラインで獅子奮迅の働きを見せる山川は攻撃参加の魅力も
■寺沼星文(J2・水戸ホーリーホック/FW/桐蔭横浜大卒・1年目)
ガーナ人の父を持つ大型ストライカーで、桐蔭横浜大在学中の昨年は特別指定選手として2試合に出場した。大卒ルーキーにして、早くも4ゴール。相手ディフェンスを押さえ込みながらニアハイを打ち抜くなど、迫力満点のフィニッシュワークは早くもJ2で規格外感を放っている。ここまで代表経験はないが、2001年の早生まれなので逆転でパリ五輪のメンバー入りも可能だ。
■山川哲史(J1・ヴィッセル神戸/DF/筑波大卒・4年目)
神戸のアカデミー出身で、谷口彰悟(アル・ラーヤン)などを輩出した筑波大で戦術眼を磨いたセンターバックは、J1首位を走る神戸の最終ラインで獅子奮迅の働きを見せている。昨年の入籍時には「ピッチ内では勝利の船の船員としてチームのために全力で闘い、ピッチ外では一家の幸せの船の船長として責任感を持って家族を支えていきたいと思います」と粋なコメントを発信して話題に。菊池流帆の離脱という事態にも7試合2失点とチームが安定航行できているのは、新加入の本多勇喜とともに粘り強い守備対応を見せているから。右サイドバックもこなせるタレントだけに、攻撃参加の魅力もある。
■小森飛絢(J2・ジェフユナイテッド千葉/FW/新潟医療福祉大卒・2年目)
ルーキーだった昨シーズンは2試合の出場にとどまったが、可変性の高い攻撃スタイルを掲げる小林慶行監督の信頼と期待を得て、開幕戦からのスタメン起用に応えて3試合連続ゴールを記録した。その後、さらに2得点を重ねた。裏抜けを得意としており、第8節の徳島ヴォルティス戦ではうしろからのロングパスに反応して、パーフェクトトラップからスーパーゴールを決めた。しかし、この時に足を痛めて前半終了を待たずに交代。翌節も欠場となった。今、J2で最も乗っているストライカーの1人だけに早期の復帰を期待したい。
(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)
河治良幸
かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。